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2010年5月15日号 2面・社説 

鳩山政権、普天間移設問題で
公然たる裏切り

対米追随、安保に縛られた
政権を打ち倒そう

 鳩山政権は五月十一日、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設に関する政府案に、移設先として「名護市辺野古周辺」を明記する方針を固めた。十二日に行われた日米実務者協議では、初めてこの方針が公式に示され、日米間の協議が始まった。
 超党派の県民大会を九万人以上の参加で成功させ、普天間基地の即時閉鎖と県内移設反対の断固たる意思を示した沖縄県民に対し、鳩山政権は「国外・県外への移設」という総選挙時の約束を反故(ほご)にし、日米安保条約と米軍の「抑止力」のため、引き続き犠牲になることを求めたのである。
 当然ながら、沖縄県民の怒りはますます沸騰している。一部機能の移転先とされた鹿児島県徳之島の住民もこれを断固拒否している。
 鳩山政権の成立から八カ月、対米従属政治の枠内という限界と欺まん性はすでに明らかである。普天間基地問題を通して、鳩山政権が自公政権と同様に日米安保条約に縛られ、その枠を一歩も出ない売国的存在であることが明らかになっている。
 独立・自主の国の進路を実現するため、鳩山政権を打ち破らなければならない。

自公と変わらぬ対米従属の限界露呈
 民主党は、昨年の総選挙で「対等な日米関係」「東アジア共同体の構築」などと主張した。対米従属政治の下で苦しみ、不満を高め、アジアの共生で打開を求めていた国民は新味を感じ、期待し、幻想を高めた。
 だが結局、普天間基地移設問題は自公政権による案と大差ない、名護市辺野古に戻った。鳩山はこの期に及んでも「思い」を語り、福島・社民党党首も「グアム、テニアンへの移設」などと言うが、政府は「辺野古」で米国と交渉している。いつまで国民を愚弄(ぐろう)するのか。
 「政権合意」でもあった「日米地位協定の改定」は、米側に提起さえされていない。沖縄での米兵によるひき逃げ事件など、この間も相次いだ米軍の事件・事故でも、自公政権以上の対処は何一つなかった。安保条約と米軍基地や植民地的「地位協定」、怒りに耐えない事件・事故は「セット」であり、対米従属の日米安保を破棄する強力な闘いなしには「改良」すら不可能である。
 日米の「密約」も同様である。核密約問題調査は一九七二年の沖縄「返還」の欺まんの一端を露呈させたが、それ以上ではなかった。むしろ、「有事」での米軍による「核持ち込み」については「時の政権が判断する」(岡田外相)と、実質上新たな「密約」でフタがされた。
 鳩山が米国誌に寄稿した「東アジア共同体構想」は国内では幻想を広げたが、米国の疑念もかき立てた。弁明した鳩山だが、結局、一月の施政方針演説で「日米同盟は東アジア共同体の前提条件」と表明、米国を加えた構想へとトーンダウンした。鳩山は、二〇〇二年の「東アジア共同体」構想の小泉首相、九七年のアジア通貨基金構想の橋本首相らと同じ轍(てつ)を踏んだだけだった。
 現実は、歴代自民党政権による対米従属外交と大差なかった。
 民主党は自民党の外交・安全保障政策を「米国から言われるまま」「古い日本の保守派外交」などと批判していたが、「古い」どの部分を変更するのか、確固たる戦略を描いていたわけではない。そもそも、根幹の日米安保を外交の「基軸」とする点で、自民党と同じなのである。
 米国の「核の傘」に依存し、強大化する中国をけん制しながらの「対等」「自主外交」など本質的にはあり得ず、ごまかしにすぎなかった。
 それにしても、「対等な日米関係」とか「東アジア共同体」とか言わざるを得なかったのは、米国の急速な衰退を前にしての戸惑い、いくらかの模索の反映でもあった。
 普天間基地移設問題はその一例だが、それは日米関係を難しくもした。この矛盾は、今後どのような政権であろうが対米従属にとどまる政権を揺さぶり、窮地に立たせる。独立・自主へと進路を切り替えるチャンスが頻繁に訪れるのである。

参院選後「普通の国」めざす小沢
 そもそも、鳩山政権の事実上の最高実力者、小沢・民主党幹事長の戦略課題は、海外派兵の拡大や憲法改悪など、対米追随の下で国際的発言権の強化を実現する「普通の国」であった。そのために「権力基盤」強化を狙った参議院選挙の勝利はもはや絶望的である。それでも財界の要求は変わらないし、小沢らも衆議院での安定多数は変わらないわけで、それを基盤に応えようとしている。
 それがアジア市場をめぐってますます激化する国際競争に勝ち抜くため、わが国多国籍大企業が政治に要求し続けていることだからである。
 この連中の「東アジア共同体」は、対米追随と軍事力強化、海外派兵体制とセットでしかあり得ない。
 策動はすでに始まっている。鳩山政権を支えるという人びとは、現実にこの危険な、アジア敵視の策動に手を貸していることを自覚しなくてはならない。
 海外派兵は拡大され、地震被害の救援を理由に「紛争当事者間の停戦合意」など国連平和維持活動(PKO)協力法の「参加五原則」さえ超える形で、ハイチに自衛隊が派遣された。政府はアフリカ・スーダンへのヘリ部隊の派遣、東チモールへの軍事監視要員派遣も検討している。
 中国と朝鮮民主主義人民共和国を事実上の仮想敵国とした軍備増強・配置も進んでいる。沖縄駐留の自衛隊混成団を旅団に格上げ、定員も増強した。台湾の目と鼻の先、与那国島など南西諸島にも自衛隊を配備する方針が打ち出された。マスコミでは連日緊張があおられている。
 朝鮮に対する敵視も自公政権と同様で、不当で非人道的な制裁措置が延長されたほか、高校無償化から朝鮮高校を排除するという「公権力による民族差別」までが加わった。
 武器輸出三原則も「運用見直し」による輸出解禁が探られている。
 鳩山政権は十一日、国民投票における投開票の手続きなどについての政令を決定、憲法改悪のための動きも再始動した。
 日米間では、同盟の「深化」に向けた協議や防衛計画大綱の改定作業が進んでいる。民主党の参院選マニフェストにも、「日米同盟をさらに深化させる」という文言が公然と盛り込まれる見込みとなった。これは米世界戦略にいっそう貢献し、アジア諸国・人民を敵に回す道である。
 多国籍大企業の覇権的利潤追求のための内外政治である。内政面でも、消費税増税と法人税減税など、多国籍大企業の要求にそった政策が公然と準備されている。
 結局のところ、日米基軸と安保条約堅持を党是とする民主党、鳩山政権では、米軍基地問題の解決はもちろん、独立・自主の国の進路を実現することも、アジア諸国の信頼を得ることもできないどころか、アジアに敵対することなのである。


対米従属の鳩山政権を打ち破ろう
 対米従属の国の進路を、日米安保条約を破棄し独立・自主の進路に切り替えること、これなしに普天間基地など沖縄と全国の米軍基地問題は解決しない。わが国がこんにち直面している危機の打開に不可欠な、「アジアの共生」も不可能である。国民生活の困難も解決できない。
 安保改定五十周年のこんにち、その闘いが求められている。すでに沖縄県民の闘いは、巨大な前進をとげている。保守層も闘いに合流し、日米安保を問い始めている。全国で連帯して闘わなければならない。
 沖縄への共感と対米関係見直しの気運は広がっている。徳之島や鹿児島でも「沖縄の痛みは分け合うものではなく、なくすものだ」「米国に軍縮を要求しろ」などの声が上がった。その通りで、それは安保条約を破棄し、すべての米軍基地を撤去させることで初めて可能となる。
 問題は、本土の「左派」の立ち後れである。鳩山政権の下で、安保条約を前提にした上で新たな日米関係を「模索」するなど幻想にすぎない。基地問題の解決もできない。
 社民党中央も政権を離脱して役割を果たすべきではないか。参院選で前進するためにも、その方がよいはずである。この期に及んで連立に居残るとすれば、党員と支持者に対する裏切りである。
 労働者・労働組合は、日米安保条約破棄の旗を掲げ、鳩山政権の対米従属政治を打ち破る広範な戦線を形成するために奮闘しよう。


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