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2010年11月25日号 2面・社説 

日米首脳会談で
さらに鮮明になった、
菅政権の対米従属政治

独立・自主の政権めざし
「同盟深化」を打ち破ろう

 韓国・ソウルでの二十カ国・地域(G20)首脳会合(サミット)に続き、菅首相とオバマ米大統領が十一月十三日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開幕に先立って会談を行った。
 オバマ・菅の首脳会談は、三回目である。鳩山前政権時に揺らいだ日米関係を立て直すことは、内外政治に行き詰まった菅政権にとって喫緊の課題であった。危機を抱え、強大化する中国へのけん制を強める米国にとっても、事情は似たようなものである。
 両首脳は、日米の「同盟深化」で合意するための協議を早めることで合意した。
 だが、日米両国を取り巻く危機は深い。米国自身による、リーマン・ショック後の危機脱出策が世界経済に新たな破局を準備し、諸国間、諸国内の矛盾を激化させているからである。
 菅政権に対する闘いを強めなければならない。時代錯誤の対米従属政治を打破することが、ますます急がれている。

衰退し、影響力低下させる米国
 産業競争力の衰えで膨大な経常収支赤字をたれ流す米国は、とくに一九九〇年代後半以降、世界からの資金環流で食いつないできた。だが、二〇〇〇年代に入るやIT(情報技術)バブルが破裂、その後の住宅バブルも〇七年のサブプライムローン危機、さらにリーマン・ショックで崩壊した。世界から資金をかき集めての「繁栄」は続かなくなった。
 オバマ政権は危機脱出のため、膨大な公的資金による大銀行・大企業救済策に加え、米連邦準備理事会(FRB)は異例の量的緩和政策にまで踏み込んだ。だが、これは新興国のインフレやバブルを誘発、世界の新たな破局の芽を育てている。
 米国はデフレの危機に脅えている。量的緩和政策で、欧州や新興国から「通貨戦争の震源地」として批判にさらされた。経常収支に「数値目標」を導入する提案への反発、さらに基軸通貨ドルへの不信も高まり、G20首脳会合で孤立した。国際的影響力は急速に低下している。
 オバマ政権は「輸出倍増計画」を掲げ、アジアへの参入を急いでいるが、環太平洋経済連携協定(TPP)を活用したAPECの市場統合にも異論が噴出している。
 米国は、強大化する中国へのけん制を強め、早期の人民元改革や「国際的なルールの中で適切な役割と言動」を要求、米国主導の協調関係にとどめようとしている。だが、この対中国戦略は、アフガニスタン占領などと同様、容易ではない。
 オバマ政権は、「茶会党」などとしてあらわれた国民の不満に応えられず、支持率は急落、中間選挙で歴史的な大敗を喫した。
 このように衰退する米帝国主義にとって、日本を自らの世界戦略にいっそう奉仕させることが、ますます重要になっている。


対米追随、末期症状呈する菅政権
 わが国支配層も、多極化が定着し、争奪が激化する世界への対処を迫られている。巨大金融機関を頂点とする多国籍大企業は、わが国の国際的発言権の強化も望んでいる。
 だが、菅政権は、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件や東シナ海でのガス田開発問題で弱腰外交に終始し、レアアース(希土類)の輸出抑制など、中国の大国主義的な態度になすすべがない。ロシアとの間の北方領土問題でも、メドベージェフ大統領の国後島への訪問強行に有効な対抗手段をとれず、歯舞諸島・色丹島の返還を約束した日ソ共同宣言すら、反故(ほご)にされようとしている。
 菅政権は戦略もなく、いっそうの対米従属でこの危機を打開しようとしている。鳩山前政権時に普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設問題で揺らいだ日米関係の再構築を、外交上の最重要課題と位置づけている。
 内政上も、菅政権は深刻な経済、国民の生活と営業の危機を打開できず、衆議院補欠選挙や地方選挙で連敗続きで、閣僚の失言も重なって政権基盤は弱まり、早くも「死に体」化している。菅政権にとっては、政権浮揚のために「得点」が欲しいところであった。
 今回の首脳会談は、こうした日米両国の事情の下で行われた。

対米従属をいっそう深める菅政権
 首脳会談で菅首相は、対中関係、対ロ関係などを念頭に「米国の存在、米軍のプレゼンスがより重要である」と持ち上げ、米国のアジアへの関与拡大を願った。オバマ大統領に、日米安保条約による「日本防衛」は「揺るがない」と表明されるや有頂天になっている。
 菅首相は、米国主導でわが国財界も願うTPPへの参加意思を表明、農漁民など国民経済を犠牲にすることを明言した。菅首相は、普天間基地移設問題については、名護市辺野古への代替基地建設を内容とする、五月の日米共同声明を堅持する方針を表明し、沖縄県民に引き続き基地負担を押しつける意思を明らかにしている。
 首脳会談では、かねてから準備されてきた、日米安保条約改定五十周年に合わせた「同盟深化」の文書発表は見送られた。
 だが、日米首脳は「同盟深化」のための協議を加速させることで合意し、共同声明を来年春に発表する方向で一致した。主な内容は、日米両国による新たな「共通戦略目標」を策定することである。
 今回、菅首相は、米軍による占領が行き詰まるアフガニスタンへ、自衛隊の防衛医官らを派遣することを表明した。最近の朝鮮半島における新たな緊張に対しては、米国などともに、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への新たな制裁と挑発を策動している。これは、「同盟深化」の先取りと言えるものである。
 これらは、米国の世界戦略にいっそう貢献する危険な道である。国民諸階層の生活はいっそう厳しく、長期化する。

対米従属政治を打破する好機
 米国の衰退は誰の目にも明らかである。わが国も長期デフレから抜け出せず、政治の混迷と相まって、国際的存在感はますます低下している。世界の諸国・人民は、「落ち目同士」の同盟の先行きを見抜いている。
 日米による対中国包囲網が成功する保証はない。中国政府は国内で深まる不満を意識し、社会不安につながりかねない人民元改革には、とりわけ慎重である。また、日米ともさまざまに中国への依存を深めており、対中国戦略で長期にわたって足並みを揃えるのは容易ではない。
 朝鮮の核問題も、米日には一向に解決できる展望がない。アフガニスタン、中東など世界の人民は、米国も、その手先となる日本も許さない。
 沖縄県民は、知事選の結果にかかわらず、普天間基地の県内移設を許さない。岩国(山口)、横須賀(神奈川)などでも粘り強い闘いが続いており、在日米軍再編は遅々として進まない。在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)をめぐっても、日米両国間には意見の隔たりがある。
 事実上の日米経済連携協定(EPA)であるTPPに対しては、農漁民をはじめ、地方の経済界も含めて反対の声が根強く、大衆行動が始まっている。
 米国の量的緩和政策は、円高につながる。短期的な上下動はともかく、円高傾向は長期に続く。アジア市場をめぐっては、日米は競い合う関係でもある。わが国の中小企業はもちろん、大企業の一部にさえ不満が高まらざるを得ない。


 わが国支配層の対米従属政治は、ますます行き詰まっている。
 国民的戦線で闘う好機である。
 日米安保条約を破棄し、米軍基地撤去と生活防衛の、広範で強力な大衆行動を巻き起こさなければならない。
 対米従属の政権を打ち倒し、独立・自主の政権を樹立してこそ、わが国の進路は打開できる。


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