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2010年9月25日号 2面・社説 

第2次菅政権が成立

危機打開は労働者階級と
国民大衆が立ち上がり、
目前の政権を打倒し、
国民大多数のための政権を
樹立する以外にない

 民主党代表選に勝利した菅首相は九月十七日、改造内閣を発足させた。
 外相に、米国の信認が厚い前原前国交相、経産相に日立製作所出身の大畠前衆議院国家基本政策委員会委員長、総務相に「改革派」の代表格である片山前鳥取県知事を起用した。
 菅政権は再選前から、小泉改革を主導した経済財政諮問会議に匹敵する機関として「新成長戦略実現会議」を発足させるなど、財界と中央官僚が言うままの政治を行っていた。内閣の顔ぶれは、まさに、対米従属で多国籍大企業のための政策を行う政権であることを示している。
 内外の危機は深刻で、労働者をはじめとする国民諸階層の生活と営業はますます厳しい。労働者階級と国民大衆はこのような政権を許さず、打倒し、国民大多数のための政権を樹立することに向かってまっしぐらに前進しよう。

ますます深刻な国民の生活と営業
 国民生活の現状はどうか。
 完全失業者は、全国で三百五十万人を超えて高止まりしている。官製統計にあらわれない実際の失業者数は一千万人近いと言われ、ハローワークには職がない。有効求人倍率は県によっては〇・二倍前後と、一つの職を五人の労働者が競う、深刻な事態となっている。職に就けていても、給料は十年以上も上がらず、下がった労働者が大多数である。中小企業の労働者の大部分には、ボーナスさえない。非正規労働者は、生活保護水準以下での生活を強いられている。
 市場開放政策など、売国農政に苦しめられてきた農民には、農業で食べられる水準から約三割も低い、空前の米価低落が襲いかかっている。口蹄(こうてい)疫被害で家畜を処分せざるを得なかった宮崎県の酪農家は、生活復興のあてさえない。沿岸漁民は、大企業の乱獲による漁場荒廃で収入が減少した。農漁民は、流通大手資本による「買いたたき」を受け、歴史的な猛暑による収穫減少で深刻な打撃を受けている。
 リーマン・ショック後、中小零細企業の倒産は増加し、負債総額が一千万円を超えるものだけで年間一万三千件以上に達する。廃業に追い込まれる零細企業はさらに多い。倒産・廃業をまぬがれても、大企業からの度重なる単価切り下げ要求で赤字操業にさせられた上、円高で打撃を受けている。大銀行は資金があっても融資せず、資金繰りはいよいよ困難である。かろうじて残っていた都市部の商店も、「エキナカ店」などに押されて青息吐息である。地方経済の疲弊も著しく、ゴーストタウン化が著しい。
 こうして、生活保護受給者は百九十万人を超え、民主党政権下の一年間で二十万人以上も増加した。年間三万人以上の人びとが自ら命を絶ち、うち失業者と高齢者が半数以上である。
 普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設問題では沖縄県民の期待を裏切り、「日米共同声明」で名護市辺野古への移設が約束された。全国の基地周辺住民も、爆音、犯罪などの深刻な被害に苦しめられている。
 これが現実である。
 民主党政権は、自公政権以上に、対米追随で国民生活を犠牲にする政権なのである。


菅政権は国民に犠牲を転嫁し、大企業を助ける政権
 「有言実行」を掲げる菅政権は、何を行おうとしているのか。
 菅政権は、わが国多国籍大企業がアジアで稼ぐことを後押しする「新成長戦略」を打ち出している。その中心的な政策は、法人税率引き下げ、自由貿易協定(FTA)、規制改革である。企業の再編・淘汰(とうた)、労働者の解雇を容易にする法整備もたくらまれている。
 財界は「新成長戦略」を「できるだけ前倒しで実施してほしい」(米倉・日本経団連会長)などと要求し、財界の手先である伊藤・東大教授は「直球を真ん中に投げ込め」と、菅政権にハッパをかけている。
 これらは「内需拡大」「雇用重視」(菅首相)どころか、いっそう外需に頼り、多国籍大企業がアジアでの国際競争に勝ち抜き、ぼろもうけすることを助ける政策である。
 大企業への減税の一方、菅政権は消費税率大幅引き上げの機会を狙っている。逆進性の強い消費税の増税は、低所得者の生活をますます困難にさせる。
 「時給千円」の公約も事実上棚上げにされ、大多数の労働者を低賃金の下に放置している。「格差是正」の名の下に策定を進めた労働者派遣法改正案もザル法である。
 「子ども手当」の財源として所得税・住民税の扶養控除の一部が廃止され、多くの家庭に増税を強いている。その「子ども手当」も、来年度以降、継続されるかどうか危うい。健康・介護保険料、保育料などの負担も増えた。自公政権下で決まった、国民年金保険料の引き上げも続いている。「廃止」を公約した、高齢者を医療から閉め出す後期高齢者医療制度も存続である。たばこ税も増税される。
 FTA、経済連携協定(EPA)は農産物の全面自由化で、わが国農業・農民に壊滅的な打撃を与えるものである。一時、農民の支持を集めた戸別所得補償も、FTAなどの自由化とセットである上、大規模化を促す手段であることが明らかになっている。
 鳩山前政権が「一丁目一番地」と位置づけた、地域主権改革も進められようとしている。実態は道州制の導入であり、「安上がりの政府」を実現するための、地方への犠牲押しつけである。
 これらで多国籍大企業が成長したとしても、国民諸階層の生活と営業はますます犠牲にされる。連合中央の一部幹部、さらには「左派」の一部が宣伝する「福祉社会」の根拠など、どこにもない。

国民大多数のための政権を
 菅政権が行うのは、大銀行を頂点とする国家独占体の「覇権的利潤追求のための政治」である。
 国民が期待した「政権交代」だが、この一年の経過は、実態はまやかしであったことを示している。自公政権であれ民主党政権、菅政権であれ、対米追随で多国籍大企業のための政権を打倒し、独立・自主で国民大多数のための政治を実現できる政権を打ち立てること、これこそが核心である。
 菅政権を取り巻く内外環境は危機的で、世界経済には新たな破局が迫っている。各国は「通貨安競争」に踏み込み、国際協調はすでに吹き飛んだ。頼みとする米国もデフレの瀬戸際で、経済・政治・軍事すべての面で衰退を早めている。米欧に中国なども加え、アジアをめぐる市場争奪は激化し、この地域の不安定化は深まった。
 早速、尖閣諸島近海での中国漁船の衝突を機に、日中関係が怪しくなっている。対米従属の政権では、日中関係の打開も不可能である。
 しかも、わが国の財政は危機的で、「新成長戦略」もこの限界から逃れられない。
 それにしても、菅政権は財界のための政治を行うためにあがくであろう。国民の怒りと不満に直面することは不可避的である。
 このような政権に対して「よりまし」などという評価を下すことは、敵への幻想を植え付け、闘いを押しとどめる反動的な役割を果たすことになる。
 強力な国民運動の発展こそが求められている。
 連合指導部、とくにその中枢は、自公政権、民主党政権を助けた裏切り者集団である。
 だが、社民党も態度を問われている。報道によれば、社民党中央は閣外協力、もしくは連立復帰への道を探っているという。もちろん、党内や支持者がその道で一致しているわけではないだろう。だが、細川政権、村山政権、最近の鳩山政権に続いて、さらに財界のための政治に協力することで、社民党に期待する人びとの支持を受けられるだろうか。
 国民生活を守るためには、目前の政権を打倒し、国民大多数のための政権を樹立する以外に打開の道はない。労働者・労働組合は、悪政に不満を持つ国民諸階層の先頭で闘わなければならない。


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