ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2011年3月5日号 2面・社説 

予算関連法案にメドなく
「死に体」化した菅政権

危機は深刻、独立・自主の
新政権へ労働者階級の
役割が問われている

 二〇一一予算案が三月一日、衆議院を通過した。
 菅政権には心休まる暇もない。予算関連法案に成立のメドはなく、野党の修正案を「丸のみ」せざるを得ない可能性が高まっている。小沢グループの策動など党内さえ動揺を深めている。
 何より、政権を取り巻く内外環境の危機はますます深く、国民諸階層の生活と営業は深刻である。対米従属で多国籍大企業に奉仕する歴代政権とは根本的に異なる政権を樹立する以外に、この危機を打開することはできない。
 激動の国際情勢は、まさに労働者階級の役割こそ肝心であることを示している。
 わが国労働者階級は奮い立ち、国民諸階層の先頭で闘わなければならない。

「八方ふさがり」の菅政権
 菅政権は衆議院で予算案を可決させ、自然成立を確実とさせた。
 だが、赤字国債発行などのための関連法案に成立のメドはない。参議院での過半数を野党に握られ、衆議院での再可決に必要な三分の二の議席にも足りず、国会運営自身がままならないからである。
 とりわけ昨年夏の参議院選挙に敗北して以降、菅政権は旧自公政権以上に、米国とわが国財界の言うがままの政治を行ってきた。
 外交では米戦略に追随し、日米同盟の「深化」で中国、朝鮮民主主義人民共和国への敵視とけん制を強めた。そのための自衛隊再配置、普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設策動など際限がない。領土問題では、財界の利益優先で断固たる姿勢をとれず、民族的利益を裏切った。
 環太平洋経済連携協定(TPP)への参加表明も、財界の要求に応えることと併せ、中国包囲網の狙いがある。
 内政でも、今予算案で大企業の要求である法人税減税に応える一方、国民には消費税増税や年金など社会保障制度の改悪を押しつけるべく策動を強めている。
 国民の支持を失った菅政権にとって、米国と財界の支持が「唯一の頼み」だったからである。
 当然にも支持率はいっそう低下した。総選挙を念頭に、野党は対決色を強めている。菅政権は小沢元代表の「処分」による政権浮揚を策動したが、逆に小沢グループに揺さぶられている。原口前総務相は「分党」を主張、河村・名古屋市長の勢力に合流する国会議員まで出ている。
 関連法案を成立させるため、麻生・自公政権時代の「児童手当」復活の論議も出るほど、菅政権は「八方ふさがり」の状態に陥った。


ますます深刻な国民生活
 国会内の騒ぎをよそに、国民の生活と営業はますます危機的である。
 上下動はあれ、円高傾向は長期に続かざるを得ない。大企業は国内を見限り、アジアを中心に世界展開を強めている。第一次産品価格の高騰は経済の足を引っ張り、食料値上げなどで国民生活に打撃を与え始めている。
 官製統計によれば失業率は約五%、完全失業者は三百万人以上だが、実際の失業者はさらに多く、約一千万人ともといわれる。労働者の賃金は十年以上も下がり続け、労働環境もリーマン・ショック後の大リストラでますます悪化している。
 農産物の価格下落で、農民は農業だけでは食べていけない。原油価格の高騰は、石油製品に大きく依存した農漁業にはとりわけ深刻な事態である。
 中小零細企業には仕事はなく、小売店は大型店の圧迫を受けている。大銀行にはわずかな資金繰りさえ断られ、大企業の国際展開についていけず、倒産・廃業が相次いでいる。
 地方経済は、疲弊(ひへい)の度を強めている。
 日銀が昨秋から実施している量的緩和政策、さらに今回の予算も、このような事態に効果がない。対策をとろうにも、政府・自治体の財政状況は先進国中最悪で、財政出動による対応はほとんど不可能である。
 対米従属で財界のための政治を行う菅政権は、国民生活の危機を打開できず、さらに悪化させている。国会内の事情だけでなく、末期症状に陥るのは必然的である。

危機的国際情勢から何を読みとるか
 わが国を取り巻く国際情勢。リーマン・ショック後の世界経済は落ち着くどころか、金融、実体経済の両面で危機を深めた。
 政治面でも、中東人民の決起でチュニジア、エジプトで政権が倒され、バーレーンなどでも政変があり王制が揺らいでいる。リビアは内戦状態に突入した。
 米国の量的緩和政策などの危機打開策がバブルやインフレとなって世界を襲い、人民の決起を促して政治的動乱にまで発展したのである。中東人民の決起は米国を筆頭とする帝国主義の世界戦略、資源戦略、中東支配を揺るがし、いっそうの原油高を呼んで経済危機をさらに深刻化させた。
 チュニジア、エジプト、バーレーン、イエメン、オマーン、リビアなどでの人民の闘いは大きな前進だが、バーレーンなどの王制は倒されていないし、エジプトやチュニジアでも政府・軍隊などの旧支配機構がそのままである。中東人民の闘いは続いている。
 中東人民の闘いは、中東を支配する米帝国主義とその手先との闘いである。米欧帝国主義は人民の闘いが大きく前進することを恐れ、中東支配を早期に「安定化」させようと、さまざまな策動を強めている。帝国主義者はイランの反米政権、リビアの「元反米」政権を転覆すべく、人民の決起さえ利用している。したがって、こうした複雑な状況をただ「人民の勝利」と手放しで評価するだけでは足りないのである。
 人民の闘いの主導権を主としてどの社会層、階級が担っているか、この点を注意深く見なければならない。
 国によって異なるが、中東地域にも労働者階級が存在し、闘い、育ちつつある。
 労働者階級が十分に組織され、自らの戦略ある政党を持てば、情勢の発展に大きな影響を及ぼす可能性がある。それこそが肝心で、最終的な勝利への道である。
 この問題は、先進国でも共通している。労働者階級自身の政党、それによる政権の問題を解決しなければ、根本的な勝利は不可能である。オバマ米政権やわが国民主党政権への幻想に見られるごとく、支配階級にほんろうされて終わる。
 破局が避けがたくなった大動乱の世界に直面し、わが国労働者階級にもこのことが鋭く問われている。

独立・自主の新政権でこそ打開可能
 戦後六十年以上続いた対米従属で多国籍大企業のための政治が、こんにちの危機をつくり出した。「政権交代」した民主党政権も、いっそう売国的な政治を行っている。従属政治は内外環境の激変に対応できず、根本的な限界に突き当たったのである。
 菅政権が続いてはもちろん、首相のすげ替えで事態は変わらない。対米従属政治の枠内を一歩も出ない党、勢力の間での「政権交代」では、内外の難題を解決できない。
 歴代政権とはきっぱりと異なる、独立・自主で国民大多数に依拠した強力で戦略のある政権を樹立して初めて、内外の危機を打開できる。
 すでに述べたように、それは第一義的に労働者階級の任務である。
 議会内の野党に頼り、四月の統一地方選挙、あるいは総選挙でわずかな議席の増加を図れたとしても、政治の根本的転換は不可能である。
 共産党は民主党政権への幻想をあおり、国民諸階層の闘いを鈍らせている。社民党の与党入りは当面ないようだが、民主党政権に対する評価があいまいでは闘えない。
 わが党が繰り返し述べてきたように、労働者階級は自らの要求を掲げて断固として闘い、国民諸階層の組織者として国民運動を大きく前進させ、目前の菅・民主党政権を追いつめ、打ち倒さなければならない。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2011