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2011年4月5日号 2面・社説 

菅政権、「復興構想会議」で
延命たくらむ

「国民のための復興」を掲げて
断固たる闘いを進めよう

 東日本大震災から二十日余。被災地住民の生活難はほとんど改善されず、死者・行方不明者は三万人を突破、さらに増え続けている。産業への深刻な打撃も、その全体像はいまだ明らかではない。
 現在の大災害は、地震、津波という自然災害と、これと関連するが東京電力による企業犯罪の二つが重なっている。
 福島第一原発は危険な放射性物質で大気・海洋・土壌中に広範囲に汚染し続け、予断を許さぬ状況が続いている。
 こうした状況下、菅首相は四月一日、「復興」のためと称し、有識者や被災地首長などから成る「復興構想会議」を立ち上げることを表明した。「復興」を口実とする、自民党との大連立策動も強まっている。
 これらは政権延命のためのものであると同時に、大銀行、大企業のための「復興」に公然と踏み込むものである。
 被災者への支援はますます「二の次」となる。労働者への首切りなど、国民諸階層への犠牲押しつけはますます激しさを増している。
 自主・平和・民主のための広範な国民連合は緊急討論集会を呼びかけている。被災者、国民大多数のための復興を掲げ、断固たる闘いを前進させなければならない。

「復興構想会議」は政権延命策
 菅首相は「復興構想会議」で「エコタウン」「第一次産業の再生」などを掲げた。二兆円規模の第一次補正予算も四月中に国会に提出する予定である。特別立法や「復旧復興基金」設立、PFI(民間による社会資本整備)を進める方針も決まった。
 財源としては「震災国債」のほか、「復旧復興特別税」の検討が盛り込まれた。「復興」を口実とした、消費税率引き上げなどの大衆増税である。
 もともと選挙目当ての欺まんであったとはいえ、高速道路無料化、子ども手当、農家への戸別所得補償などの政権公約(マニフェスト)は、「財源」を口実に「これ幸い」と削減、ないし投げ捨てられる。
 財界の後押しを背景に、自民党との大連立への策動も再度強まっている。民主党は、自民党、公明党に第一次補正予算案についての事前協議を要請した。
 これらの諸対策には被災者、国民の願いはまったく反映されていない。大連立は、議会政治の常道からしてさえ許されない。
 震災前、衆参の「ねじれ」と支持率低迷に外国人からの献金問題が追い打ちをかけ、菅政権はすでに「死に体」であった。本来、このような民意を失った政権に未曽有(みぞう)の震災対策など不可能である。
 菅政権はいわば「復興」をダシにして、被災者と国民生活を助けるよりも政権の延命を最優先している。「復興構想会議」も大連立策動もそのためのものである。

「復興」策も財界の言うがまま
 菅・民主党政権は、これまでも政権延命策として、財界に奉仕する政治を行ってきた。この性格は、震災後の諸政策でますます鮮明である。
 大震災直後からの日銀による大銀行支援のための資金供給は、ついに累計百二十兆円以上に達した。わずか十日余、年間の国家予算を大きく上回る資金を、タダ同然で大銀行に提供した。大銀行はこの資金を元手に、各種市場で荒稼ぎしている。
 被災地に位置する大企業に対して、法人税数年分の還付が打ち出された。輸出大企業のための為替介入も行われた。国土、海洋、大気を広範囲に汚染させた極悪企業、東京電力に対し、国民の血税投入で助けることも策動している。
 こうした政策に念を押すかのように、日本経団連は三月三十一日、「震災復興に向けた緊急提言」を発表した。「強力な指揮命令権をもった司令塔の確立」や道州制をテコに、規制緩和による「復興特区」やPFI推進で「復興」を図るというものである。長年の主張通り、増税も提案している。
 経済同友会も二十九日、桜井代表幹事が「税・社会保障制度の一体改革と成長戦略実現」「環太平洋経済連携協定(TPP)参加」を主張、日本経団連が見送りを「容認」した法人税減税も実行を求めた。
 菅・民主党政権が打ち出しつつある「復興」策は、こうした財界の要求にいま一度応えるものである。
 菅・民主党政権は、被災地とその経済、社会を、もうけに飢えた大銀行、大企業に丸ごと差し出そうとしている。


さらに強まる国民への犠牲押しつけ
 菅・民主党政権は大銀行、大企業への優遇策の一方、以前から国民への犠牲の政治を進めてきた。この政策も、震災を機に激化している。
 被害を口実とした労働者への首切りはいちだんと激しく、全国、全業種に及んでいる。
 被災地に住む数十万人の労働者が職を失っただけではない。計画停電や「部品不足」を口実とした解雇や雇用契約打ち切りのほか、「停電で三十分遅刻したら解雇」などの悪質な「便乗解雇」も横行している。時給引き下げや無給休業の通告など、労働条件の引き下げはさらに多い。新卒者への内定取り消しも横行、「全国で百二十三人(三月末)」という厚労省の発表は「氷山の一角」にすぎない。
 正規・非正規を問わぬ労働者への犠牲押しつけは、二〇〇八年秋のリーマン・ショック時以上に深刻である。政府は、これらの実態を事実上容認している。
 原発事故に対する対応も、国民の生活と営業、命と健康をないがしろにするものだ。政府は東京電力とグルになって情報を隠し、安全性を無視して被災者、国民に犠牲を押しつけている。まさに人災である。
 政府は住民や自治体になんらの相談もなく、原発周辺住民に「避難」「屋内待機」を強いている。住民は具体的手立てもないまま、故郷と生活の糧を奪われた。
 原発事故の対応にあたる労働者への処遇も同様である。
 東電は被曝の恐れがある事実をいっさい知らせず、下請け企業の労働者に被曝を強いた。その後も高給をエサに労働者をダマし、ろくな防護装備もないまま、一日二食で事故の尻ぬぐいに駆り立てている。
 政府は「放射性物質の検出」を理由に、福島など四県産の一部農産物に出荷制限を課し、福島県産には摂取制限も加えた。この対応は風評被害を助長。生きるすべを奪われた農民には、自殺者も出ている。
 菅政権、財界などの支配層は、国難を「好機」とばかり、労働者をはじめとする国民諸階層にあらん限りの犠牲押しつけを行っている。

財界のための「復興」と闘おう
 リーマン・ショック後、危機的状況に追い込まれた国民の生活と営業は、自然災害と人災によって、もういちだんの苦境にたたき込まれた。被災者、労働者と国民諸階層は、闘わなければ生きられない状況だ。
 政権の退陣を求めて闘う以外にない。
 だが「左」の諸政党も、支配層の振りまく「一致団結」などのキャンペーンに屈服している。
 代表格は共産党である。志位・共産党委員長は一日、菅首相に「被災者支援・復興、原子力・エネルギー政策の転換を」なる提言を行った。提言には歴代政権と菅政権への批判はいっさいなく、復興財源も大企業に負担を「要請する」という程度のものだ。これは事実上、菅政権を支えようというものであり、打ち破らなければならない。
 連合中央幹部も、傘下組合員を被災地へのボランティアに駆り立てるのみである。連合が「すべての働く者の連帯」と言うのであれば、大企業による労働者への首切り、労働条件引き下げなどの攻撃と断固闘うべきであろう。さらに、首切りを容認・促進する菅・民主党政権への支持をやめ、国民とともに闘うべきである。
 全国の先進的労働者、農民、漁民、知識人、政党、諸団体は、支配層の推し進める大銀行、大企業のための「復興」に反対し、被災者、国民大多数のための復興を掲げて闘わなければならない。


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