ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2010年3月15日号 2面・社説 

鳩山政権成立から半年

国民生活危機打開へ、広範な
戦線で小沢戦略を打ち破ろう

 衆議院で三月二日、二〇一〇年度予算案が可決、年度内成立が確実となった。子ども手当など、関連法案の審議も進んでいる。
 こうした中、鳩山政権が誕生してから、三月十六日で半年を迎えた。
 「国民生活が第一」「対等な日米同盟」を掲げた民主党は、対米従属で多国籍大企業のための自公政権に対する国民的批判の受け皿となって総選挙で大勝した。発足した鳩山連立政権は、「脱官僚」「ムダ排除」などで世論を引きつけ、支持率は歴代トップクラスであった。
 それから半年。「政権交代」のメッキははがれ始めた。新政権への期待と幻想は、急速に失望に変わり、内閣支持率は急落している。
 小沢幹事長が「最終決戦」と位置づける七月の参議院選挙で民主党が勝ち、政権基盤を「安定」させられる保証はない。内外の危機は深い。
 鳩山政権への幻想を打ち破り、国民生活危機打開へ国の進路を切り替える国民運動を発展させなくてはならない。

鳩山政権は半年間に何を行ったか
 民主党が総選挙で掲げた公約は、多くの有権者をひきつけた。胡散(うさん)臭さを感じたにしても、リーマン・ショック後、生活と営業が急速に悪化した人びとには「一縷(いちる)の望み」であった。
 だがこんにち、さらに深まった内外の危機の前に、総選挙で掲げたマニフェスト(政権公約)の多くは、内政でも外交でも反故(ほご)にされ、あるいは大きく後退している。
 むしろ、国民犠牲が進んだ。
 国民各層の生活は、この半年、さらに悪化した。失業率は高止まりし、労働者の賃金は低下し続けた。製造業・建設業を中心に中小企業の倒産も頻発。農産物価格は低迷し、農民も苦しんでいる。国民各層が新政権への期待を高めたのは当然だった。
 だが、新政権が発足後、早々に手をつけたのは、麻生政権による第一次補正予算の見直しで、中小企業や地方が期待した諸施策など国民生活に直結する予算の執行停止だった。公共事業費も大幅に削減された。苦難にあえぐ国民各層、地方に対し、新政権はいちだんの犠牲を強いた。
 さらに、資金繰りに苦しむ中小企業が大きく期待した返済猶予(モラトリアム)法は、大銀行の反対で、実行義務や罰則規定のない「努力義務」程度のものとなった。
 一方、子ども手当や高校無償化、戸別所得補償制度などは一定の期待を集めている。
 だが、戸別所得補償では「見返り」として他の農業関連予算が削られ、不満の声が上がっている。この政策は、参院選での農民票対策と「実務からの農協外し」という政治的狙いだけは明確である。中小企業向けの法人税減税は見送られた。
 医療機関への診療報酬引き上げは、「スズメの涙」程度となって、大病院優遇との批判が強い。
 他方、「四年間は引き上げない」としていた消費税率について、早くも引き上げの検討が始まった。国家財政の深刻さが口実だが、大量発行で国債価格下落の危険が高まり、最大の保有者である銀行が損失を免れるためのものだ。同様に、鳩山首相は法人税減税を明言した。これらこそ、財界が求めている政策である。
 子ども手当の導入と引き替えに、扶養控除は廃止される。来年度からは配偶者控除も廃止の予定で、子供のいない家庭には直接の増税というだけでなく、健康保険料などの負担増となる。たばこ税も増税される。
 派遣法問題では社民党すらも不満があるし、最低賃金引き上げ公約など誰も責任を負おうとしていない。
 政権発足後わずか半年、鳩山政権が行ったことは「国民生活が第一」というにはほど遠い。むしろ「大銀行・大企業が第一」で、失望感が広がるのも当然である。「福祉社会」などと、どこを根拠に言えるのか。

財界が望む「効率的で強靭な国家」
 こうして、鳩山政権の性格と課題が鮮明になってきている。
 鳩山首相は「戦後行政の大掃除」の方針を就任直後の所信表明と一月の施政方針演説で掲げ、国家機構の改革に乗り出した。省庁幹部公務員人事を内閣に一元化する公務員制度改革、改革の「一丁目一番地」と位置づける地方制度改革等々である。
 鳩山政権が狙うのは「制度疲労」が限界に達し、カネがかかる国家行政機構の大改革であり、国家的強靭さと能力を高めることである。小沢幹事長の持論であり、「普通の国」をめざす権力基盤の強化が狙いである。
 歴代自民党政権下、「政官財」のゆ着で温存されてきた国家機構を改革することは、財界が一九八〇年代後半から望んできた。九〇年代には橋本政権が、二〇〇〇年代には小泉政権が果たそうとして不十分だった。自民党政権では限界だった。
 ますます激しい国際的大競争の中で、多国籍大企業の利益を守るための、国際政治でも強力な国家の実現は支配層にとって緊急の課題だ。
 日米同盟深化と「普通の国」への策動も強まっている。
 普天間基地の「国外、県外」への移設は反故にされ、県内移設での「幕引き」が策動されている。日米同盟の「深化」に向けた協議や、防衛大綱の改定作業が進んでいる。朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視も自公政権と同様で、高校無償化からの朝鮮高校排除策動などまさに「公権力による新たな民族差別」にほかならない。東アジア共同体構想は結局は米国を含めたもので、確固たるアジア政策は描けていない。
 「対等」「自主」を掲げる鳩山外交に惑わされ、安保改定五〇周年の「日米関係見直し」に期待する向きもあるが幻想である。対米従属下で「普通の国」をめざす、この危険な策動を暴露し闘わなくてはならない。


政権を取り巻くいっそうの危機
 鳩山政権、小沢民主党は、今夏の参院選に勝ち抜くことで政権を安定させ、多国籍大企業のための政治、「普通の国」をめざす戦略に本格的に打って出る方針である。
 だが、その道は狭く、内外で成功が保証されているわけではない。
 鳩山政権を取り巻く内外環境は、さらに危機的である。
 世界経済に回復のメドは立たず、国際協調と各国の公的資金で崩壊を免れている。米国の衰退も早く、中国も含めて大国間の争奪は激化し、協調は危うさを増している。失業増と支持率低下のオバマ政権は、アジアに打開の展望を求めている。
 わが国大企業も、新興国や発展途上国、とくにアジアに殺到している。かれらは「二つの過剰(雇用・設備)」「アジアは内需」といって国内を顧みず、国民諸階層の生活と営業の危機は深い。
 一方、来年度予算案は、戦時以外で初めて、赤字国債発行額が税収を上回った。景気低迷で税収は減り、さらなる危機対策を行おうにも財政がもたない。しかも、財界は法人税減税を迫っている。一〇年度予算の編成は青息吐息だったが、一一年度予算はメドさえ立てられない。
 普天間問題と日米関係とを乗り切るのは容易でない。
 鳩山政権はこの環境に縛られ、立ち往生しかねない。


幻想を捨て国民運動で闘うとき
 民主党が参院選に勝ち抜ける保証すらない。内閣支持率は低下し、「不支持」が上回った調査もある。
 〇七年の参院選、昨年の総選挙での民主党大勝は、自民党から離れ民主党に期待した中小零細企業や農民などをひきつけたことが大きな要因だった。だが、長崎県知事選挙での大敗に見られるように、この層が、今度は民主党から離反している。
 「政治とカネ」の問題に対する批判も強い。鳩山や小沢は公明党との連携で乗り切る策動を強めているが、間に合うかどうか。それは三党連立の基盤を揺さぶることになる。
 鳩山政権の暴露は日毎に進み、国民の不満はしだいに高まっている。
 普天間移設問題の「県内移設」方針で、県民の怒りは「島ぐるみ」のものとなり、やがて国民運動となって鳩山政権を包囲するに違いない。
 このような情勢にもかかわらず社民党中央は、普天間問題でも鳩山政権と運命をともにするようだ。地方党員と労働組合活動家、支持者の反発の高まりは当然である。
 労働者を中心に、農民や中小業者などの広範な戦線を構築して、対米追随で財界のための政治、小沢戦略を打ち破るために闘うときである。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2010