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2011年6月5日号 2面・社説 

不信任案否決したが、
さらに弱体化した民主党政権

深まる内外の危機、政権の
延命許さず闘いで打開を

 自民、公明、たちあがれ日本の野党三党が提出した内閣不信任決議案が六月二日、衆議院で否決された。
 菅政権には「一難去った」どころか、民主党は事実上の分裂状態で政権はさらに弱体化、政局は混迷を深めている。
 わが国を取り巻く経済、政治の危機はいちだんと深い。
 対米従属政治のツケに加え、民主党政権の悪政、さらに東日本大震災と福島第一原子力発電所事故は、国民の生活と営業の危機をさらに深めた。菅政権による多国籍大企業のための政治は、国民の困難を倍化させている。
 労働者階級は、政治の根本的な転換をめざす断固たる闘いに立ち上がらなければならない。

死に体の菅政権、深まる政局の混迷
 不信任案を提出した野党は、民主党内の「造反」を期待した。小沢、鳩山らは菅政権を追い込み、クビのすげ替えで生き残りを策した。
 菅政権は首相の「退陣の示唆(しさ)」と引き替えに「造反」を押しとどめたにすぎない。民主党の党内闘争は激化し、事実上の分裂状態である。首相は「退陣」を明言せず、その時期さえ不明確な、まさに茶番劇である。
 政府・与党による「ねじれ国会」の運営はさらに難しい。二〇一一年度予算の関連法案である赤字国債発行法案などの成立は展望がなく、参議院に問責決議が提出されれば否決できない。
 国民の支持はすでにない。
 菅政権は死に体で政局はさらに混迷、危機はいっそう深まっている。

わが国を取り巻く、深刻な危機
 危機は菅政権、政局の範囲にとどまらない。
 与謝野経産相は五月十九日、一〜三月の国内総生産(GDP)成長率が二期連続マイナスとなったことに対し、海外での需要をあげて「リーマン危機とは異なる」と述べた。「需要はあるがモノがない」という供給制約が解消され、「復興需要」が出てくれば、わが国経済の先行きは明るいという。
 果たしてそうか。
 米経済はリーマン・ショック後の危機から脱出できず、景気、とくに個人消費への影響力が大きい住宅市況は「二番底」の危機である。オバマ政権による「輸出倍増計画」も効果なく、失業率は約九%に高止まりし、食料切符で食いつなぐ国民は四千五百万人を超えた。危機打開を狙った量的緩和策は食料価格高騰などとなって世界を襲い、米国にもガソリン価格高騰などとなって跳ね返り、国民の不満を高めている。
 経常赤字、財政赤字という「双子の赤字」も進行してドルへの信認はますます低下、国連でさえ「ドル崩壊の危険性」に言及するほどだ。
 欧州諸国も、南欧諸国の財政危機という難題を抱えている。
 「世界経済のけん引役」などと言われる中国などのBRICS諸国だが、インフレとバブル崩壊の危機が深まり、成長は曲がり角に来た。これら新興国での景気後退は、先進国経済へのさらなる打撃となる。
 与謝野の言う「海外の需要」は、まことに危ういのが実態である。
 経済危機を背景に、米国を筆頭とする帝国主義の世界支配はさらに揺らいでいる。
 米国はアフガニスタン占領など数々の難問を抱えた上、中東・北アフリカでは親米政権が打倒、あるいは揺さぶられ、世界戦略は打撃を受けた。オバマ政権は新たな中東戦略を発表、「アラブの春」などと称してエジプト、チュニジアへの支援を約束するなど、支配の立て直しに大わらわである。
 主要国首脳会議(サミット)の存在感の低下は著しい。先日のドービル・サミットは、米国の新戦略にそった中東支援などで合意したものの、リビア攻撃で米仏が主導権争いを演じ、ドイツはエネルギー政策で一線を画した。米仏をはじめ選挙が近づく中、各国は「協調」そっちのけで、自国向けの「得点稼ぎ」に終始せざるを得ない。
 他方、BRICSは常設機関を設置するなどで国際的地位を高めている。中南米はもちろん親米の湾岸王政諸国でさえ米国離れを強めている。世界の多極化、重心の移動は急速である。
 政府の公式見解とは逆に、対米追随のわが国にとって、国際環境は厳しさを増すばかりである。

深まる対米従属政治の限界
 危機の中、労働者をはじめとする国民の生活と営業はさらに深刻で、大震災と原発事故で追い打ちをかけられている。菅政権は大銀行には百二十兆円超える資金供給を行って救済したが、国民への犠牲押しつけは露骨である。
 官製統計でさえ完全失業者が三百万人を超える状況に、大震災で数十万人が新たに職を失った。さらに、パナソニックやリコーなどの多国籍大企業が全国的にリストラを強行。失業者は、雇用調整助成金で職を維持された「潜在的失業者」を含めると一千万人をゆうに超える。震災に便乗した賃下げ、労働条件引き下げも横行している。
 歴代売国農政に苦しめられてきた農民には、燃料費・農機具代の高騰と農産物価格下落が襲いかかっている。加えて、財界は、日本農業を壊滅させる環太平洋経済連携協定(TPP)参加をあおっている。被災地農民は塩害に遭い、家畜を放棄せざる得ない。原発事故の影響で、東日本の広範囲な地域で農作物の出荷が停止されている。
 零細漁民は、大企業による乱獲で苦しめられてきた。わが国水揚げ高の約四割を占める東日本沿岸漁業は大震災で壊滅的被害を受け、原発事故を理由とした東京電力による汚染水放出で打撃を受けている。支配層は早くも、漁港の集約で零細漁民を排除しようとしている。
 中小零細企業の倒産と廃業もあとを絶たない。大企業の海外移転や操業短縮、震災を機とする単価切り下げ、大銀行による資金引き上げなどの犠牲押しつけで、経営は青息吐息である。
 生活保護受給者は、ついに約二百万人に達した。この上に、菅・民主党政権は「復興」や社会保障を口実に増税を策動している。
 他方、わが国GDPの約二倍に達する公的累積債務はさらに悪化、支配層は財政対策で国民をダマすことができない。
 外交面では、菅・民主党政権は大震災を機に日米同盟「深化」にもう一歩踏み込み、アフリカのジブチに初の自衛隊海外基地を建設するなど、全世界で米国を助けようとしている。米日韓にオーストラリアを加えた軍事同盟を強化し、中国、朝鮮民主主義人民共和国への敵視・けん制に加わっている。在日米軍再編と普天間基地(沖縄県宜野湾市)の県内移設も強行しようとしている。
 国民犠牲と対米従属を競い合う点で、民主党も自公も大差ない。国民の政治、政党への不満がかつてなく高まっているのは当然である。


独立・自主の政権めざし闘おう
 内外の危機が深まる中、労働者をはじめとする国民諸階層は、現在の政治を変えない限り生活と営業は成り立たない。首相のすげ替え、あるいは自公との大連立となったところで打開できない。
 政党・政治が国民の願いに応えないなら、国民は直接民主主義に訴えざるを得なくなる。政治の根本的な転換を求める勢力にとって、本来、絶好の好機である。
 だが、連合は相変わらず菅・民主党政権の応援団である。
 「左」派は国民運動を呼びかけることもなく、政局への主導性はなおさらない。共産党、社民党は「混乱回避」を理由に内閣不信任案を棄権、民主党政権に不信任を突きつけなかったという意味で、客観的には延命に手を貸した。
 先進的労働者は、日和見主義を打ち破って前進しなければならない。
 労働者階級が国民運動の組織者となって闘い、菅・民主党政権の延命を許さず、打ち倒し、独立・自主、国民大多数のための政権を打ち立てることが求められている。
 そのための確かな道は、労働者階級が自らの革命政党を建設し、鍛えることである。


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