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2011年2月5日号 2面・社説 

政権維持へ
なりふり構わずの菅政権

窮地の政権を追いつめ、倒し、
国民のための政権を

 第一七七通常国会が一月二十四日、召集された。
 政権支持率は低迷、各種選挙でも負け続け、「衆参ねじれ」で国会運営もままならない菅政権にとって、政権を維持し、来年度予算と関連法案を成立させることが至上命題となっている。
 このため菅政権は、国会運営では野党へのすり寄りを強め、政策面では、対米追随で多国籍大企業のための政治をますます露骨にさせている。
 菅政権では、わが国の進路を打開できず、破局が迫る世界に対応できない。
 労働者階級をはじめとする国民諸階層は、菅・民主党政権を躊躇(ちゅうちょ)なく打ち倒すべきときである。

政権維持へ野党にすり寄る菅政権
 政権維持に汲々(きゅうきゅう)とする菅政権は、なりふり構わぬ野党対応を行っている。
 麻生政権で財務相であった与謝野・元たちあがれ日本共同代表を「三顧の礼」で経済財政担当相に迎え、社会保障と税の一体改革を議論する政府・与党の社会保障改革検討本部には、安倍政権などで閣僚を務めた柳澤元厚労相を起用した。
 予算案についても、「修正」の可能性をほのめかして公明党などの歓心を買おうとし、財政再建策では自民党の提案を持ち上げてみせた。再三にわたって、社会保障制度改革での「超党での合意」を呼びかけている。
 社民党に対しても、ことあるごとに「尊重」するかのような態度を見せてひきつけようとしている。
 だが、菅政権の策動が功を奏する保証はない。むしろ、各政党は総選挙を射程に入れた行動を強めている。与謝野や柳澤の抱き込みは、国会運営上の新たな「トゲ」ともなっており、野党は解散・総選挙に追い込もうとしている。菅政権が野党に「協力」を迫ったところで、予算案はともかく、関連法案が首尾良く成立するあてはない。


政策では米国、財界の言うがまま
 菅政権が掲げ、進めている政策は、旧自公政権以上に、対米追随で多国籍大企業のための政策である。菅政権は「毒を食らわば皿まで」とばかり、わが国財界の支持をつなぎとめようとやっきになっている。 
 日米の新たな共通戦略目標策定を軸とする日米同盟の「深化」、例外品目が五%未満で農業など国内経済を犠牲にする環太平洋経済連携協定(TPP)への参加、米戦略に追随しての中国・朝鮮民主主義人民共和国への敵視とけん制、対米追随の軍備拡張と自衛隊の再配置、海外派兵の拡大、普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設策動、大企業への法人税減税、インフラ輸出に対する閣僚のトップセールス、消費税増税や社会保障制度改悪をはじめとする国民へのさらなる負担押しつけなどである。日銀にも同調を迫り、議会にさえ諮(はか)らぬまま、前例のない大銀行、大企業支援策に乗り出している。
 菅首相は、年頭の記者会見や施政方針演説でこれらの政策実行を繰り返し表明、TPPについては、スイスで行われたダボス会議に出向いて「国際公約」まで行ってみせた。財界に向け、支持取り付けを狙ったパフォーマンスである。
 財界もこれに呼応し、菅政権の政策を「評価」した上で「問題は実行できるかどうか」と、悪政の断行を要求している。
 一方、国民生活はますます犠牲にされた。
 口では「雇用」と繰り返す菅政権だが、失業者は一向に減らず、官製統計でさえ約三百万人もおり、労働者は生活の糧を奪われたままである。手厚い保護を受けた大企業は、リストラや海外展開で雇用情勢をさらに悪化させた。約一千百万人の労働者が年収二百万円以下という貧困状態に追い込まれている。
 農家への戸別所得補償制度は大規模優遇で、営農の足しになっていない。中小零細企業の倒産も相変わらず多く、廃業に追い込まれる企業はさらに多い。
 菅政権による対米追随、多国籍大企業への奉仕ぶりは、旧自公政権以上である。
 国民諸階層が菅政権への怒りを強め、政権支持率が下がり続けるのは、きわめて当然である。

迫りくる破局、政権取り巻く内外環境は悪化
 菅政権をとりまく国際環境は危機的で、破局が迫っている。
 リーマン・ショック後、米国の危機はますます深い。オバマ政権は、アジアへの「輸出倍増」で経済の衰退を押しとどめようとし、連邦準備理事会(FRB)を通して、国債買い取りなど空前の量的緩和策(QE2)による「ドル安政策」にも踏み込んだ。
 米国はアジアでのプレゼンスを維持すべく、米日韓同盟の強化による中国、朝鮮へのけん制と圧迫、中国への人民元改革要求などを強めている。TPPは、米国による、対中けん制の「アジア囲い込み策」でもある。
 だが、量的緩和によるドル垂れ流しは、大銀行を通して新興国や投機市場に殺到、先進国・新興国を巻き込んだ「通貨戦争」を激化させている。あふれ出た投機マネーは、世界にバブルや原油・食料価格の暴騰など、混乱をまき散らしてもいる。
 これは国際会議でときに米国が孤立したり、中東諸国での反政府闘争の発展を引き起こしている。とくに、中東の大国であるエジプトの不安定化は、米国の中東戦略を揺るがす事態に発展した。
 財政危機を抱え、下院の主導権も失ったオバマ政権には、金融緩和を続ける以外の手立てはほとんどない。
 オバマ政権による苦し紛れの危機脱出策は、世界中に新たな破局の芽を育てる結果となっている。

国民的戦線で菅政権を倒そう
 菅政権は、激変し破局が近づく世界で戦略もなく、米国とわが国財界の「言うがまま」である。これでは、民族の前途を切り開き、アジアの平和に貢献することなどできない。国民の生活と営業の危機を打開することも不可能である。
 わが党は、菅政権に、即刻の退陣を要求する。
 菅・民主党政権を打ち倒し、独立・自主、国民大多数のための政権を樹立すること以外に、内外の危機を打開する術(すべ)はない。
 悪政に反対する闘いは、国民各層の中で急速に広がっている。
 TPP参加に対しては、農業団体をはじめ、漁業団体、森林組合、医師会、消費者団体、近畿地方の協同組合、地方自治体などに「反対」「慎重」を求める世論や運動が広がりつつある。「TPP推進」の連合内でも、フード連合、農団労など、これに抗する動きが出ている。与野党の国会議員にさえ、動揺と意見の違いがある。沖縄県民は、普天間基地(宜野湾市)の県内移設の闘いを堅持している。保守層の中にさえ、日米同盟「深化」に対する危ぐが広がっている。
 窮地の菅政権を追いつめ、倒し、労働者をはじめとする国民大多数のための政権を樹立することで、国の運命をその手に握らなければならない。闘いを前進させ、国民的戦線を発展させなければならない。
 だが、共産党は菅政権が誰のための政権であるかを暴露せず、免罪している。社民党中央は、「独自の道」という名目で、民主党との連携の余地を残している。
 連合中央幹部は、この期に及んでも菅政権を支えようとしている。
 菅政権を支えることは、国民諸階層への裏切りにほかならない。
 TPP問題では幅広い戦線を形成し、国の進路転換の闘いを広げよう。沖縄県民と連帯して闘おう。「職よこせ」の闘いを全国で前進させなければならない。春闘では大幅賃上げを要求し、ストライキを構えて大胆に闘おう。
 新たな政権の樹立は、第一義的に、わが国労働者の課題である


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