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2010年3月5日号 2面・社説 

朝鮮学校への
「無償化排除」策動を許すな

 鳩山政権がマニフェストに掲げていた高校授業料無償化法案が二月二十五日、国会で審議入りした。公立高校では授業料を徴収せず、私立高校生には世帯の所得に応じて就学支援金を支給するもので、四月からの実施を予定している。
 ところが、小沢・民主党幹事長の「腹心」である中井拉致問題担当相は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対して制裁措置を行っていることを口実に、朝鮮学校を対象外とするよう求めた。鳩山首相もこれに呼応、朝鮮との国交がないことや「教育内容」を理由に、無償化に否定的である。
 勢いを得た「産経新聞」などのマスコミは、連日、朝鮮と在日朝鮮人への敵視と排外主義をまき散らしている。
 在日朝鮮人の人びとは、「大きな驚きと強い憤りを禁じ得ない」(金順彦・東京朝鮮学園理事長)などと怒りをあらわにしている。生徒たちによる署名運動も始まった。怒りは当然で、政府の策動は断じて許せないものである。
 そもそも、教育を受ける権利とその機会均等は、民族の違いにかかわらず、憲法で認められた基本的人権にかかわる問題である。民族教育を擁護するのは政府の当然の義務である。
 しかも朝鮮学校は、「各種学校」扱いではあるが、学校教育法の第一条校に準じる地位を勝ち取ってきた。日本の大学への入学資格、各種スポーツ大会への参加、通学定期の割引なども認められている。
 だから、鳩山政権も当初は朝鮮学校を無償化対象に加えると述べていたし、民主党のマニフェストにも「すべての人に質の高い教育を提供する」とも書かれている。今回の策動は明らかに公約違反であり、不当な民族差別である。
 なぜ今になって、朝鮮学校を排除しようなどという策動が強まっているのか。背景には、鳩山政権の抱える政治危機がある。
 「生活が第一」などと言って登場した鳩山政権だが、内外の危機は深く、早くも公約違反の消費税率引き上げに踏み込まざるを得なくなっている。普天間基地移設問題やガソリン税の暫定税率問題なども同様である。国民の失望と怒りは急速に高まり、支持率は急落、長崎県知事選挙では大敗し、参議院選挙の勝利も保証されなくなっている。
 この政治危機の下、排外主義をあおることで国民の不満をそらすことが、鳩山政権の真の狙いであろう。
 わが国は過去、朝鮮半島の人民に侵略と植民地支配で多大な被害を与えた。朝鮮学校に通う生徒の家族・先祖の多くは強制連行された人びとである。かれらは粘り強く闘い続け、母国・朝鮮への制裁などの敵視政策が続き、いまだ国交が正常化されない中でも、わが国で懸命に民族教育を守り続けている。
 だがことあるごとに、罪のない学生たちに対するチマ・チョゴリ切り裂きや暴言・暴行など、心ない犯罪行為が繰り返されてきた。政府・自治体による差別的措置も残っている。さらにこの上に、今回の差別的措置である。
 いったい誰に、在日朝鮮人青少年を差別し、教育の機会を奪う権利があるというのか。鳩山首相の言う「友愛精神」は、バケの皮がはげたというものだ。
 政府の動きに危ぐを抱き、朝鮮学校を高校無償化の対象に加えるべきとする声は地方議会などで広がりを見せている。韓国でも批判の声があがっている。国連の人種差別撤廃委員会さえも「懸念」を表明した。
 鳩山政権による不当な差別に反対し、闘いを発展させなければならない。併せて、朝鮮への不当な制裁をやめ、即時無条件の国交正常化をめざす運動を発展させることが求められている。


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