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2010年1月1日号 1面〜5面 

新春インタビュー

大隈議長、大いに語る

 二〇一〇年の幕開けに際し、「労働新聞」編集部は、日本労働党中央委員会議長である大隈鉄二同志に新春インタビューを行った。議長は、昨年誕生した鳩山政権による内外政治の特徴や課題を中心に、激動する国際情勢などを縦横に語った。紙面の都合で一部を割愛せざるを得なかったが、以下、掲載する。(聞き手、本紙・大嶋編集長)。


鳩山政権の日米関係、外交政策について

大嶋 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

大隈議長 おめでとうございます。

大嶋 さて、例年の新春インタビューですと、昨年の情勢全般について伺うところから始まります。
 ですが、昨年もまた大激動でした。二〇〇八年秋のリーマン・ショック以降、重大な危機に直面した世界経済はいまだ落ち着きません。震源地となった米国ではオバマ政権が正式に発足し、その危機対策は矢継ぎ早でしたが、失業者は増加し続けている。イラクから撤退する代わりにアフガニスタンには増派、これまた泥沼。支持率も急落。まさに、経済・政治・軍事のすべてで衰退を早めています。他方、危機の中で中国が存在感を高めるなど、世界の多極化は誰にも否定できません。これは、わが党が見通してきた通りです。日本でも、八月の総選挙を経て、民主党主導の鳩山政権が成立するという大きな変化がありました。
 これらすべてにふれるのは大変ですし、新春講演会という別の機会もあります。ですから読者の皆さんの関心事も考えながら、鳩山政権の内外政治についていくつか質問し、その問題と関連して若干の国際情勢にもふれていただければと思います。

大隈議長 どうぞ、進めてください。

大嶋 まず、普天間問題についてお聞かせください。
 まず昨年末、大いに注目を集め、今も同様の、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設問題です。鳩山首相が問題の決着を今年に先送りしたことで、マスコミなどは大騒ぎしています。
 他方、一部の人びと、勢力の中には、鳩山政権が普天間基地移設問題を解決する、ひいては、日米安保条約に風穴を開けるかのように「期待」している向きもあるようです。
 果たしてそううまく進むのか、普天間移設問題についてお聞かせください。

大隈議長 私は、先月半ばの数日間、沖縄に行ったんですが、この数カ月間で雰囲気は大きく変わったと感じました。現地での「沖縄タイムス」「琉球新報」、テレビなど、連日、県内の動き、政府や中央と全国の動きを詳細に報道し、かつ解説もしています。
 今度こそ、基地問題で何か動きがあるだろうとの期待、あるいは願いは、政権の不統一と煮え切らない態度に不満もありながら、高まっている、と率直にそう思いました。
 さて、普天間基地の問題ですが、分かりにくいですね。単なる迷い、ぶれと思いますか。そうではない、私はそう思います。

普天間基地の問題
大隈議長 米軍基地問題を今度こそ解決したいという県民の願いの高まりを前にして、鳩山政権にとって「決断の難しい」問題であることは確かです。
 だが、不可解に見える鳩山首相とその政権の、一見「迷い」と思えるその本質というか政治を見抜くには、簡単ではないのですが、冷戦体制の終焉(しゅうえん)以降のおおかたの流れ、一九九六年二月、橋本首相訪米での普天間基地問題の打開策合意や四月のクリントン大統領訪日時の「日米安保再定義」など、当時の事情、それ以降の世界情勢の、とりわけ米国の経済、政治での衰退とかかわっての多極化、対応した米軍の世界規模での再編、在沖米軍基地の役割、日米同盟の「相互にとっての意味」の変化とその現状、これらのことは、大ざっぱではあっても、思い出して考えなければ、ですね。
 一言で言って、沖縄の米軍基地、とりわけ嘉手納と普天間は、米国、米軍にとって、国外基地としては最も重要な軍事基地であること、中東地域から北東アジアまでカバーしている。世界情勢は大きく変わってきたが、重要さは現在でも変わっていない。
 九六年に、普天間基地が問題になったのは、最も危険でたびたび事故が起こったのでは県民の怒りが爆発し、普天間だけでなく沖縄での米軍事基地全体が維持できなくなる、米日支配層のこの危機意識から出たもので、名護市への移設、グアムへの海兵隊一部移転なども、その打開策だったんです。「再定義」は、一連の米軍再配置、基地の「長期確保」措置などを前提とした。
 この「再定義」は、前九五年のジョセフ・ナイが中心となってまとめた米国の「東アジア戦略構想」に組み込まれた、あるいは「沿うもの」だったことは、もちろんです。
 鳩山首相の発言だが……。
 鳩山首相は、「米国との約束もある、それは重い」と言い、けれど「沖縄の現地の皆さんの願い、思い」「その思いに沿って解決したい」。だから「政権として最善、最良の方法はないか、今考えているところだ」というようなことを繰り返し言っているんですね。ついに年越しとなった。
 新聞、テレビ、マスコミあげて「鳩山政権の揺れ」を批判し、「日米関係危うし」の論調が断然多くなった

 オバマ大統領は昨年十一月十三日に来日しましたが、その深夜首脳会談をやって、一連の、主な内容としては、「日経新聞」によれば八項目、「読売」は四項目が議論されたと紹介している。日程が込んでたこともあったんだろうが、日経は「伝わらない本音」と普天間問題にふれているようだが、各新聞とも普天間問題の結論は「早期解決」で一致していたね。
 新聞では、鳩山首相が会談の中で、「私を信じてくれ」というようなことを言ったとか。オバマは翌十四日の演説で「早期に結論を出してくれる」というふうに、言っている。ところが、オバマがまだ日本にいて、鳩山は外国に行ったわけですが、そこで、「オバマ大統領はそう思いたいだろうけれど、約束したわけではない」、こう言ったんですね。鳩山首相は、早期に解決するふうではないようですね。
 これは「うっかり」とか「言い間違い」とか、ではないですね。それからも何度も何度も発言する機会があって、あたかも県外、あるいは国外にね、何か見通しがあるような、ないような、それを追求しているんだなと思うと、別様にも「必ず」言っている。
 「日米関係はとても重い」「これは約束事なので」とね。
 それから、ごく最近、例の自民党の代表と会いましたね。

大嶋 谷垣総裁ですね。

大隈議長 そうです。谷垣総裁と、公式には、鳩山政権が成立して初めてというその会談で、「日米合意なんだから早く決断すべきではないか」と問われて、鳩山首相は、日米の約束は二〇一四年が期限なんだけれども「間に合うと思う」と言い、そのために「予算もちゃんとしているんだ」とも。さらに、「いろいろ、沖縄の人たちの思いもあるので悩んでいる」と言ったんですね。
 これらの発言は重要ですね、しかも「間に合う」と言っているわけですから。
 もう少し踏み込んでみますか!
 昨年末、年内決着せず越年、数カ月期間をおいて、いずれにしても、連立与党で考える、と、新年に持ち越された。
 それを指して、マスコミはにぎやかですね。「日米関係は最悪の状態になった」とか、いろいろな議論が出ている。結構、特別番組も組まれたりですね。
 私は、そういう国内世論はあるけれども、この辺で、米国ではどうか。この点にも少しふれたい。
 「両国間の関係と、日本の内政問題である連立政権の維持とを、同列に扱うのか」「連立政権を維持するためには米国との関係はどうでもいいというのか」、そんな米国の不満は確かにあると思うんです。けれども、新聞が「日米関係は重大なことになる」と書き立てているような、「重大ぶり」にもよるとは思いますが、多少の疑心暗鬼、相互不信はあっても、あるいはそういう期間があっても、「同盟関係が崩れる」ことは当面あり得ません。
 なぜなら、これは日米双方とも望んでいないし、双方とも相手を必要としている状況がいっそう広がってもいるからです。日米相互関係の相対化、いわば自由度も広がっていますが、他面では肩を寄せ合わなければ生きられない条件も広がっているからです。
 両首脳の思惑はともかく、「同盟関係をさらに進化させる」との合意はそれを指しているんでしょう。

大嶋 その辺をもう少し……。

大隈議長 確かに、米国は不機嫌だろうけれど、そうかといって、米国は経済的にも弱っていますし、それから軍事的にも非常に弱っているわけで、アジアに米国が関与し続けるということを放棄しない限りね、日本がいわば米国にとって重要な同盟国である、この事実は変わりませんしね。
 これは、二つの方面から言えると思います。
 一つは、中国が強大になりつつある、という現実があります。
 ご存じのように、米国の例の九五年の「東アジア戦略構想」は、冷戦に勝利した米国が、再び米国に対抗する勢力の登場を許さない、そういう戦略なんですね。さっき言いましたが、九六年の「日米安保再定義」もその米国戦略の一部になっている。
 振り返ってみますと、この十数年、二十一世紀に入って米国ブッシュが始めたイラク戦争、それにアフガン戦争の泥沼化、とりわけ一昨年秋、米リーマン・ブラザーズの破たんをきっかけにした金融危機、世界同時不況など、世界の情勢はすっかり変わった。米国が衰え文字通りの多極世界となったんですね。
 それにロシアも自信を回復し、米国の思い通りにはならなくなっていますよ。
 ですから当然のこと、米国の安全保障、軍の配置にはさまざまな変更があったことは事実ですが、米国の東アジア戦略構想、中国を見つめた戦略概念は、今でも変わっていないと思いますよ。基本的にはね。その場合……。
 中国にはチベット問題、ウイグルなど少数民族問題が多々ある、格差社会で社会不安は高まっている、暴動はいたるところで起こっている。米国はそれらを見逃してはいない。しかし、したたかな中国を見ながら、大っぴらに敵にも回せず、不安にもなっているんだろうよ。
 中国経済の工業生産の四〇%、貿易額の六〇%は外資系であるとはいえ、全体としてのGDP(国内総生産)は、すでにわが国、日本を抜きつつある。経常収支は黒字続きで、外貨準備は世界最大、日本の二倍強で二兆ドル。この外貨を背景に政府系ファンドは資源の確保、先進技術入手のための企業参加、支配、さまざまな金融活動にも参加している。そして、この経済を背景に、最先端の技術で軍備を強化しつつあるんですから……。
 そういうわけで、少し長いスパンでの国際関係を考えると、この戦略では、米国は中国に一定の圧力を加えつつ、米国が望む「好ましい方向」に導く、そんなことだろう。
 言ってよければ、安全保障の面から見ると、軍事戦略上は「仮想敵国」だ。もちろん戦争をしないですむ、米国をおびやかさない国、それを追求するだろう。だが米国は、強国だが衰退しつつある国、歴史は複雑、多様。どうなるかは分からん。
 米国は、日本なしに、日米同盟なしに、「東アジア戦略構想」を維持することができない。中国に対する戦略的圧力など、不可能というか、容易なことではない。しかも米国は、イラク戦争等々で力が伸び切り、経済的にも力が弱っている。そうしたわけで、米国の国力が衰えていればいるほど、日本との同盟を必要とし、日本を同盟国として軽んずるわけにはいかない。
 「日本がそう言うなら、引き揚げてもいいよ」とか、「日米安保はご破算だ!」と米国は言えないんですよ。
 フィリピンの基地問題をあげる人がある。あれ、それまでは最大の米軍基地だった。米軍は基地から引き揚げたんで……。

大嶋 スービック海軍基地とクラーク空軍基地ですね。

大隈議長 そうです。マルコス政権が崩壊した後ね、アキノ大統領の時か、引き揚げたわけだけれども、その時はまだ沖縄やその他があったわけで、日本があったわけで。
 今度は、日本から撤退することになれば、例えばグアムまで下がるにしたって、鳩山が言うその……。

大嶋 「駐留なき安保」ですね。

大隈議長 「駐留なき安保」等々と言ってもね、事情は違うと思いますね。そこまで後退すれば(現実に対応できるかどうか、軍事技術の高度化、航空機やミサイル等々の軍事能力が進んだとはいえ)、政治も含めて考えれば、米軍事プレゼンスのアジアからの大きな後退と見られる。衰退する中での米国、それは難しいですよ。
 それにもう一つ、市場問題がある。経済がうんと弱っているという点から見ると、九六年のクリントンの時以上に、アジアに関与しなければ、米国はなかなかやっていけない。それに、ラテンアメリカ、南の方からもおびやかされている。米国がいつまであの状況に耐えられるか、何が起こるか、そうした問題もある。目が離せない。だが現実に、いわば反米ナショナリズムが、南からずっと攻めてきており、以前の、カナダから南の端までという「米国の領域」が狭まってきている。
 アジアは成長する地域、「これから」の地域ですね。これは二十世紀の末から言われていて、九七年に(通貨危機で)つまずいたとはいえ、今では非常にハッキリしている。アジアが世界の成長する地域だということですね。だから世界の先進諸国は、成長するアジアに目を向け、ここで稼ごうと血眼になっている。
 とりあえず、日米同盟関係だけを他の諸関係とおおかた切り離して論じました。単純化することで見える連関の構造があるからです。ただ、実際にはもっと複雑です。米国は、中国の経常黒字外貨のドル、これなしではやっていけない。アジア市場では日米も、激しい争奪戦を演じてる。矛盾に満ちてるんですね。
 米国の側からの「日米同盟」を、「東アジア戦略構想」とアジア市場など、二つの面からふれてみましたが、こんなところでしょうか。米国は「気にくわない」と言って、日米関係をなくすというようなことはない。弱まれば弱まったほど、難しくなっていると思いますね。そして他面、すでにふれたんですが、中国が相当に実力をつけているわけですね。それから、軍事もどんどん強化しているという実情を見ると、私は、当面(十年か二十年は)「あり得ない」と思います。
 ただ、日本の側から見ると、米国が弱まったということは、一面では、一定の条件を備えれば、外交の幅を広げるというか、あるいは日米の同盟を維持しつつも、両国関係を比較的「相対化」する、「何でもモノが言える」あるいは「対等」という言葉は正確でないにしても、そんな表現ができるような、そんな状況は広がっている。これは事実なんですね。他方で、中国の登場を見ると、今度は米国なしでは生きられないという、そういう面もある。
 つまり、一つの歴史状況が、一面では米国からの「自由度」「相対化」という局面が広がると同時に、他面ではますますね、米国なしには生きていけないという、矛盾する傾向なんですが、そういう状況が進んでいる。そういう中での外交、政治、なんですね。

 普天間問題は、本来は、やや詳しくふれたような世界情勢の大きな変化、米国の衰退と世界の多極化、日米両国での新政権の誕生、「同盟の検証や模索」の中で起こっている事象ですが、そしてその一部なんですがね。だから、そういう関連の中でとらえる必要があるんですね。にもかかわらず、そういう議論は政権の中枢からは聞こえてこない。「深化させる」とか「対等」という抽象的、感覚的声はあるものの具体的内容はさっぱり見えない。不可解。
 さっきも申し上げたように、米国も普天間基地を移設先なしでは手放せない。九六年に約束してから十数年たつ。これはもう、米国の最低のことだと思いますね。鳩山政権も真剣に探しているふうではない。鳩山首相が最近「駐留なき安保」について、「前は言ったけれど、今は、そうではないんだ」とも言った。
 そういうことなんで、結局、迷っている理由は、日米間の問題ではなくて、純然たる国内政治の、参議院選挙までだと思いますね。先の総選挙での公約だったんですが、民主党の欺まんで、マニフェスト内容の多くがそうだったんです。
 ですが、良いことも含まれている。沖縄の現地の皆さんは、一時期、鳩山政権に大きな期待をして、戦後のいろんな経験から見て「今度がチャンスではないか」という期待が高まった。年初の名護市長選挙、反対派が勝利できそうだと言われている。「県外、あるいは国外に出て行ってくれ」という、つまり、普天間をはずす代わりに名護市に基地をつくるような、そういうことを許さない、状況が進んでいます。十一月の知事選がどうなるか分かりませんが、いずれにしても、全体的に沖縄が、沖縄の人たちが、この機を逃さないで問題を解決するというような期待というか、運動の盛り上がりが生まれています。
 考えなきゃいかんのは、参議院選挙の結果として民主党が勝利し、単独で過半数を獲得した時です。日米安保条約を破棄し、沖縄と全国から、米軍基地を一掃するような、闘いの堅持と発展が保証されるかという問題です。現在の高揚が、民主党への期待であるならば、幻想はいくらかの怒りとはなろうが、闘いの継続は危ういものとなる。連立離脱の脅かしは、効かないからである。
 社民党の中枢はもちろん、影響力のある幹部たちの中にも、「民主党との連携でしか生き残れない」という考えがすでに、相当に浸透した。何を闘うかではなく、議席を確保するには、どんな連携が必要かと考えるようになった。
 衆参両院で単独過半数を制すれば、民主党は思い切った政策の実行が可能となる。そのとき社民党や少数党は、すり寄って生き残るか、孤立しても旗幟(きし)鮮明な闘いを堅持するか、が問われる。
 昔ふうで、言い方は良くないかもしれませんが、「知らぬは女房ばかりなり」という言葉がある。亭主の考えを周りの他人、隣近所の人はよく知ってるのに、女房だけが知らない。ところで、鳩山首相、その政権、民主党の小沢政治だけれど、「知らぬは社民党ばかりなり」とは言えないような気がしてきたね。この政治がどこに向かっているか、社民党の中枢が気づかないはずはない。「鳩山首相は本当に普天間の県外、国外をやろうと考えている!」こうした発言を聞くと、いっそう疑念がわく。気づかないふり……かと。

大嶋 (笑)

大隈議長 どの党にも、政治的立場はともかく、誠実に、必死で闘っている人たちはいるんですから、批判が過ぎてもよくないですが、大事な時期、情勢になってきましたね。
 政権の一角を占める、国会議員になる、やはり居心地はいいし、できれば長くその位置にとどまりたい。これ、人間の微妙なところ、弱さですかね。
 「党の生き残りのため」なんて、好都合な理屈も思い浮かぶんでしょうかね。この話はそのぐらいにしておきますか。


アジア外交と小沢氏の訪中について
大嶋 ぎくしゃくする対米関係の一方で、鳩山政権は「アジア共同体」を掲げています。首相夫妻が韓流ドラマのファンなのはともかく、中国や韓国も鳩山政権を「歓迎」している。小沢幹事長らは年末、大挙して中国を訪問しました。
 この訪問団を入り口にして、対アジア政策についてお話しください。

大隈議長 小沢幹事長が民主党議員を百四十人、秘書とそれから経済界みたいなものもですね、等々、総勢六百人の訪中ですね。
 ちょうどその時は、さっき話しました普天間基地移設問題で、米国ともめてる時ですね。なぜ行ったんだろう。いろんな見方があると思いますよ。
 そりゃー小沢氏は「策士」ですから、いくつかの狙いはあったんでしょうがね。それを二、三あげると。まず、中国に対しては、日本の政治は「オレが」十分に掌握している、と「見せつけたかった」んでしょう。発言の中に「政府は鳩山首相に任せている」というのがありますね。「任せている」というから、鳩山、あの者にやらせている、ということでしょう。たいした自信だね。

大嶋 「こっち(小沢氏)が上」、ということですね。

大隈議長 あれほどの国会議員を連れて行く、政治力を見せつけておいて、最終決戦のための参議院選挙を控えているので、「兵を募り」「兵を鍛えている」ところだ。「参議院選挙が終われば大胆にやれるんだ」と、見せつけたというか、売り込んだんですね。
 以後は強国間でも「丁々発止とやりますよ」と、いわば内政のコザコザしたことには引き込まれず、「大胆に、確固として進みますよ」と、言いたかったんでしょう。米・日・中の三カ国の相互関係にもふれたようですから…。


大嶋 デモンストレーションですね。

大隈議長 デモンストレーションですね。それが一つの狙いだと思いますね。
 もう一つは、国内向け、「米国向け」の狙いがあったんだと思いますね。明確にね。それは、向こうで「日米中の三角関係」と、明確に言ってますしね。そういう点でも。
 三カ国関係では鳩山首相も、「ややもすると、米国に重きをなしていたが、以後、アジアを重視する」と言ったし、これからは、米国にあまり遠慮しないで、アジアに関与し、共同体構想を進めたい、と言ったんですね。ですから、訪中での小沢発言は、同じ流れですね。続きですね。いってみれば、これからは違うぞ、日米中関係は対等、とりわけ日米関係は正され、「対等」になるんだ。そんな気分をにじませたかったんでしょうかね。多極化した最近の国際政治では、米中の重要性、役割が、米国によってしばしば語られるが、日本は沈下するばかりですから。
 「三角形にたとえれば『対等』なんだ」ということのデモンストレーションだと思いますね。日米関係がぎくしゃくしている最中のこの時期、大訪中団を組織し、鳩山に続いて米国を刺激しかねないこうした発言、小沢氏は、米国からどう受け取られるか、十分承知の上だと思いますね。というのは、米国も時々、日米中の中で、それやったんですから……。
 これには、ずーっと長い歴史があるんです。
 例えば冷戦中、米ソが対立していて、中国も社会主義陣営、敵側ですね。そのさなかに、日本に相談なしに、何の連絡もなしに、ニクソン訪中をやられたんですよ。


大嶋 キッシンジャー大統領補佐官ですね。

大隈議長 うん。日本では、いうところのニクソン・ショックですね。
 当時、冷戦体制の中ですから、日本には米軍基地もあるし、中国とは対立しておった。にもかかわらず、有力な同盟国なら、本来は「ベトナムのこともあるし、これこれ、こういうわけで。米ソとの関係もあるので、中国とは手を打つ」というような。同盟国であるのに、それを言わずに敵国と交渉しているわけですから、言わば頭越しというか、そんなことがあった。
 元外務官僚の田中均も、最近の著書で書いてますが、そのことが、結局、日本を刺激した。反作用を引き起こしたんですね。田中(角栄)首相も、「米国がやるのなら日本もやっていいはずだ」ということですよね。まあそういう流れ。
 それから、七九年。日本が、中国に対するODA(政府開発援助)、円借款ですが、これを始めた。米国に相談しなかったからでしょうか、これに米国は反発したですね。ついでながら、例の七二年の田中訪中時に毛沢東は「楚辞」(注)を贈っているんです。日本が自国の利益のための自主外交をやった。「愛国者」だと、それとなく評価あるいは激励したわけですね。
 米国との関係をもう少しね、距離を置くような、そういうことですね。それを、それとなく、いわば促したというか、「言わんでも分かるじゃろ」ということで「楚辞」を贈っているんですから。そういうことですね。
 それから九八年にも。クリントン大統領が中国を九日間にわたって訪問した。そして、日本にとうとう立ち寄らなかった。当時、クリントンは、安全保障問題より経済を重視し、だからそういう意味で「経済安保」と言われたわけですが。逆に日本とは経済摩擦があった。「ジャパン・パッシング」と言われたりした。
 日米中この三国関係、この相互関係では、ある一国は、他の二国間の矛盾を常に利用した。
 小沢氏が、そういう歴史を知った上で(例にあげた時代は、小沢は自民党の中で有力な位置にあった)、今回の訪中での振る舞いが米国に対して一種のプレッシャーにもなるということ、米国が弱っていることも前提にしてやってると思うよ。それを口実にして米国は、日本に圧力を加える力はない。日本に何かマイナスになるということはない、そういう読みがあるんじゃないか。
 だから、小沢が中国に行って中国向けに話をしてるようでも、米国との駆け引きもやってることになる。米国は疑心暗鬼、読みきれないでいると思いますよ。この策士、外交での主導性を意識しているようだが、しょせん「対等」などと強がっても、日米同盟が前提で、米国なしではやっていけない。
 鳩山政権、小沢民主党、その外交政策はまだ手探り、模索中というところか。小沢氏の九三年出版の「日本改造計画」、基本は今でも変わるまいから、推察はつくが、「強力な権力」はともかく、時期が悪い。困難が多過ぎる。
 参議院選挙で勝利しても、鳩山政権、小沢民主党が引き継いだわが国の実際は、困難に満ちた経済、財政状況にある。それにいまだ出口の見いだせない世界の金融・経済事情。「すご腕」などと言って恐れる人も多いようだが、「息切れ」するのではないか。


「アジア共同体構想」の問題
大隈議長 さてですね、今度はアジアとの関連で言うとですね、結局のところ、この間の〇七年、それから〇八年のリーマン・ショックからきた流れでいうと、世界的に同時不況というのか、すごく大変な時期なんですね。正確に言うと、出口が見つからない。米国もまだ低金利を続け、いわばゼロ金利ですね。日本も出口が見つからない。主要国、みんなそんな状況でしょう。
 だから、「二番底」あるかもしれん、と言われる。十分正確かどうかということは引き続き吟味しなくてはならないんだが。
 というのは、BRICs、中国、アジアと言ってもいいんですが。世界でいちばん成長する地域、と言ってもよいですが。ーーそういう地域が、実は、十分に、そう素直に受け取ってよいのか、という意味で、まだ疑問が残るんですね。
 それは例えば中国が、八%、九%と成長している。その成長、どうやって実現しているか、十分な消費、自立的な回復かというと疑問が残るんですね。中国も、リーマン・ショック以降、輸出が落ち込んだ。二〇%、三〇%ぐっと落ち込んだ。これを何で支えているかと言うと、それは最初は公的資金ですよね。温家宝首相が「弾丸はいくらでもある」と言って財政で支えたんですね。四兆元、日本円では五十四兆円ですよ。
 日本の財政は限界。国と地方の長期債務残高がGDPの一・七倍……ですからね。


大嶋 もう二倍になりますね。

大隈議長 そうですね。他の先進国と比べると倍以上ですね。最悪ですね。だから、いうところの「弾丸」は尽きてるんですが。
 中国はその点ではまだあるんですね。だから、それでどんどん景気刺激をやってるんです。リーマン・ショック以降の、輸出の落ち込み、経済の冷え込み、を支えた。今でも輸出はかつてのような回復はない。落ち込んでる。だから九%というのは、内需でもっているのは間違いないんですが、公的資金で支えられているんですね。
 九%の成長なんて言ってますが、持続するんですかね。最近の新聞ですが、GDPへの寄与度では固定資本投資が三〇%以上となってましたよ。個人消費の伸びは案外伸びていないんですね。
 固定資本投資は、道路とか鉄道ですね、等々をつくり続けているわけですよね。まだ危うい成長。自立的成長とは言えない。
 他のアジア諸国も、一様ではないにしても、みな似たような状況がある。それに、米国向け輸出が減ったとはいえ黒字を稼いでいる。
 最近のドル安傾向と合わさって、各国とも当然のことながら、通貨高になる。それを抑えないと輸出に響く。結局各国は、ドルを一時的に買い上げ、自国の通貨が上がらんようにしてる。外貨準備はどの国も増えている。いちばん成長している地域にもそんな、さまざまな問題もある。
 それでもアジアでの経済成長が、いわば世界の中ではいちばんまとまってね、しかも、人口は世界の半分ぐらい。だから、この地域の成長に、先進諸国は頼ってきてるわけでしょう。この地域の経済で日本が共同体構想を出してる。この「構想」は今に始まった話ではない。そして経済の実態としても一体化は進んでいる。
 米国もここへ、ヨーロッパもそう。みんな狙っている。だからアジアは、一面から見ると成長する地域であるがゆえにですね、日米欧の先進諸国間での、争奪の場でもあるわけですよね。争奪の場でもある。しかも、「先進諸国の争奪の場」であるだけでなく、強くなった中国が一つからんでおるわけですね。
 それに、これは純然たる経済という意味だけではないんですが、ASEAN(東南アジア諸国連合)も、あの地域を含む東アジア全体の共同体構想には賛成だけれど、どこが中心になるのか、ということがある。
 ASEANが中心で、これまで、ずーっとやってきたわけですから、先進諸国が参入したり支援してくれるのはよいことだけれど、どこが中心になるのか、という点での、つまり経済、政治、それともう一つは安全保障ね、そういう面もからんだ、いわば複雑な錯綜(さくそう)した地域なんですね。
 ですが、今に始まった話ではないにしても、非常に具体的に言うと、日本に登場した新政権、鳩山政権が、そういう構想を、しかも「米国離れ」とも受け取れる「アジア重視」と関連づけながら、外交政策の一つの重要な柱として提起したんですね。米国の反応は素早かったですね。
 この地域での「日本の主導性を許さない」政策、勢力圏をつくらせない政策は、七〇年代の大平首相の頃以降、たびたび日本は経験しているところですが、衰退してきた最近の米国は、いっそう敏感になってるんですかね。
 鳩山政権が「共同体構想」を出したとたんに入り込んできて、そしてシンガポール、オーストラリア、ニュージーランドですか、それと米国ね。そして日本にも「参加しませんか」と言ってきたらしい。そんな状況ですね。


大嶋 チリなども含めた、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)ですね。

大隈議長 そういうことをやっている。中国も全体として、「それを歓迎する」と言ったものの、自由化とかその他は、中国もかなり進んできてるんですよ。そういう点で、複雑な地域ですね。
 経済面だけから見ても、とりわけ先進諸国間では、あの地域の経済の発展は、共通の利益もあるものの、同時に、争奪の場でもあるんです。両面ですね。それに政治や安全保障の面も。
 よくヨーロッパと比較されるんですが、そういう点から見ると、ヨーロッパは経済の水準とか民主主義とかで、「アジアは違う」とこう言われているんだけど、アジアは実際の経済関係、そういう取引が、そういう意味で、政治的動きがさまざまあるんだが、実態から見ての共同体的な、そういう地域としては、結構な条件が結構できてきているんですね。だけれども政治の面では、さっき言ったようにいろいろな思惑が入り組んだ地域であることの方がむしろあるので。
 ですから、これが、共同体構想を出して、これからどうなるのかということは、みな関係国は固唾(かたず)をのんでいるというか、そういう雰囲気ですね。それで、日本の財界がシンガポールとタイですか、もう一つどこかへ行ったな、あいつ……。


大嶋 御手洗・日本経団連会長ですか。ベトナムも訪問しましたね。

大隈議長 御手洗が中心になって、どういう具体的なことができるだろうかと視察し、要望を聞き、話し合ってきたんだろう。具体的に最近提起したんだね。岡田外相も最近、御手洗のところへ行って聞いたしですね。
 構想に沿って、具体的なイメージ、絵を描いてるところかな。
 財界の提案は、インフラを中心にして、しかも、そのインフラは単なるインフラではなく、道路にしても機能的にも高度なIT(情報技術)を組み合わせたものにするとか。いろいろなインフラも、道路、鉄道、港湾ですね、そういういろんなことを言って、あの地域の経済発展を支援すると。その点から見ても日本は技術的にその地域の成長を助けることによって、利益もいただくというようなことを言ったりして、だんだんに構想というか、考え方は煮詰まってきているようだね。
 これと関連して、鳩山政権の階級的性格というか、併せて言えば、労組出身というか、それにつながりをもつ大臣も大勢というその政権が、どんなものであるか、面白い言い方をしていますよ。
 こういう言い方をしてますね。いわば、あの地域を国外ではなくて、「内需」としてですね。これは非常に特徴的なこと、従来の概念を変えて。というのは、日本の内需じゃどうにもならんと思って、あの地域を「内需」としてとらえるという言い方ですね。
 それは、財界にとっては都合がよいことですが。例えば労働運動、労働者から見ると、どうなるんだろうか。労働市場が共通の市場ということですよね。それから、共同体構想を進めること、それを進めるためには農業問題がある、これは自由化ですよね。
 それと資本がアジアに展開していくという意味で「内需」と言ってるんですが、今度はアジアの、例えばインドネシアとかフィリピンとか、そういうところの労働者が大勢やってくる。「どうせ日本は少子化だから」と、そういうことですね。
 そういうことから見ると、いわば、誰にとって、この経済構想が、日本の各階級にとってどんな影響を及ぼすのかというのは、具体的な検討が必要なんですね。そしてそのことが、国内の諸階級の生存条件にどう響くだろうか。
 そして別な言い方をすれば、諸階級の生存条件に、さまざまに異なった影響が出るわけですから、日本の政治のあり方は当然そうした考慮が必要ですね。日本の政府ならば、国内諸階級、国民諸階層の生存条件についての正しい、政治的な声が、反映されなくてはならんですね。
 そういう点が一切議論されないで、今の財界主導でやられれば、言うなら、アジアの地域はある意味で発展する。資本が大量に行くわけですから、経済がいくらか伸び、階級格差、矛盾は広がるにしても、中間層もある程度は増加する。
 しかし、先進諸国の国内経済はあまり発展しない、低成長、「二番底」の不安も残る。さらに労働市場は事実上、低賃金のアジア地域と同一市場となり、買い手市場。こんな政権下の労働者階級の生存諸条件のすう勢を描くとざっとこんな光景となる。
 したがって、そういうことを配慮できる政権であるかどうか、誰のための政権であるか、この問題は、日本の労働者階級の、そして農民、自営と中小商工業者の、死活問題なんですよ!
 財界はあの地域、新しい成長する地域を支援することで、利益の「おすそ分け」をいただく、という言い方をしている。
 しかし、他の諸階級は、この構想の中でどんな結果が生まれるか、すでに申し上げた。前途は厳しくなる。
 鳩山政権が何をやったか、やろうとしているか、とりわけ、誰のための政権か、政権の階級的性格の洞察は、欠かせない。そうした議論をしないままに過ごすとすれば、政治が国民の多数の意見、利益に沿わないで進むことを許すことになる。
 アジア共同体構想は、財界が望み、鳩山政権の外交政策の重要な柱なんですが、何のために、誰のための構想か、批判的な分析は欠かせないですね。十分な注意が必要だと思いますね。
 アジア共同体構想など、等々を進めるについても、二つの路線があるんですよ。その議論がないのは残念ですね。

鳩山政権の内政について

大嶋 次に、鳩山政権の内政についてです。
 鳩山政権は発足後、ダムの建設中止や「事業仕分け」など、いわゆる「ムダ排除」「脱官僚」など矢継ぎ早です。この一連の動きは、支持率を上げることにも貢献しているようです。他方、子ども手当などマニフェスト(政権公約)の実行はままならない。
 このような実情を見て、これまた「左派」の中には、鳩山政権を「福祉社会への過渡期」とか「小泉政権とは異なる」「福祉削減路線からカジを切った」などと見る見解があります。共産党から連合中央まで似たり寄ったりです。
 果たしてそうなのか。内政は外交政策とも関連していますが、どうでしょうか。


大隈議長 これをどうか考えるべき時に、今の世界情勢の中でね、いわば、ことは〇七年の米国発なんだけど。それで〇八年のリーマン・ショック等々で、世界的に同時不況というか、まだ失業率とか等々から見て、決して一九二九年、あるいは三〇年代のことのように世界経済がああいうひどい状態ではないにしても、なぜそこにとどまっているか、いわば、ああいうふうにならないでとどまっているかというのは、いわば国際協調がある程度維持されて、それから公的資金で支えられているんですね。金融システム崩壊をまぬかれたというか、ですね。
 それから、実体経済についても公的資金ですから。
 例えば米国はリーマン・ブラザーズ以降の流れから見ると、GDPの七〇%以上でしょう、英国は九〇%、それぐらい、いわば公的資金で支えてるわけですよね。市中にはドル、あるいは各国の通貨があふれているわけですよ。
 そういうことで、まあかろうじてとどまっているんですが。他方でですね、企業は市場をめぐっての、激しい先進諸国間の争奪があるんですね。だから、そういうことをきちんと踏まえておかないと、今の状況を十分理解するのは難しいと思いますね。


 さて、鳩山政権の内政ですが。
 質問に答え、鳩山政権の内政を説明するということは、これまでの政権との比較でしか答えられませんよね。
 ずばり言って、小泉政権と比較して、その対極にあるとの最近の社民主義者の見解もありますが、わが党の見解はそれとは異なっています。
 鳩山政権は結局、小泉政権の改革政治を批判しながら、「格差社会の是正」であるとか「暮らしが第一」とか、現象的には有権者をひきつけて、先の総選挙で圧勝し、政権を掌握し、目前の参議院選挙での勝利をめざしているんですが、内政の実質は、小泉政権がやろうとした改革政治の継続で、異なっているように見えるのは「手直し」程度に過ぎない。ーーこれがわが党の見解です。


 政権党が「改革」を言いだした歴史は、中曽根政権からですね。
 ここから説き起こしてもよい。橋本の「六大改革」から説き起こしてもいいですね。ですが、結局のところ、特に冷戦以降の新しい資本主義諸国間の激しい市場競争、争奪戦にどう備えるか、そういう流れの中での改革だったんですね。
 米ソ対立の時代には、資本主義諸国の市場争奪は、公然たるものではなかった。米国は、ソ連があるがゆえに、いわば他国を、それを口実にして譲歩させてきた。冷戦終焉以後は、それを取っぱらったわけですから、競争はもう公然と「大競争の時代」だとか、いろいろと表現されているが、一言で言って、競争は激化した。
 中曽根改革は冷戦時代だが、資本主義世界陣営での競争の激化、諸国間の不均等発展の中での国内対応策だったんですね。
 八〇年代後半から始まった日本の政情不安定も世界経済の矛盾の激化、その反映、日本版ですね。小沢氏の「日本改造計画」、九三年に著したこの著書も、冷戦後の状況にどう対応するかの、小沢氏の脳みそによって色づけされた、当時の支配層の認識、その総合的な改革版と言えるものでしょう。この時期に自民党は改革(集中的には政治改革)をめぐって分裂。それ以後与野党すべて、改革を掲げ、自民党政権も例外ではなかった。財界が強く求めていたからである。
 二十一世紀初頭の世界情勢、わが国の多国籍企業、経済、財政、政治の状況、長過ぎるんで話せませんが、それらを反映しての小泉改革は、財界の強い要望、支援もあって、強力に進められた、歴代自民党の政権とは異色な存在、改革だった。
 「自民党をぶっ壊す」と叫んで自民党を勝利に導き、郵政改革などは果敢に実行した。だがしょせんは、自民党政権であった。短くない政権だったが財界が望む「改革」は挫折したんですね。
 小泉元首相が議員引退前、「小泉改革を引き継ぐのは、自民党ではなく民主党だなあ……」そう言ってるのも、かれの実感だろうね。


 もう少し、内政のための、下ごしらえをしますか。
 よく言われる、ドル還流システム。
 どこから説明するかというのはあるかもしれませんが、例えばレーガン大統領だって高金利、ドル高政策ですよね。それから、九五年以降「ドル還流システムが完成した」とか言われたのはルービン財務長官からなんですね。
 レーガンにしろ、ルービンにしろ、ドル高政策を採らなきゃいかんだったのは、いうなら貿易競争に米国が一歩一歩追い込まれた結果としてですよね。米国は経常赤字を補うためにドル高政策をとってドルを引き寄せ、還流させ、かろうじて生き延びた。
 輸出国もまた黒字を稼いで、その資金を生産部門に再投資するわけにいかんので、米国で運用する。米国は経常赤字を埋めたり、財政赤字を補ったり、残りで、世界の稼げる地域に再投資をし、金融で荒稼ぎをする。金融技術だなんて証券化、資産バブル、サギまがいの金融産業、こんな構造。米国の競争力はさらに弱まる。世界経済、貿易で不均衡は、耐え難い額にまで拡大した。


安保条約を破棄し、すべての米軍基地を日本全土から一掃すること、そのための戦線を強め、闘うことこそ、唯一の打開の道である。


 そういう流れの中で、特に、最近の数カ年は特に四、五千億ドル、六千、七千、九千というくらいの経常赤字でね、行き着くところまで行き着いたわけで、それが崩壊したわけですよね。したがって崩壊して、さっきも言うように公的資金でかろうじて今とどめて、「二番底」が来るかもしれないというんで、出口も見つからんでおるわけでしょう。言うなら、バブル高山のがけっぷちから転落し、途中で木に引っかかっているところだね。生きてはいるが……いや正確には「死んではいない」が、元にも戻れず、降りる方法も今のところ分からない。まあそんな具合だね。その木は、公的資金。
 金融危機が経済を直撃し、同時不況、世界中が大変になった。企業単位で見ると、つまりミクロ経済で見ると、それぞれ企業は死活をかけての激しい争奪をやっておるわけですね。激しい争奪をやっている。ですから、さっきも話したんですが、アジア、成長する地域、先進諸国企業はそこに殺到しているわけですね。
 これはもう金融から、製造業だけでなく、流通も含めて、つまりサービスからそういうものも含めて。極論すると、ラーメン屋さんまで行くわけですから。


大嶋 (笑)

大隈議長 そういうわけで、企業にとっては、国内が十分成長する可能性があれば、それは国内にとどまりますよ。だけど、小さい企業までですね、いわば賃金の安いところに行くという形なんですね。
 そういう流れを理解し、しかもですね、日本の場合は他国と比べて先進国の中で、いわば倍以上の、財政難を抱えているわけですね、財政危機を抱えている。
 財界が強く望んでいるのは、いわば「安上がりの政府」ということで、従来の分配型政治からきっぱりと転換して、国際市場競争に耐え得るような、企業減税もやってくれと矢の催促でしょ。
 それから危機に備えて、経済危機のたびに国債を発行し、それで乗り切るやり方でなくて、ムダな金は使わず、財政再建もやってくれ、こんなことです。
 それから、民主党が今言っている「コンクリートから人へ」。これも長年の財界の願いなんですね、これは。「コンクリートから人へ」という、この「人」を分析してみると、どの人かというのがあるんですね、これは。財界はその時ですね、「コンクリートを減らせ」と言った人というのは企業、国際的に競争力ができるように、そっちに税金をまけたり、回してくれ、ということなんですね。
 ところが、この「人へ」という言葉は奇妙なもので、それは庶民に来ると思っているわけですよね。この間の選挙でマニフェストに書いて、みんな、しかも子ども手当とかいろいろ書いたから、そっちに行って、それで政権ができた。
 もともと、鳩山政権は小泉にできなかったこと、小泉が大改革をやろうとしたが頓挫した。だから、その小泉の続きをやろうとしている。それはもう小泉は敏感な政治家ですね、さすがに。自分の改革は途中で、道路とかいろいろいわば公共事業の族議員から抵抗を受けて、あとの改革が進まなかった。だから、「自分ができなかったことを今度の政権はやるんだな」ということを言ったんですよ。
 鳩山の最初の所信表明演説は、徹底的にそれをやると言った。


大嶋 「戦後行政の大掃除」というやつですね。

大隈議長 そういう流れとして理解するとね、どう考えてもですね。いわば、福祉社会等々。それから以後は、この新しい政権は、どうしてやるか。社民のためにいろんなことをやるんだろうというのは、これはまったくの幻想でしてね。
 そしてわれわれが主張しなくても、目の前に三カ月で何もやらない、やれる条件がないんですね、これは。
 財界は、中国の温家宝首相が言うように「弾丸がいくらでもある」ならば、これをそこにつぎ込めば、(赤字国債が)四十四兆円で何とかかんとか、足らんとか、仕分け等々騒がなくても、たちどころに景気は回復しますよ。だが、打つ手がないんです、これは。
 したがってそういうことを見て企業は、「国内でがんばってくださいよ、ゼニは始末してやってください」と。「その間オレらは皆、アジアで稼ぐ」と、こう言っているわけでしょう。
 これは先例があるんですよ。トヨタ、今から十数年前ですね。「以後国内は見込みがないので、投資しないで世界で勝負する」と、そして途中で奥田会長が言ったのは、「税金がいつまでもまけてもらえないなら、本社まで移す」と、こう言ったことがあるんです。脅かしたんですよ。そしてトヨタは、確かに米国市場で、あの世界一のGM(ゼネラル・モーターズ)に打ち勝ったわけでしょう。そういう歴史があるんです。
 そういうことを考えるとね、鳩山政権があたかも労働者の政権だとか、あるいは国民大多数のための政権であるなどというのは幻想でしてね。そして、マニフェストで書かれたいろんなことは、すでに吹っ飛んでいるわけですね。
 しかも今度は、さっきもちょっと申し上げたんですが、アジアの中で生きていく、アジアを国外と見ないで「内需」とみなすということは、資本にとっては安い労働力が「そういう国内」にあるということですね。
 内側にあるということ。ずっと以前、本土資本が九州に来た時にもそう言っていた。低賃金の地域に。ところが今「アジアを内需とみなす」ということは、企業家にとっては安い労働力、しかも、日本の内需を二つに分けて本国の内需は当面見込みがない、しかし他の国は内需がもともと低かったのが需要が起こっていくという意味で、資本がそこへ動くから、そこで「内需」が起こるんですね。
 低賃金の労働者を雇うだけでなく一部は日本に逆輸入し、一部はその地域に購買力が出れば、それもいただくとことができる。したがってあの地域を全面的に、金融から何から支援をすると。
 それは三菱UFJも言っている。日本の三大メガバンクも。それが共通した見解なんですね。しかも野村證券だとか、あの手の金融業等も、全部「アジアで稼ぐ」と言っているわけです。
 さて、そこでですね、それでは日本の純然たる、かれらの言う「アジアは内需だ」ということのほかに、純然たる日本本国の、例えば労働者はどうなるかということですよね。そういうことを考えてみても、つまり同じ労働市場ということになる。それはアジアの労働者はですね、いくらか生活水準が上がるかもしれない、一部はね。しかし、日本は下がるということです。それから小売業者、商工業者は日本で賃金が下がれば、その上に流通産業とか何とかはあるわけですから、そうすると、バラ色に描けないですよ。
 しかも日本は「二番底」が来るかもしれない世界の中でですね、この次弾丸を撃つ、つまり温家宝流儀の、倉庫に弾丸があるかどうかということになると、まだ崩壊しないうちにその弾丸を急いで蓄える必要がある。あるいは、財政を再建する必要があるわけです。この増税がのしかかる。
 したがってどこから考えてもね、そういう理屈が出るのか、ということですよ、これは。そして鳩山政権の小沢はじめ中枢は、全部このことを知っているし、したがって財界もですね、この政権に「がんばってくれ」と言っているわけですから。つまり、かれらのこの政権は一部の誰かが言うようにですね、小泉政権とは異なった政権、それは異なってもいるが継続もしているわけですね、これは。だから、そういうふうにものを見ないといかんということですね。
 私は、国内が豊かになるだろうという、このウソっぱちは、毎日、毎月、暴露されていくと思うんですよ。今度の第二次補正でもうまくいかなかった。今また予算を立てている。昨年末までのうちに「あるいは年を越すかもしれない」、新年になるかもしれないと言われる通常で、そのことはハッキリする。
 したがって、そういう客観的にあるいは非常に具体的に問題を検討すると、「よくなる」と言う日和見主義者たちのたわ言は、幻想にすぎないということになる。これで、労働者階級が救われることはあり得ない。
 したがって、幻想を広める輩(やから)は、労働者階級と国民の大多数に対してまったく無責任で、支配層の走狗(そうく)と言わざるを得ない。言い過ぎですか!
 私はそう思う。確信をもって言う!

お薦めしたい本

大嶋 さて、音楽で言えば「間奏曲」です。
 昨年出版された本の中で、議長お薦めのものは何でしょうか。この情勢をよく反映し、展望する上で有益とお感じになった本、ということになりましょうか。


大隈議長 この間の何回かのインタビューでも似たような質問が出たことがあるんですね。その一、二冊をということになれば、昨年もいろいろ面白い本が出たんですね。
 特に米国がどういう状況にあるかというね、それを知る上でも金融問題で、例えば〇七年の時には、本来カネを貸せない人に貸したというやつ、サブプライムローンで説明していたんだが、その後は「リーマン・ブラザーズ以降」なんて。なかなか金融問題というのは苦手で、「日経新聞」を読んでも素人には分かりにくいでしょう。そういうこともあってですね、米国でオバマが登場したらまるで別の国でって、「世界は変わる」なんてね、というような見解もあったしですね。
 そういう上でですね、米国がどうやってメシを食ってきたかね。米国は第二次大戦以降、四五年からしばらくは、いわば米国の全盛期なんですね、その前史は百年も前からですから、長い間。そして二次大戦に勝利した後、文字通り米国は世界の強国でですね、四五年からしばらくは頂点というか、だからこそ、英国の反対を押し切ってですね、ドルを基軸通貨にする、そういう力があった国ですよね。しかしもう、五〇年代の終わり、あるいは七〇年代の時にはすでにもう、金ももたなくなってきたか、もう数カ月で種切れという、そういう状況になって、「もう金と換えませんよ」と言って、いわば軍票みたいなドルね。それからずいぶんと長生きしたと言えないこともないですが、それでもよう生きたわけですよね。だって年間、最後の頃は四千、五千からまたたく間に数年間で八千億ドルなんてね、毎年べらぼうに、世界中の借金国家の借金を全部合わせたカネだって、それを毎年積み重ねていく借金(経常赤字)ですから、よう食ってきたわけですよ。
 そういうことなどを知る上からもね、そして、これからかれらがどんな状況になっていくのかというようなことを知る上でも、面白い本というのは、少し辛抱して読めば面白いと思いますが、「世界はカーブ化している」、デビッド・スミックのですね。それは興味のある人は、読んでみたらいいですね。どんなふうにして稼いできたのか、ということが詳しく書いてあるんですよね、詳しく。しかも、七〇年代以降のある時期から、ずっと系統的に、つまり米国のある意味で、直接もそういう仕事に携わってもいるんですが、いわば評論家というか、その種のコンサルタント、内幕を知っているという点では、いわば第一人者ですよね、それがいわば赤裸々にというか。いろんな内側を知っている人ですから、一〇〇%しゃべったかどうかは分かりません。にもかかわらず、米国がどうやってメシを食ってきたかをしゃべっているんです、これはね。
 その中で、食ってきた話もそうですが、米国の金融産業が製造業と比較しても、株式会社と比較しても、どんなに大きな利益を得ていたのか、というのが赤裸々に出してあるわけですね。そういう点で、これを読まれたらいいと思うんです。そしてかれらがですね、今度のリーマン・ブラザーズ以降あまりにも、かれらから見ても「やややり過ぎたかなあ」と、例えばレバレッジ(てこ)なんかも書いてあるし、そういう、「やややり過ぎたかなあ」と言っておるんだけれど、したがって今度の破たん以後、米国の国内でも批判が上がって、つまり「階級闘争が出てきた」というわけだな。それで、銀行が従来通りやることを米国民が、それでそれを「なぜ助けにゃならんのか」などと批判も出てきて、規制が強まるであろうと。それから政治家がそれに便乗して、ますます従来通りにはやりにくくなる、これはある程度避けがたいと。しかし考えてもみてくれ、米国がこれでこんなふうにして、「この利益によって米国が生きてきたという実態を、あんたらは知っているのか」と言って脅かし、なおかつその規制に恐怖も感じている、そういう状況がまざまざと出ているわけですね。
 したがって以降のことを考えると、米国が製造業だけで、例えばドルを下げたにしても、簡単に国際市場で米国が立ち直るというようなことは、とても描けそうにない実態。つまり、長い間そうやって金融で食ってきただけに、金融で食えるということは、金融業で他の先進諸国より優れたノウハウを持っている、それは有利な点かもしれないけれども、他方で、それに依存したおかげで実体経済つまりどんどん製造業が弱ってきて、あるいはまだ生き残った企業は他国に出て行って、他国でメシを食っているというような、そういう状況でね。
 米国経済が、まともに規制が強まる方向の中で、米国が世界経済の中で立ち直るのは容易ではないという実態。つまり、米国経済がすでにそこまで製造業が衰退しているというか、金融業に依存して、というようなことを知る上で。それから、以後の米国が、世界経済の中でたどるであろう必然性。なにせ経済が弱ければですね、結局その上に、米国の軍事力といえども、国家予算等々いえども、成り立っているわけですから、米国の世界政治の上で、安全保障の上で、たどるであろうことの基礎的なことを、少し考える人であれば理解できるはず、という点で、お薦めといえばそれかいな、ということでしょうか。

2010年、闘いの決意

大嶋 なるほど。最後に、今年のわが党の闘い方です。詳しくは新春講演会の場で、ということになるでしょうが、簡単にお願いします

 (1)
大隈議長 さてですね、この少し、十年前とかですね、あるいはイラク戦争が〇三年ですね、それ以降、われわれは繰り返し、米国はイラク戦争をやったことで衰退するだろうと、労働党は常に言ってきた。
 ところがイラク戦争を始めたら日本の知識人も、中曽根元首相のような人も含めて、「米国が決断したんだから、これに従わなければ日本はやっていけなくなる」と、米国が決断したんだから。なぜかというと、イラク戦争をやって石油を米国が一元的に握るようになればですね、「日本はそれに反対したならば維持できなくなくなるんだ」というようなことを言った。
 しかし、われわれがどう言ったかというと、「そんなことはあり得ない。なぜなら米国はこのことによって衰退をいっそう早める」と。その通りになったんですね。
 それから多極化した世界についても、われわれはもう数カ年前に、〇七年の時には「本格的に多極化が進んだ」と、それは経済から安全保障を含めて、ということを主張してきたんですね。今、今度の〇七年、〇八年のリーマン・ブラザーズ以降の状態、そして一昨年の暮れからはG などと言われて、そして昨一年で、昨年の十、十一、十二月くらいの状況を見ているともう、COP (国連気候変動枠組み条約第十五回締約国会議)を見ても、WTO(世界貿易機関)を見ても、いろんな国際会議を見ても、ほとんど先進国は、引き続きこれらを巻き込んでと言って、世界の中で主導性を維持しようと、主観的には思っているだろうけど、それも容易でないわけですね。
 そういうことがまざまざと見えて、そして一〇年の今年になっている。それでさっき、昨年の夏以降ですね、そういう世界情勢が大きく変わって、オバマ政権ができて、日本でも鳩山政権ができたので。
 これまた奇妙なことで、いよいよ鳩山政権は、われわれから見ると、小泉の後を引き継いで、財界のために「コンクリートから人へ」と。私から見ると「コンクリートから企業利益のために」と、こういうふうに見えるんだけれど、妙なもんでですね、コンクリートから労働者や庶民にですね、こういう人たちにゼニが来ると、以後は福祉社会へ等々と描く人たちもおるわけですよね。
 だから、われわれはそういう者を見ていて、いわば日和見主義者たちはたわいもないと。そして本当の姿を、本当の敵を、労働者階級と国民の大多数に大胆に訴えるという点から見ると、誰のための政治をやっているのか、ということを暴露せざるを得ないと。


 (2)
大隈議長 したがってわが党は、今年、確信をもって、この間のわれわれの主張は正しかったし、労働者階級と、国民の大多数に闘いを呼びかける。
 この政権と闘え!
 鳩山政権や民主党に対する幻想を捨てよ!


 考えてみたらいい。
 民主党の小沢等々の中枢、全部自民党を二つに分けてやった政治家、党員でしょう。それが労働組合をみんな巻き込んで、労働組合は舞い上がっているんだけど、かれらもよく考えてみると、あれら、大臣になった者、組合の幹部は望みがあるので、いいかもしれないが、普通の労働者はどうなる。
 「アジアは内需だ」と言ってはばからない。これも非常に具体的に自分の利害と結びつけて計算したらどうですか、というようなことですね。われわれはだから、きちんとそういうことを訴えて、労働者のために闘う。日和見主義を暴露して闘うということですね。そして大胆に、闘う勢力の団結を訴え、統一戦線を発展させていこう。
 小沢は自公政権を倒すために、自民党離れした層に目をつけて、農民とか中小業者をひきつけた。しかし、かれらは鳩山政権の数カ月を見て、「何だったのか」と疑問を持ってきている。したって中央段階でもそうだし、まして地方段階でも、政治の戦線が大きく様変わりしているんですよ。闘い方、戦線の状況は変わった。
 労働者階級の中の多くの、いわば下層の労働者ね、だって年間収入は百万円以下でしょ。二百万以下がいるなんて話はとっくに過ぎたんですね。そういう多くの労働者がいる。
 もう一つは、農村と都市の中小業者も含めて、小沢が一時的に獲得した、そして農民も一時的に幻想を持った、こういう人びとがですね、民主党政権を見破る、そういうことが急速に進むんですよ。
 したがってわれわれは、原則的な闘いを堅持して進むこと、これが大事なことですね。
 われわれは、資本主義の破局が近づいている、そういう状況として見通しを立て、歴史、時代感覚を持った、理論に強くしっかりした政策をつくれる、強い党を建設しよう。
 新春講演会で詳しく話したいので、このぐらいにしましょうか。


大嶋 ありがとうございました。

(注)楚辞集注=中国・戦国時代(紀元前五世紀〜同三世紀)の七国の一つ、「楚」において謡われた詩集。大国「秦」に抗した政治家・屈原の作品を含む。


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