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2010年12月5日号 2面・社説 

米日韓こそ東北アジアの
軍事的緊張をあおる元凶

菅政権による朝鮮敵視反対!
独立・自主の政権で平和の道を

 米軍と韓国軍は十一月二十八日〜十二月一日、原子力空母やイージス艦を投入し、朝鮮半島西方の黄海で大規模な合同軍事演習を強行した。さらに、米軍と自衛隊は三日から日本海などで、韓国軍も六日から海上射撃訓練を行う。米韓は、年内にも再度、合同演習を行う計画である。
 米日韓は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が韓国の支配下にある延坪島(ヨンピョンド)を砲撃したことを「(朝鮮戦争の)停戦協定違反」などと大騒ぎし、三月の哨戒艦沈没事件以来の軍事挑発をエスカレートさせている。
 米日韓の策動は、戦争につながりかねない危険な瀬戸際政策である。
 朝鮮は、今回の砲撃について「韓国軍による砲撃演習への反撃」とし、米日韓の敵視政策に激しく反発している。中国は、米韓演習に対抗して黄海で独自の軍事演習を行いつつ、六者協議の開催を呼びかけた。
 東北アジアの緊張は極度に高まり、まさに「波高し」である。
 危機をつくり出しているのは米国で、日韓の追随者にも責任がある。戦争の道に反対し、東北アジアの平和を守れるかどうか、わが国にとって存亡の危機である。自国の運命をその手に握る独立・自主の政権こそが核心的課題である。

緊張の元凶は米国、追随者にも責任
 朝鮮半島、東北アジアの危機をつくりだしてきたのは、歴史的にもこんにちも、米帝国主義とその追随者である。
 朝鮮戦争は終わっておらず、一九五三年以来の休戦状態にすぎない。朝鮮半島は南北に分断され、米日は、一方の朝鮮を国家として認めず、敵視と包囲を続けてきた。
 二〇〇〇年以降、米国は朝鮮を「悪の枢軸」と決めつけ、先制核攻撃も公言した。追随する日本も、拉致問題を口実として朝鮮への敵視と排外主義を強めた。〇三年には中国を議長国として、朝鮮の核放棄と無力化を狙った六者協議が始まった。
 朝鮮が「先軍政治」を掲げて核兵器を握り、米日の包囲を打ち破ろうとしているのは、国土と国民を守るため当然のことである。朝鮮は核を手放さないであろう。
 延坪島が位置する北方限界線(NLL)は、米軍が一方的に決めたものである。朝鮮は同意していないし、これまでも、この海域では何度も衝突が起きてきた。
 このような紛争・小競り合いが続く地域の歴史からすれば、哨戒艦沈没事件以降の米日韓の策動はきわめて異常なものである。
 わが国マスコミや御用学者、さらに議会政党は、今回の緊張を「朝鮮の後継体制」なるものと結びつけている。「こりない面々」と感心するばかりだ。だが、表面的で単純な見方ではなく、情勢の全体、とりわけ米韓日の意図などを見抜くことなしに、問題の本質と予想される推移を理解することはできない。
 率直に言って、米国と日韓が朝鮮を滅ぼすことを断念し、国交正常化で生きることを認めれば、東北アジアの緊張は即刻解決するのである。


危機背景にアジア介入を強める米国
 米国が朝鮮をいっそう軍事的に挑発し、きっかけをつかんでは危機を拡大し、それを口実にアジアへの軍事的・外交的関与を強めるのは、米国自身の内因、その抱える危機の深さゆえである。
 一九三〇年代の大恐慌と比較される今回の危機は、第二次大戦後の基軸通貨国・米国が競争力を失って衰退し、基軸通貨国の特権と金融グローバリズムで食いつなぎ、極端な世界的不均衡をつくり出して力尽きての結果であった。
 オバマ政権は、危機脱出策として膨大な公的資金投入などを行った。それでも、失業率の高止まりや国民生活の窮乏で政権批判が高まった。
 今年に入って、オバマ政権は「輸出倍増計画」を打ち出し、アジアへの輸出拡大による打開、雇用増加を狙った。ドル安、「失業の輸出」である。最大の貿易赤字相手国である中国には人民元改革を迫った。
 こうした背景の下で今春来、米国は哨戒艦事件を口実に、日韓を巻き込んで朝鮮敵視を強めた。だが、国連での制裁はままならず、米国の危機はいちだんと進んだ。
 オバマ政権は十一月、中間選挙に大敗、下院の主導権を共和党に奪われた。デフレの危機も強まった。連邦準備理事会(FRB)は、六千億ドルの国債買い取りという異例の量的緩和政策に踏み込んだ。
 だが、二十カ国・地域(G20)首脳会議では、新興国や欧州諸国からの批判が集中、米国は「通貨戦争の仕掛け人」として孤立した。量的緩和策による過剰流動性が世界中でインフレやバブルを引き起こし、人民に苦難を強いているからである。
 こうした中で米国は、朝鮮半島での再度の緊張を口実として、アジアでのプレゼンスを維持して市場を確保するとともに、国際政治上の劣勢を巻き返そうとしている。

米中の対立は新たな局面となった
 朝鮮を敵視する米国の真の狙いは、中国を自らが主導する「国際秩序」に取り込み、協調関係にとどめることである。これは、九五年の「東アジア戦略」以来、一貫したものである。今回の演習が、中国に向けられているのもそのためである。
 米中両国は、貿易や国際政治などで深い依存関係にある。だが、米国の衰退と中国の台頭を背景として、両国の対立はこれまでと異なる局面に入った。
 G20直前、オバマ大統領はインドなどアジア諸国を歴訪、「国際的な枠組みとルールに沿って行動すべき」と、中国をけん制した。対する胡錦濤・中国国家主席は欧州を訪問、米国の包囲網を切り崩す動きを強めた。フランスでは航空機の大量購入で合意、財政赤字を抱えるポルトガルでは国債購入をちらつかせてひきつけた。直後の米中首脳会談では、胡主席はオバマ大統領の人民元改革要求を拒否、アジア太平洋経済協力会議(APEC)でも、米国ペースの市場統合に異議を唱えた。
 軍事的にも、中国は軍備拡張を進め、尖閣諸島問題に見られるように、海洋戦略も強化しつつある。
 米国だけでは中国を抑え込めなくなった。
 この環境下での、朝鮮半島の緊張である。両国は引くに引けない。
 むろん、オバマ政権には朝鮮、まして中国とことを構える余裕はない。アフガニスタンとイラクでの戦争を抱え、イランの核問題も片付かないからだ。中国も国内問題を抱え、米国との軍事衝突は望まない。
 とはいえ、米日韓が軍事演習を繰り返し、中国がこれに対抗する中、偶発的なものであれ、軍事的衝突が起こる可能性は排除できない。
 東北アジアの緊張は、中長期に続く。

緊張あおる菅政権の策動を打ち破れ
 「波高し」のアジア情勢の中、菅政権は戦略もなく、対米従属に終始している。
 菅政権は国会での朝鮮非難決議に続き、日米合同演習などで緊張を高めている。日米同盟「深化」の具体化にも踏み込んだ。武器輸出三原則の緩和などである。朝鮮学校に対する無償化手続きを停止する、許し難い排外主義もあおっている。
 野党は、朝鮮への非難決議に賛成するなど、敵視策動に手を貸している。共産党も、米国の敵視政策や合同演習を非難しないという堕落ぶりである。社民党の態度も大差ない。
 日本は、戦時指揮権を米軍に握られた韓国と同様、戦争の引き金を他国に握られている。これでは、米国の介入が強まり、中国が台頭するアジアで生きていくことはできない。尖閣諸島や北方領土などの領土問題も解決できない。
 まず、自国の運命を握るため、国家としての独立を勝ち取らなければならない。そうしてこそ、アジアでの戦争を阻止し、平和と繁栄のために役割を果たすことができる。
 日米安保条約を破棄し、すべての在日米軍基地を撤去させなければならない。対米従属の軍備拡張に反対しなければならない。即時無条件で、朝鮮との国交正常化を実現することは不可欠である。
 売国政権を打ち破り、労働者階級、国民多数のための独立・自主の政権を樹立することが急務である


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