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2010年5月25日号 2面・社説 

政策効果で大企業が業績回復

鳩山政権は自公以上の
多国籍大企業のための政権

 国民の生活苦をよそに、大企業の業績が急回復している。
 「回復」の背景には、四兆元(約五十三兆円)もの景気対策を行っている、中国など新興国における需要拡大がある。
 だがそれは理由の一つにすぎない。何より、大企業は労働者への無慈悲な首切り・賃下げ、拠点の統廃合、中小企業への過酷なコストダウン要求などを行った。トヨタ自動車約一兆円、パナソニック八千八百億円以上など、大々的なコスト削減を行って「身軽」になったのである。
 併せて、鳩山政権による「政策効果」である。
 鳩山首相は、「コンクリートから人へ」「国民生活が第一」を掲げたが、実態は「コンクリートから大企業へ」「大企業が第一」である。他方、あまたの労働者が街頭に放り出され、生活の糧を奪われ、失業は長期化している。国民諸階層の生活苦はますます厳しく、中小企業の倒産・廃業はあとを絶たない。
 労働者、国民大多数の生活と営業を向上させる政治の実現は、ますます急務となっている。

多国籍大企業への大盤振る舞い
 鳩山政権は、電機、自動車を中心とする多国籍大企業に手厚い支援策を行う点で、麻生前自公政権とまったく同じである。
 リーマン・ショック後、麻生政権はエコポイント制度(二千九百億円)、エコカー減税(二千百億円)などを矢継ぎ早に打ち出し、雇用調整助成金という名目で、労働者の給料分にまで支援を行った。研究開発減税を上積みし、金融機関への血税注入枠も十兆円追加した。
 当時野党であった民主党は、これらを「バラまき」などと批判していた。だが、昨年九月に政権につくやいなや、手のひらを返して、多国籍大企業への支援を継続したのである。
 トヨタ出身の直嶋経産相は、政権発足直後、エコカー減税やエコポイントの「そのまま執行」を命令した。鳩山首相も「賢い経済対策」などと評価を一変させた。自公政権下で行われた法人税軽減などの大企業優遇措置も継続された。
 それどころか、鳩山政権は一千億円規模の住宅版エコポイント制度を新設、住宅・不動産業界はもちろん、影響を受ける電機業界などへのさらなる支援拡大に踏み切った。産業再生法の指定を受けたエルピーダメモリと日本航空は、血税投入と債務免除で救済した。七月の参議院選挙に向けて、大企業への法人税減税はすでに公約となっている。
 これは、「経済危機からの脱却と民主導の成長力強化策の推進」(日本経団連「新内閣に望む」)などという、財界の強い要望に応えたものである。
 結果、二〇一〇年三月期の上場企業全体の連結経常利益は、二期ぶりの増益に転じた。今期も、金融機関以外で三八%、金融六グループも二五%の増益が見込まれている。リーマン・ショック後から「V字回復」した。この連中は、早速、株主への配当を復活、あるいは増額し始めている。
 一連の支援策なしに、大企業の業績回復は不可能だったのである。

労働者を裏切る連合中央
 連合中央の一部幹部は、こうした実態を知らないか、あるいは知らない振りをして、今春闘で企業側に最大限協力した。
 日本経団連は一月、今春闘に際し「危機を克服し、新たな成長を切り拓く」(経営労働政策委員会報告)と言い、「所定内給与の管理に注意が必要」と、賃上げを否定した。
 対する連合は、「すべての労働者の処遇改善春闘」を掲げた。実態は、「賃金カーブ維持の要求は、水準を維持して、これ以上下げさせない」(古賀会長)という、「賃金カーブ維持」の方針であった。労働組合側が要求を引き下げ、賃上げを求めないという方針である。
 結局、三月十七日のいっせい回答では、ベアゼロ、「賃金カーブ維持」が大勢を占めた。生活費の一部となっている一時金についても、昨年大幅にダウンした実績を上回ったところもあるが、減ったところもあり、総じて企業収益の改善は反映されていない。
 連合加盟組合の平均賃金は一・七一%の上昇にとどまり、昨年比で〇・〇二ポイント、百三十九円の減少である。一時金は年間で〇・一九カ月分増えた程度である(五月十一日現在)。ここ十年間、賃金水準が低下してきた上にこれである。大企業中心の連合加盟労組がこの水準では、賃金制度のない中小企業や未組織においては、賃上げはいっそう困難なものとなる。
 政府の支援に加えた連合中央幹部の協力で、大企業はまさに「笑いがとまらない」状況となっている。
 だが、連合中央の幹部は「経営側の厳しい対応を乗り越えて、(賃金カーブ維持の)方針を貫いたことに敬意を表する」(古賀新会長)などと評価した。労働者の生活実感からはかけ離れた、きわめて犯罪的で許し難いものある。


「アジア内需」の成長戦略
 その上、鳩山政権は「アジアは内需」などと言って、国内市場を省みない多国籍大企業に対し、いっそうの支援を行おうとしている。
 直嶋経産相は、アジア諸国との自由貿易協定(FTA)、広域インフラ整備構想、環境問題での貢献、消費市場活性化という四点を掲げ、「アジア成長戦略が必要」などと言う。御手洗・日本経団連会長も、「イノベーション(技術革新)を柱に、経済外交を通じたアジアの需要取り込みを進めるべき」と、政府にハッパをかけている。
 鳩山政権は、ベトナムでの原子力発電所、高速鉄道の受注に向けて、受注と引き替えの政府開発援助(ODA)まで約束した。インドでの原発受注を狙って日印原子力協定の締結も表明した。鳩山政権は、アジアシフトを強める多国籍大企業のセールスマンとなっている。
 日銀も、技術革新を促進する研究開発などを支援する目的で、金融機関向けの新たな貸出制度を創設する。
 まさに、政府「総ぐるみ」の大企業支援策である。鳩山政権は、六月中にも「成長戦略」をまとめる予定だが、内容はすでに見えている。
 鳩山政権は自公政権以上の多国籍大企業のための政権であり、打ち倒す以外にないのである。

政治の軸を国民大多数へ
 大企業への手厚い支援とはうらはらに、国民諸階層には犠牲が押しつけられている。
 普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設問題での裏切りや、「政治とカネ」の問題だけではない。
 鳩山政権は「ムダ排除」と言って、国民に切実な政策も切り捨てている。雇用対策はおざなりで、労働者派遣法の改正案はザル法となった。失業率は五%台に高止まりしている。ハローワークには求人がなく、一年以上の長期失業者が激増している。控除廃止などで実質増税が強いられている上、子ども手当や高校無償化は継続される保証もない。たばこ税も増税される。「四年間は引き上げない」としていた、消費税増税も日程にのぼり始めた。 
 農民への戸別所得補償は、大企業のためのFTA、農産物自由化とセットである。中小企業が望んだモラトリアムは大銀行の抵抗で実効性はなく、倒産が相次いでいる。
 大企業優遇・国民犠牲の鳩山政権に対する国民諸階層の反発は、ますます高まらざるを得ない。内閣支持率が続落しているのは当然である。小沢幹事長のもくろんだ参議院選挙における勝利と政権の「安定」は、早くも絶望的な状況となっている。労働者が国民諸階層と連携し、闘いで悪政を打ち破る好機である。
 連合中央一部幹部があおる鳩山政権への幻想を打ち破り、労働運動を断固として前進させなければならない。
 この期に及んで、鳩山政権を美化することは、国民生活の苦難に背を向け、多国籍大企業のための政治に加担することである。
 今こそ、戦後続く対米従属で多国籍大企業のための政治を転換し、政権の軸を国民大多数の側へと移すため、労働者・労働組合が国民諸階層と連携し、国民運動の先頭で闘うべきときである。


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