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2011年2月25日号 2面・社説 

G20で合意なく、諸国内、
諸国間の対立はいっそう激化

迫る破局、対米従属の戦後政治
の転換抜きに活路はない

 二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が二月十八〜十九日、フランスのパリで開かれた。
 世界経済の危機がいちだんと深まり、中東では政治的激変も進む中、会議は声明を採択したものの、具体的策では相変わらず合意できなかった。
 リーマン・ショック後の世界的な危機が破局に至ることを押しとどめてきた要因の一つである国際協調は吹き飛び、諸国間、諸国内部の対立はいっそう顕在化、激化しつつある。しかも、われわれは中東人民の決起と雪崩のような旧秩序の崩壊を眼前にしている。
 激動する世界では、戦後の対米従属政治の根本的転換、対米従属からの脱却と独立・自主の進路なしに、わが国の活路はない。
 これは、すぐれて先進的労働者の任務である。

危機が迫る中で開かれたG20
 今回のG20は世界の金融と実体経済の危機が深まり、破局が避けがたくなった下で開かれた。エジプト、チュニジアでは政権が打倒され、リビアやバーレーンなどの産油国、非産油国のイエメンにも動乱が広がった。
 前回、昨年十一月に韓国のソウルで開かれたG20首脳会合は、米国の危機切り抜け策としての輸出拡大戦略と、会議直前に発表された量的緩和政策を震源地として、各国間の「通貨戦争」が激化する中で行われた。米国は「危機再発防止のための不均衡是正」と称して、各国の経常収支を国内総生産(GDP)の四%以内とする案を提示したが、中国やドイツなどから反発を受けて孤立した。それ以前からの金融規制をめぐる米欧間の対立なども引き継ぎ、共同声明は発表されたものの、何の成果もなかった。
 しかも、六千億ドルもの国債買い取りという米国の量的緩和政策(QE2)は、世界中にいっそう深刻な影響を与えている。巨大金融機関はタダ同然で膨大な資金を手に入れ、投機をあおる。新興国にはその資金が流れ込み、バブルとその崩壊という「爆薬」をため込んでいる。原油、食料などの第一次産品価格は軒並み高騰、世界の貧困層の生活はますます耐え難いものになった。
 これを背景に、各国の事情も相まって中東人民が立ち上がった。米国の世界支配の要衝である中東地域は流動化、米世界戦略は打撃を受けた。
 まさに国際情勢は、経済も政治も大激変である。


諸国間の対立はさらに激化した
 今回発表された共同声明では、四月までに「不均衡」の監視を進めるための参考指針で合意し、十一月の首脳会合で「不均衡是正」のための具体的な行動計画をまとめることが盛り込まれた。食料・資源などの価格高騰への対応策の検討、新たな通貨秩序をめぐり国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)の検討でも合意された。
 いずれも具体策はなく、行動計画での合意も、それが実行される保証はない。
 会議を通じ、諸国間の対立は前回以上に顕在化した。
 米帝国主義を筆頭とする先進諸国とBRICsをはじめとする発展途上国の間、米国と欧州など先進国間の矛盾があらわとなり、いずれの対立も広範囲なものとなり、しかも激化した。
 中国、ブラジルなどのBRICs諸国は結束、南アフリカも加えて、「不均衡」や世界的インフレの責任を途上国に押しつける米国に激しく抵抗した。
 この結果、共同声明は参考指針について「目標となるものではない」とし、「不均衡」の評価・是正では「国や地域の状況を考慮する」とした。指針には、外貨準備高や為替レートは掲げられなかった。米国の思惑はとん挫したのである。
 政変が起きた中東諸国への対策をめぐっても対立した。声明は、エジプトとチュニジアの改革を「支援する」としたが、米欧が狙った「(民主化を)歓迎する」との表現は、反政府運動の波及を恐れるサウジアラビアや中国の反対で盛り込まれなかった。
 米欧間の矛盾も激化した。
 米国は、金融規制策をめぐっても「金融取引税を導入すべき」(ショイブレ独財務相)などの声に押され、孤立した。
 「SDRの検討」が明記されただけでなく、基軸通貨・ドルをめぐる意見の違いも改めて鮮明になった。フランスのサルコジ大統領は、三月に中国で開かれる国際通貨制度に関するセミナーを公然と支持、「ポスト・ドル」に向けた動きを隠さない。
 何より、昨年秋の首脳会合での声明に明記された、「(為替の)競争的切り下げ回避」という文言は、今声明ではすっかりなくなった。G20は事実上「協調」の役割を放棄し、通貨戦争、輸出競争を追認せざるを得なくなったのである。

各国内の階級対立も激化
 諸国間の対立激化と関連して、各国内部の矛盾も、著しく激化している。とくに発展途上国では、人民の生活がいちだんと困難となり、階級対立が激化した。
 食料などのインフレ、失業などに苦しむ中東諸国人民は、それを強いる独裁政権や王制に反対して、生きるために決起した。G20直後、リビアは内戦状態に突入し、米国の中東支配の要衝、サウジアラビアでもデモが始まった。エジプトなどでの新政権も先行きは不透明で、闘いが続いている。中国などでも動きがある。
 先進国も、今のところ政権は倒れてはいないものの、似たようなものである。各国の失業率はいずれも高止まりし、賃金は途上国労働者と競わされて上がらない。大銀行・大企業を助けたツケは「財政再建」として人民に押しつけられ、欧米諸国では労働者が大規模なデモやストライキに立ち上がっている。
 世界の支配層は震え上がり、各国はこれまで以上に自国の利益を守るのに必死となる。そうしなければ、政権が打ち倒されてしまうからである。
 中東をはじめとする人民の決起は、世界情勢を大きく動かした。まさに「天下大動乱」である。
 大規模な戦争が起こるかどうかはともかく、地域的・局地的な紛争が避けがたい時代となった。

戦後政治の大転換なしに片づかない
 今回のG20、中東諸国の激動に見られるように、諸国間、諸国内部の矛盾はいずれも激化、世界経済、政治の破局は避けがたくなりつつある。
 資源も市場も海外に大きく依存したわが国は、国際情勢の激変にもっとも大きな影響を受ける存在であり、生きていくことは容易ではない。しかも日本の財政は先進国中最悪で、財政で対応することはほとんど不可能である。
 問題は、すでに末期となった菅・民主党政権だけではない。戦後六十数年続いた対米従属で財界のための政治が、根本的な限界に直面したのである。
 民主党であれ自民党であれ、これらの党に幻想を持つことは、大局的な判断を誤らせるものである。平和ボケした共産党も同様である。
 政局の焦点は目前の統一地方選挙、あるいは政治再編と総選挙に向けられてる。だが、これらの結果などでは、政治の根本的な転換はできない。
 戦略を持ち、国民大多数に依拠した強力な政権でこそ、歴代政権のツケを清算し、新たな国の進路を切り開くことができる。それ抜きに、国民経済はもちろん、外交・安全保障や領土問題も解決できない。
 そのような政権を樹立するのは、第一義的に、わが国労働者階級の任務である。
 わが党はそれを繰り返し訴える。併せて、国民諸階層による広範で実力ある戦線をつくりあげるために力を尽くす。


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