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2011年6月25日号 2面・社説 

衰退する米国へのさらなる従属を
約束させられた2プラス2

米国の中国敵視に加担せず、
独立・自主の進路めざし闘おう

 日米の外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が六月二十一日、米ワシントンで開かれた。
 米国が衰退を深め、日本の協力なしには自らの世界戦略の実現がますます不可能になる中での会議である。
 合意された新たな「共通戦略目標」では、台頭する中国へのけん制をこれまで以上に強め、日米が一体となって対抗することを公言した。
 これは、わが国をアジアと敵対させる、危険な亡国の道である。
 民主党政権はすでに同盟「深化」の実質化を進めており、この策動は、東日本大震災を機に一気に強まっている。
 独立・自主の進路をめざす闘いは、ますます重大な課題となった 。

米の衰退が早まる中での2プラス2
 民主党による政権交代後、初めての開催となった今回の2プラス2は、二〇〇八年のリーマン・ショックを機に米帝国主義の衰退と国際的力関係の変化が急速に進み、米国の世界支配が崩壊の危機にひんする中で開かれた。
 オバマ政権は危機脱出のため、膨大な公的資金による景気対策と連邦準備理事会(FRB)による量的緩和政策に踏み込んだ。だが、これは世界的な食料・資源価格の高騰、新興国のインフレやバブルを誘発、世界の人民の怒りを買った。インフレは米国内にも跳ね返った。財政赤字もいちだんと悪化、議会による累積債務上限の引き上げも右往左往し、基軸通貨ドルへの不信も高まった。オバマ政権は「輸出倍増計画」を掲げ、環太平洋経済連携協定(TPP)を活用してアジアへの参入を急いでいるが、輸出拡大と国内の雇用回復には効果はない。
 政治面でも、アフガニスタン、イラクからの撤退はままならない。エジプトなどの政変で世界戦略は打撃を受け、リビア内戦への介入で新たな戦線もかかえ込んだ。二十カ国・地域(G20)首脳会合などでの影響力は急速に低下している。
 他方、中国は経済成長を背景に台頭を強めている。ブラジル、ロシア、インド、南アフリカともにBRICSを常設機関化し、「自国通貨による決済の拡大」を打ち出して「ドル相対化」を明確にした。国際通貨基金(IMF)の人事問題などで米欧を揺さぶるなど、国際政治上の影響力も高めている。アジアでは海洋戦略を強めて東南アジア諸国と争う南沙・西沙諸島、日本の尖閣諸島の領有を「核心的利益」などとして強硬姿勢をとっている。米国が核放棄を迫る、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との関係も維持している。
 あせりに駆られた米国は中国に人民元改革や市場開放を求め、米日韓豪の軍事同盟を強化して対抗とけん制を強めている。さらに「海上交通の自由」を掲げて、東南アジア諸国やインドをも巻き込んだ「対中包囲網」を形成しようとしている。

日本を同盟「深化」に巻き込む米国
 衰退する米帝国主義は、日本を自らの「手駒」としていっそう奉仕させることなしに、世界、とくにアジアでの戦略が成り立たなくなった。日米同盟「深化」とは、そのためのものである。
 ところがこの数年、わが国の政治は混迷続きで、米国の要求に応えられる状況ではなかった。
 〇九年に誕生した民主党政権は、選挙目当てとはいえ普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「国外・県外」移設を掲げた。小沢は数百人の国会議員を引き連れて中国を訪問、「日米中は正三角形」とも述べた。とくに普天間問題の「迷走」で、日米関係は難しくなった。
 この民主党の外交政策は確たる戦略があってのものではなかった。それでも、米国の衰退を前にした戸惑い、模索もないではなかった。 
 菅政権は、政権維持の狙いもあって、鳩山政権下で揺らいだ対米関係の「改善」を急ぎ、日米同盟「深化」の既成事実化を進めてきた。
 新たな防衛計画大綱で「南西諸島防衛強化」を掲げて沖縄駐留の自衛隊混成団を旅団に格上げし、新たな部隊配備も打ち出した。米韓合同軍事演習への自衛官の参加やアフガニスタンへの自衛官派遣、朝鮮敵視と制裁の継続・強化なども進めた。米国主導でわが国財界も願うTPPへの参加を準備、農漁民など国民経済を犠牲にする道を打ち出した。
 だが、わが国政治の混迷は続き、危機の米国からすれば耐えがたい状況が続いた。
 ここに、東日本大震災が発生した。米国は「好機」とばかり、一挙に日米関係の打開を図った。
 「救援」に名を借りた空前の日米合同演習「トモダチ作戦」に踏み込み、東アジアに緊張を持ち込んだ。福島第一原子力発電所事故への対処を口実に、米海兵隊特殊専門部隊まで動員した。大震災と日本国民の被災は、米軍にとっては格好の実験場となった。米国紙によれば、米軍司令官は「(米軍が)原発事故や(放射性物質を含む)汚い爆弾、テロに対応する」際に、トモダチ作戦での経験が「戦略的価値がある」と述べている。
 普天間基地には垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを配備、基地機能を強化する。菅政権は在日米軍駐留費の日本側負担(思いやり予算)の継続を受け入れた。わが国支配層は、米軍に「感謝」する空前の世論操作を行った。
 四年ぶりに外務、防衛担当の四閣僚が揃った今回の2プラス2は、こうした米国による策動のいわば「総仕上げ」的なものである。

「対中国」掲げた危険な戦略目標
 合意された新たな共通戦略目標は、中国への対抗とけん制を露骨にする点で段階を画するものである。
 新たな共通戦略目標は、名指しは避けつつも、中国を念頭にアジア太平洋地域が「ますます不確実になっている」と指摘。同様に、中国を「宇宙、公海及びサイバー空間」に対する「変化する脅威」だとした。
 さらに、中国について「責任ある建設的な役割、グローバルな課題における協力、国際的な行動規範の順守を促す」「軍事上の近代化と活動に関する開放性と透明性を高める」と明記した。
 対応策として日米同盟強化が「不可欠」とし、米日韓、オーストラリアによる「安保・防衛協力」の強化や「日米印三カ国間の対話促進」がうたわれた。
 普天間代替施設は、自公政権時代の案そのままに、名護市辺野古にV字形滑走路として建設する方針を確認。〇六年の米軍再編ロードマップ(行程表)で決まった「一四年まで」の期限は先送りされた。硫黄島での米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の、鹿児島県馬毛島への移転も「検討」と明記した。
 このほか、日米共同開発中の海上配備型次世代迎撃ミサイルの第三国への輸出を容認し、武器輸出三原則の放棄に道を開いた。日本の地方自治体による防災訓練への米軍の参加も示した。
 すでに米国は一九九五年の「東アジア戦略」以来、中国への包囲・けん制とそのためのアジアでの米軍の維持を戦略としてきた。新たな共通戦略目標はこれを引き継ぎつつ、日米が一体となって中国に「身構える」ことを宣言したものである。
 米国のシンクタンクは最近、台湾有事の際に中国軍が在沖米軍基地に先制攻撃を行う可能性を指摘した。
 この内容はそのまま受け取れないとしても、対米従属のわが国が引きずり込まれた道は、危険きわまりないものなのである。

独立・自主の政権をめざして闘おう
 世界の多極化は決定的である。
 民主党政権の選択は、わが国の進路を衰退する米国への追随にいっそう縛りつけ、世界のすう勢に逆らって、アジア諸国・人民に敵対させるものにほかならない。米国がアジアで行う危険な「火遊び」にわが国を巻き込む亡国の道である。
 米国の世界戦略と闘い、日米安保条約を破棄しなければならない。日本の国益を戦略的に確立し、独立・自主の国の進路を実現できる政権を樹立してこそ、わが国はアジアで生きていける。国民の生活と営業を守ることもできる。
 労働者階級は、新しい政権をめざす広範な闘いの先頭で闘おう。


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