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2010年9月5日号 2面・社説 

民主党代表選挙は
茶番にすぎない


幻想を捨て、国民大多数の
ための政権をめざし闘おう

 世界資本主義のいま一つの、あるいは新たな破局が迫りつつある。
 「菅・小沢」による民主党代表選は、茶番にすぎない。どちらも実質は同じだからである。
 国内矛盾の激化は不可避である。労働者階級は幻想を捨て、闘いに備えねばならない。
 日米安保条約の破棄を掲げ、米軍基地撤去と生活防衛の闘いを繰り広げ、まず目前の政権を追い詰め打倒し、国の完全な自主性と民主を闘い取ろう。そのような政権の樹立こそが、問題の核心である。

破局が迫る世界、衰退する米国
 わが国を取り巻く危機は緩和のきざしさえ見えず、むしろいっそう深まっている。
 二〇〇八年秋のリーマン・ショック後、一時「出口」が言われた世界経済だが、欧州発の国家の信用不安(ソブリンリスク)に揺さぶられている。危機対応策としてつぎ込んだ膨大な財政出動が、各国の財政赤字を一気に深刻化させ、投機マネーの介入もあり危機に陥ったのである。リーマン破たん、〇九年秋のドバイ・ショックに続くこの衝撃は、世界資本主義が、合間に相対的な安定期さえないまま危機が頻発する、極度に不安定な状況に陥っていることを示している。
 金融が極度に肥大化し、しかも世界的に一体化しているこんにち、危機はどこから吹き出すか分かず、それに十分な備えのある国などない。一九九〇年代末のアジア通貨危機を教訓に外貨準備をたくわえ、「対応力」を強めたとされるアジア諸国も例外ではない。
 先日行われた先進国の中央銀行首脳会議でも、深刻な危機に対する打開策は出なかった。帝国主義者どもは、際限のない市場への資金供給や銀行救済策などの「空砲を撃ち続ける」(英フィナンシャル・タイムズ)以外にない状況に陥り、あがいている。
 他方、米国は政治・軍事・経済のすべての面で衰退を早め、世界は帝国主義の欧州諸国だけでなく、中国やロシアなどの新興国が台頭する、特殊な多極化を深めている。第二次世界大戦後のドル体制は、末期となった。
 危機の中、「輸出倍増計画」を掲げるオバマ政権をはじめ、ユーロ安の「追い風」に乗る欧州諸国など、各国は新興国市場への輸出を強めるべく、「通貨安」を競い合う状況となっている。リーマン・ショック後の世界が破局に至ることをおしとどめてきた要因の一つである「国際協調」はますます難しく、各国は他国に危機を押しつけ合っている。
 米国は、中国による国債購入に依存しつつ、人民元問題や台湾への武器供与、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核問題など、さまざまな問題で中国を揺さぶることで、協調関係の下にとどめようとしている。対する中国も、国益から対応を強めている。こうして、「世界の成長センター」として激しい争奪の場となったアジアは、政治・軍事面でも不安定さを増してる。
 「日米基軸」を掲げる民主党政権は、このような激変する世界への対処を迫られている。


山積みの難題に打開策のない日本
 こうした危機の下、わが国は円高、著しい需給ギャップ、失業、国と地方の財政難にあえいでいる。
 急速な円高に際して、菅政権は日銀に圧力をかけ、さらなる金融緩和策を実施させた。併せて、エコポイント制度延長などの「円高対策」も発表したが、マスコミでさえ「新味に乏しい」と言う程度のもので、追加対策実施を迫られることは疑いない。
 まして、国民の生活と営業は深刻である。円高で中小企業の経営危機は深まり、労働者の失業率は高止まり、長期化している。農水産業の苦境に、歴史的な猛暑が追い打ちをかけており、支援策が急がれている。
 だが、政府の財政には余地がなく、取れる手立てはきわめて限られている。菅は「雇用を起点とした国づくり」などと言い、小沢は「子ども手当」などマニフェスト(政権公約)の実行を掲げているが、当面の幻想をあおるにはともかく、実現は困難である。
 ギリシャなどの事態は、わが国支配層にとっても他人事ではない。鳩山前政権が行い、こんにち小沢が繰り返し述べている「ムダ排除」にも限界があり、総選挙時に菅がぶちあげたように、早晩、消費税率引き上げなど国民への大増税は避けがたい。小沢が強調する「マニフェストの実行」など不可能なのはもちろん、菅が言う「消費税増税は選挙で問う」さえ保証はない。財界が「財政再建」をあせっているからである。
 他方、民主党政権は「新成長戦略」を掲げ、大企業が求める法人税減税や大企業がアジアで稼ぐための条件整備、そのためのセールスマンを買って出ることには余念がない。もちろん、多国籍大企業の手先である民主党政権には、大幅賃上げなど国民のふところを豊かにし、国内での需要をつくり出す政策など取れるはずもない。
 外交政策でも、「いっそう緊密な(日米)協力関係を構築」(小沢)、「日米関係の深化」(菅)など、日米安保条約に縛られた、歴代自民党政権と変わらぬ時代錯誤の対米従属である。普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設をはじめとする米軍基地問題などの対米外交はもちろん、台頭する中国に対する態度などでも、わが国の進路を打開することなど不可能である。小沢は「海兵隊不要論」に言及して幻想をあおっているが、「左派」をひきつけるための欺まんにすぎない。第一、「アジア重視」の米国が認めない。
 まさに、代表選は茶番にすぎない。

民主党政権に打開は不可能
 マスコミは異常な宣伝を繰り広げ、「事実上の首相選び」などと、民主党代表選挙への有権者の幻想をあおっている。
 だがすでに述べたように、菅首相の続投であれ、あるいは小沢が新代表となろうが、こんにちの世界資本主義の危機に対する打開策がないのはもちろん、対米従属政治の枠を一歩も出ない、多国籍大企業の手先である点で同じである。
 新政権は、内外の危機の前で立ち往生せざるを得ない。まして、基本政策で自民党と変わらぬ民主党政権では、国民の政治への不満と怒りを解消することなど不可能である。
 歴代自民党政権の対米従属政治への怒りを高めた国民は、昨年の総選挙で、「国民の生活が第一」を掲げた民主党に期待を託した。だが、一年を経て、そのメッキは完全にはげ落ちている。国民の失望と怒りの前に、鳩山前首相は政権を投げ出し、菅政権も参議院選挙で厳しい審判を受けた。マスコミでさえ、代表選の大騒ぎに対する国民のさめた視線や「投票用紙に『バカ』と書きたい」という怒りの声を報じている。新政権の命運もすでに見えている。
 しかも、激しい選挙戦を経た後の「挙党体制」さえ容易ではないし、衆参「ねじれ国会」も解決するあてはない。新政権の基盤は弱いものとなり、政権の「安定」にはほど遠い事態である。各議会政党は、すでに次期総選挙を視野に動き始めており、政治・政党再編は不可避である。衆議院で三百議席を誇る民主党も、来たる再編劇と無縁ではあり得ない。
 マスコミ総動員で繰り広げられている新たな欺まんにダマされてはならない。闘いだけが、事態を真に打開できるのである。
 肝心なのは、労働運動である。民主党政権で「福祉社会」が実現できるかのような幻想を振りまく、連合中央の一部幹部の宣伝は、労働者大多数の生活実感とかけ離れているというだけでなく、落ち目の政権を支える犯罪的なものである。
 労働者、労働組合員は、自らの生活実感に依拠して、苦難の根源である日米安保条約の破棄を高々と掲げ、悪政と闘うべきである。沖縄県民、営業難の打開を求める農民や中小商工業者など国民各層と連携して闘おう。対米従属政治を打ち破り、国民大多数のための政権をめざして奮闘しよう。


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