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2010年2月25日号 2面・社説 

「県内移設」は事実上の政府案

鳩山政権への幻想を捨て、
沖縄と連帯して闘おう

 連立政権の一角を担う国民新党は二月十七日、普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設先としてキャンプ・シュワブ(名護市など)陸上部、あるいは嘉手納基地(嘉手納町など)への統合という二案を決定した。
 この決定は、沖縄県民の大きな怒りを呼び起こしているが、当然である。
 キャンプ・シュワブ陸上案は、事実上、政府案の一つという見方が強い。すでに政府は、この案を米政府に打診したという報道もある。
 われわれは新基地建設に反対し、普天間基地の即時撤去のために闘う沖縄県民を断固支持する。
 鳩山政権へのいっさいの幻想を捨て、断固たる闘いを進めよう。

沖縄県民を裏切る移設案
 国民新党が示した二案とは、以下のようなものである。
 シュワブ陸上案は、キャンプ・シュワブ内に千五百メートル規模の滑走路を新設する。嘉手納移設案でも、キャンプ・シュワブ内にヘリパッドを建設する。両案とも、米軍の訓練の一部を三沢(青森県)、関西新空港(大阪府)などに移転させるという。
 両案は、沖縄県内に新たな米軍施設を建設するもので、県民が切実に願う「基地の整理・縮小」ではない。当然、米軍による事件・事故も減ることはない。さらに普天間基地は閉鎖されるが、十年間は維持される。有事の際には「活用する」というもので、閉鎖とは名ばかりである。また、全国に基地機能を拡散させ、在日米軍の機能を強化させるものにほかならない。要するに、日米安保を強化し、日本全土をますます米軍の出撃拠点とするものである。
 重大なことは、国民新党による提案が、北澤防衛相が沖縄出身の下地・国民新党政調会長に要請し、「国民新党案」として提案させたものだということである。
 民主党は「国外移設、最低でも県外移設」と繰り返すことで、総選挙に勝利した。連立三党は、一月の名護市長選挙で「移設反対」を掲げた稲嶺氏を推薦もした。
 一連の経過は、鳩山政権がこの約束を反故(ほご)にしようとしていることを意味する。
 今回の裏切りに対して、稲嶺市長をはじめ、沖縄県民が直ちに反対の声を上げたのは当然である。昨年十一月に二千五百人規模の町民大会を開き、基地機能強化に反対した嘉手納町でも、「許しがたい」(宮城町長)との憤激が起こっている。「ベターな案」「基地負担軽減を図る」(国民新党)などという言葉を信じる県民は、一人としていない。

約束反故(ほご)にする鳩山政権
 実際、政府は「ゼロベース」などと言いつつ、普天間問題の「落としどころ」を狙う策動を強めている。
 鳩山政権の事実上の最高実力者である小沢・民主党幹事長は十三日、自身の「政治塾」で、「極東の状況は非常に不安定度を増している」と述べ、朝鮮民主主義人民共和国の核開発や中国の軍備増強を口実に、米国の「抑止力」の重要性に言及した。北澤防衛相も二十一日、「沖縄における米海兵隊のプレゼンスは極めて重要」と強調、グアム移設では日本近海の「防衛線」を「守れない」と述べている。
 このように、民主党政権の安全保障政策は、日米安保と、極東から中東までをにらんだ在沖米軍の存在を前提としたものである。対米従属の軍備増強と海外派兵、日米軍事一体化を進める米軍再編など、歴代自民党政権と変わらぬ安全保障政策であり、時代錯誤で、わが国とアジアを対立させるものである。
 同盟の相手である米国は、一九九五年の「東アジア戦略」以来の、中国を事実上の仮想敵国とする戦略を引き継ぎつつ、新たな「国防計画見直し」(QDR)で、わが国の負担をいっそう求めようとしている。
 米国の国内事情もある。失業問題がますます深刻化する中で、オバマ政権は十一月の中間選挙に勝ち抜くため、「輸出倍増」を掲げて雇用を確保し、自国経済を立て直そうとしている。その米国が、アジアからのプレゼンス低下につながりかねない在沖米軍の撤退を受け入れることは、ありそうにない。
 安保改定から五十周年にあたる今年、すでに始まった「同盟深化」のための日米協議はこうした中で行われている。この下での「対等な日米関係」の模索など幻想である。
 日米両政府に頼っては、米軍基地撤去の展望は開けないどころか、東アジアは不安定化する一方である

鳩山政権は自縄自縛に陥った
 鳩山の「国外・県外移設」という約束は、「対等な日米同盟」などのスローガンと同様、民主党が総選挙で勝ち抜くには有効であった。鳩山や小沢からすれば、七月の参議院選挙にも勝つために、もうしばらくはその欺まんを演じ続けたいところであったろう。
 だが、その欺まんは鳩山政権を縛り、逆に不安定化させている。日米関係も難しくし、わが国支配層の一部をも不安にさせた。
 二十一日に投開票された長崎県知事選挙では、民主党の推す候補が、自公候補に大敗した。「政治とカネ」問題や公共事業切り捨てはもちろん、大村自衛隊基地などが移設候補地とされたことが影響したことは間違いない。
 支持率も低下傾向が続き、鳩山政権の政権運営は危うく、参議院選挙に勝ち抜ける保証はない。「身内」の民主党沖縄県連も、「いかなる県内移設に対しても反対の立場を貫く」と強調している。民主党政権の内憂外患は深刻である。


沖縄と連帯し闘いを発展させよう
 北澤防衛相は、既存の基地内への移設を理由に「大きな反対は起こらない」などと、沖縄県民、国民を愚弄(ぐろう)している。
 だが、沖縄県内はもちろん、大村や東富士など全国で、首長や議会が反対の声を上げ始めている。平野官房長官がちらつかせている、特別立法なども容易ではない。
 戦後六十数年間、基地被害が続き、事件・事故など塗炭(とたん)の苦しみを押しつけられてきた沖縄県民からすれば、「国外移設、最低でも県外」と掲げた鳩山政権に「期待」を抱くのは当然であろう。
 だが、安保条約破棄と日本全土からの米軍基地撤去を戦略的に追求しない限り、沖縄の基地問題も解決できない。七二年の沖縄「返還」も、九六年の橋本・クリントン合意も、基地問題の解決のためではなく、県民の怒りと闘いの前進で基地を失うことを恐れた、基地機能維持のための欺まんであったことは、沖縄県民がよく知る通りである。沖縄県民は、基地撤去のために闘いを堅持するだろうし、わが党はその闘いを断固支持する。
 社民党にも言わねばならない。報道によれば社民党中央は、米領グアムやマリアナへの移設を基本としつつ、大村・相浦(長崎県)、佐賀への暫定移転を含む案をまとめたという。これは重大な問題である。日米安保と米軍基地の存在を前提し、それを維持する立場に明確に立っているからである。自民党政権と同様、「抑止力」などの名目で国民に基地負担を押し付けるものである。五年や十年の「暫定」であれ、何のために、誰に対して、米軍基地を九州北部に置かなくてはならないのか。
 「痛みを共有する」などという甘言は、社民党にとっての自殺行為以外のなにものでもない。十二月末から始まった政府の沖縄基地問題検討委員会にしても、社民党を連立につなぎとめるための、当面の「ガス抜き」にすぎないことは、十分知っているのではないのか。
 社民党中央、福島党首は、県内移設案に反対している。本当に沖縄県民と「痛みを分かち合う」のであれば、昨年十二月の約束通り、連立と閣僚の椅子に汲々(きゅうきゅう)とするのではなく、闘うべきである。米軍基地を日本から撤去させる国民運動の先頭に立つ以外にない。現場の社民党員、支持者はそれを望んでいるであろう。
 沖縄県民と連帯し、普天間基地の即時閉鎖とすべての米軍基地撤去、安保破棄の全国民的運動が求められている。


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