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2010年9月15日号 2面・社説 

難問山積の民主党政権

対米従属、多国籍大企業の
ための内外政治を打ち破る好機

 民主党代表選挙が九月十四日、国会議員による投票が行われ、菅首相が勝利した。
 マスコミの大騒ぎとさまざまな論評はともかく、民主党代表選の決着を経た内部状況の変化、抗争と野党の攻勢を考慮すれば、いっそう不安定な政権であることに疑問の余地はない。政局は総選挙、あるいは政治・政党再編に向かうだろう。新政権は、そうした内外の難局への対処が迫られることとなった。
 世界経済には新たな、もう一つの破局が迫っている。
 何より、資本主義の総本山、米帝国主義が「二番底」とデフレの危機におびえている。国際的な「ドル離れ」のすう勢は変わらず、国際競争力の回復と不均衡を解決するあてはない。一月の一般教書演説で繰り返した「雇用」もいっこうに改善せず、国内矛盾は激化している。あせりに駆られたオバマ政権の追加経済対策には、政権内からさえ「効果がない」という声が上がっている。
 膨大な投機マネーが市場にあふれ、巨大金融機関とその手先が利を求めて地球上を飛び回っているこんにち、危機はどこから起きてもおかしくない。
 米帝国主義は、政治・軍事面でも衰退が早い。アフガニスタン、イラクの泥沼から抜け出せず、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への圧迫もままならず、力の限界は明らかである。世界は、新興国を含めた特殊な多極化を深めている。
 こうした中、アジアをめぐる各国の争奪戦はますます激しい。
 民主党政権は、大銀行を頂点とする国家独占体の「覇権的利潤追求のための政治」を運命づけられている。
 代表選という茶番の陰で、国民生活はそっちのけにされた。
 労働者は、この政権への幻想を捨てなければならない。日米安保条約破棄を掲げ、国民の生活と営業を守る闘いを繰り広げ、対米従属で多国籍大企業に奉仕する民主党政権を打ち倒そう。独立・自主の政権の樹立こそ、現状を打開する唯一の道である。

国民生活を改善できぬ民主党政権
 国民各層の生活は一刻の猶予もないほどに深刻である。
 失業率は五%以上に高止まりし、労働者の給料は十年以上も上がっていない。中小企業は大企業の国際展開に取り残され、大銀行は融資にさえ応じず経営は成り立たない。農民は歴代売国農政に加えて米価低落に苦しめられ、さらに歴史的な猛暑に追い打ちをかけられている。
 ところが、民主党政権に課されているのは、国民を助けるのではなく、財界のための政治を行うことである。大銀行と一握りの多国籍大企業が「世界の成長センター」となったアジア市場でのし烈な競争に勝ち抜き、利益をむさぼることを支援する政治である。
 内政面は、すでに表明された「強い経済、強い財政、強い社会保障」にそった「新成長戦略」を断行することである。大企業には法人実効税率を引き下げ、重点分野に直接に国家財政をつぎ込んで、閣僚が多国籍大企業のセールスマンと化して市場開拓に血眼になることである。
 日本経団連、経済同友会、商工会議所の財界三団体は、設置された「新成長戦略実現会議」にそろって参加、直接的に政治に参画できる場を得た。これは、自公政権下における経済財政諮問会議において、奥田・日本経団連会長(トヨタ自動車会長)らが陣頭指揮を執り、小泉改革を支えたことを想起させる。
 財政再建を口実とする、国民への犠牲転嫁も急いでいる。多国籍大企業の競争力強化を狙って、小さく効率的な政府を実現するためである。
 事業仕分けをはじめとする「ムダ排除」を地ならしとして、消費税率大幅引き上げが策動されている。参議院選挙で国民の厳しい審判を受けたにもかかわらず、民主党政権は日本経団連との間で「消費税を含む税財政・社会保障制度の改革推進が不可欠」との認識で一致、増税の方針を捨てていない。後期高齢者医療制度や障害者自立支援法の事実上の継続と併せ、年金制度などの社会保障制度の大改悪もたくらまれている。
 地方制度改革も進めようとしている。「地域主権」「権限委譲」など聞こえのよいスローガンを掲げるが、実際には国の財政負担を減らすためのもので、地方、住民に犠牲を押しつけるものである。
 これらの政策で、多国籍大企業は海外展開をいっそう強め、そこで荒稼ぎする。一方、国内市場は軽視され空洞化が進み、海外展開できない中小零細企業、そこで働く労働者など、国民各層は容赦なく切り捨てられる。労働者の賃金はアジア諸国の労働者と競争させられてますます低下し、さらに街頭に放り出される。地域経済はますます疲弊し、都市との格差は拡大する。
 民主党政権には、深刻な国民生活を改善することなどできない。


対米追随で海外派兵策動強める
 外交政策も同様で、民主党政権は、財界のためにわが国の国際的発言権を強化することを進めている。衰退する米国に付き従い、お先棒を担ぐことで、世界戦略の前線基地になることである。
 鳩山政権が表明した、普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設はそのままである。民主党政権は歴代自民党政権と同様、日米安保を最優先し、沖縄県民の願いを踏みにじっているのである。
 米国の求めに応じて「洪水被害救援」を理由に、アフガン隣国のパキスタンへの自衛隊機派遣に踏み切った。アフリカ・ソマリア沖での「海賊」対処活動も延長した。
 日米共同開発中のミサイル防衛(MD)技術を、米国が求める第三国に供与することも検討、併せて武器輸出三原則の緩和を策動している。非核三原則も「米戦略の妨げになる」と投げ捨てる策動を強め、集団的自衛権の行使容認にも踏み込もうとしている。
 中国をけん制するための米日韓同盟を強化し、米韓軍事演習にも自衛官を参加させた。沖縄駐留の自衛隊混成団を旅団に格上げし、離島の国有化による管理強化も打ち出している。オーストラリアとも物品役務相互提供協定(ACSA)を結び、軍事同盟化が進んでいる。朝鮮への敵視と制裁も自公政権と何ら変わらず、十月には、米韓とともに朝鮮を包囲する形での海上封鎖訓練を予定している。
 年内にも予定される「防衛計画大綱」の改定では、朝鮮半島や台湾海峡での有事、さらに国連平和維持活動などへの「積極参加」のための「機動的で実効性のある防衛力整備」を提言するという。
 このほか、イランへの制裁でも、米国の要求に屈した。財界の求めに応じ、日本農業を壊滅に追い込む自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)の締結を進めている。
 まさに亡国の選択であり、国の進路は重大な岐路に直面している。

民主党政権への幻想を捨てよう
 参議院選挙で大敗した民主党は、新政権へと「衣替え」しても、難問はいよいよ山積している。
 国と地方の累積債務は国内総生産(GDP)の二倍近くに達している。その中で「円高対策」などに加え、「新成長戦略」も行わなくてはならない。民主党政権は、何をするにも、財政面での大きな制約から逃れられない。
 国民の政治に対する怒りと不満は充満している。地方への犠牲押しつけには、全国知事会でさえ反発を強めている。
 悪政を打ち破る好機である。
 ところが、連合中央の一部幹部は民主党政権への幻想をあおるばかりか、財界と歩調を合わせて「新成長戦略」の実行を願っている。かれらは、「福祉目的」と称して消費税増税を容認してさえいる。
 連合傘下の労働者、活動家には、明日の生活と営業のあてさえない国民諸階層の先頭で、これを打開するために闘うことが問われている。
 日米安保条約の破棄を掲げ、米軍基地撤去と生活防衛の闘いを発展させなければならない。対米従属政治を打ち破り、国民大多数のための政権を樹立するため闘おう。


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