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2010年3月25日号 2面・社説 

普天間問題で閣僚会議が
「県内移設2案」確認

基地撤去・安保破棄の断固たる
闘いを発展させる時

 鳩山政権は三月二十三日、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設問題に関する関係閣僚会議を開き、政府案のとりまとめに向けた協議を行った。
 報道によれば、米軍キャンプ・シュワブ(名護市など)陸上部案と、米軍ホワイトビーチ沖(うるま市)を埋め立てて移設先とする案、それに鹿児島県徳之島案の含みも併せて政府案とする方向で、月内にも、米政府や関係自治体に伝達する予定である。
 「国外、県外」への移設発言を繰り返した鳩山首相だが、「大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹」でさえない。この裏切りに対し、沖縄県民の怒りは頂点に達しようとしている。
 沖縄県民と連帯し、全国で闘いを巻き起こす時である。

「八方ふさがり」の鳩山政権
 昨年八月の総選挙に際して、鳩山・民主党代表は「国外、県外」への移設を繰り返し幻想をあおった。元来、民主党は日米基軸と安保条約堅持を党是とした政党である。総選挙時の発言は、いわば票ほしさの「空手形」にすぎなかった。だがこの「約束」が、戦後六十年以上、土地を奪われ、爆音や事件・事故、環境破壊に苦しみ続けてきた沖縄県民にとって「希望」となったのは当然だった。
 ところで、鳩山政権の最高実力者である小沢・民主党幹事長の戦略は、今夏の参議院選挙に勝利し、政権基盤を「安定」させてから、財界の要請の下で一貫して追及してきた「普通の国」づくりに本格的に乗り出すことである。日米安保条約に基づく対米従属政治の枠内ではあるが、わが国多国籍大企業のための「効率的で強靭(きょうじん)な国家」、国際政治での力ある国家をつくり上げることである。
 それまでは、参議院での多数を維持するため、社民党との連立を組まざるを得ない。自民党を切り崩し参議院での過半数は握ったが、選挙で勝つためには社民党と地方連合の協力が不可欠で、「すべては参院選後」である。普天間問題での欺まんも、この策略の一環であった。
 だが、「国外、県外」という「約束」は鳩山政権を縛った。平野官房長官の「(沖縄の民意を)斟酌(しんしゃく)しない」発言や特措法など強権による基地押しつけを示唆(しさ)する言動、北澤防衛相などの度重なる「県内移設」発言などは、「約束」に反するものとして沖縄県民の憤激を買い、鳩山や小沢の思惑を超えて闘いを前進させた。
 今年一月の名護市長選挙では、「移設反対」の稲嶺市長が誕生。自民党沖縄県連や公明党も県内移設反対に転じ、県議会は全会一致で「普天間基地の即時閉鎖、県外移設」を求める決議を採択した。嘉手納町などでは、移設に反対する大衆行動が行われた。
 さらに鳩山政権が、北海道から鹿児島県まで全国で移設候補地を「探し回って」、米軍基地反対の機運と闘いを全国に広げてくれた。
 鳩山政権は、まさに八方ふさがりとなった。

ますますアジアから退けない米国
 衰退を早める米国も、鳩山政権の事情に考慮を払う余裕はない。
 普天間基地は、朝鮮半島・中国から中東までを射程に入れた、米軍の実力部隊、海兵隊の一大拠点である。ベトナム戦争やイラク戦争など、米帝国主義による数々の侵略戦争の際にはフル回転した。
 米国が、この拠点的機能をすすんで手放すことなど、あり得ない。
 さらにオバマ政権は、経済の立て直しと国際的主導権の確立を狙い、「輸出倍増計画」を掲げ、「世界の成長センター」となったアジアを重視する姿勢を鮮明にさせている。米軍の存在は、米国がアジアおけるプレゼンスを維持する上で不可欠である。
 だが、オバマ政権は医療保険改革など国内問題に手いっぱいで、アジア歴訪を二度にわたって延期せざるを得なかったほどである。これは市場確保を狙うオバマ政権にとって大打撃で、国際的威信の失墜は明らかである。
 オバマ政権は、この上、アジアで失点を重ねるわけにはいかない。
 米国は新候補地を拒否し、「普天間基地の継続使用またはシュワブ沖の現行案で」と報じられている。


安保破棄でしか基地撤去は不可能
 結局のところ、鳩山政権は、キャンプ・シュワブ陸上案とホワイトビーチ沖合案という、「県内移設案」に、一回りしてたどり着いた格好となった。しかも、「有事」の際には、普天間基地を継続使用する可能性にまで言及している。
 だが、陸上案などを米国が認める保証はなく、もちろん沖縄県民は受け入れない。鳩山首相は「生きるか死ぬかの論争で」などと粋がっているが、危うくなるのは政権の方である。
 いうまでもなく日米安保条約は、第六条で「(米国は)その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」と規定している。わが国政府による「施設・区域」の提供は義務であり、在日米軍基地は、日米安保条約を前提にする限り必然なのである。米国は、この条約の履行を求めているにすぎない。すでに触れたが、沖縄の普天間や嘉手納などの米軍基地は、米国の世界戦略、とりわけ対中国戦略上、必須の存在である。
 わが国政府が日米安保条約に縛られ、かつ強大化する中国を敵視し、日米同盟での対処を前提とする限り、沖縄の米軍基地問題を「解決」することは不可能である。
 鳩山政権の半年の経過は、そのことをリアルに教えている。米軍基地をなくすには、日米安保条約を破棄する以外にないのである。
 「東アジア共同体」とか「自主外交」などと口にする鳩山政権だが、近隣諸国と共存するための戦略的展望はないし、対米従属政治を清算する意思もない。わが党が指摘してきたように、日米同盟を前提とする鳩山政権は「迷走」と(いわれ)ながらも、連立維持と参院選対策のために「結論」を引き延ばしてきたにすぎない。
 ところがここに来て、オバマ米政権が内政上の理由からますます余裕を失い、日米関係が容易ならざる厳しい状況となって、鳩山政権は追いつめられたのである。そして鳩山連立政権は、日米安保堅持のために沖縄県民を犠牲にする道を選んだ。
 社民党は態度が問われている。
 連立維持を前提とした社民党中央のこの間の対応は失望を買い、大きな反発を受けた。地方組織には「これでは参院選を闘えぬ」という不満が強まり、「連立を離脱すべき」という声も高まっているようである。
 日米安保条約を前提としては、米軍基地問題の解決は根本的にはできないことがはっきりした。まして、政権内での取り引きによる基地撤去など不可能である。
 今こそ、安保破棄の旗を取り戻し、高く掲げるべきである。それを沖縄県民と全国の広範な人びとは大歓迎するであろう。現場の社民党員、支持者も、そうした闘いを望んでいるに違いない。参院選の党派的利害を考えても、その方が有利ではなかろうか。


 沖縄の基地問題は、重大局面を迎えた。
 しかし、見方を変えれば、これは米軍基地をなくすための闘いの前進の好機である。
 沖縄県民は、四月二十五日に文字通り超党派による大規模な県民大会を開催し、あらためて、米軍基地撤去の意思を示そうとしている。闘いを全国に呼びかけようとしている。われわれは沖縄県民を支持し、断固として共に闘うことを表明する。
 その闘いは、避け難く日米安保条約破棄へと向かうであろう。日米安保改定五十周年の今年、安保破棄の闘いは新たな歴的局面を迎えようとしている。
 全国で呼応し、米軍基地撤去・安保破棄の闘いを前進させよう。
 それは、対米従属政治を打ち破って独立・自主の国の進路を実現し、近隣諸国との関係を改善させ、国民生活の危機を打開する道でもある。


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