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2009年12月15日号 2面・社説 

鳩山政権の普天間移設問題での
対応は欺まん

安保破棄でこそ
米軍基地問題を解決できる

 鳩山首相が、普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設問題の決着を先延ばしし、さらに在日米軍再編の「見直し」にも言及したという報道が流れるなどで、闘う人びとの間に一定の期待と幻想が広がっている。国内での「移設候補地」なるものもさまざま報じられ、沖縄県民をはじめとする心ある人びとの「希望」をあおっている。鳩山首相が普天間問題で「迷走」しているなどという評価もあり、「しっかりする」ことを求める向きもある。
 だが、これらはまったく表面的評価で、闘いを鈍らせるだけである。
 一方、マスコミは「同盟の危機回避へ決断せよ」(読売新聞)などと、鳩山政権に妥協を迫っている。
 幻想を捨て、現実の闘いを強める以外にない。日米安保条約を破棄すること、そのために国民運動を力強く発展させることこそ基地問題を解決する唯一の展望ある道である。

参院選のための欺まん
 鳩山政権の限界と狙いを、しっかりと見抜かなくてはならない。
 鳩山の「迷走」と見られる言動の狙い、それは、小沢幹事長が訪問先の中国・北京で「(来夏の参議院選挙で過半数を得れば)内政、外交、色々な問題で思い切った政策実行ができる」と述べた通りである。
 すべては参議院選挙対策に集中している。だが、民主党の大勝は保証されていない。当初のメッキははげ落ちて鳩山政権の支持率は急落、「事業仕分け」のパフォーマンスなどで維持されているにすぎない。
 こんにち、わが国の経済状況は厳しく、労働者の雇用や賃金、中小零細企業の資金繰りなど、国民の生活と営業はいちだんと深刻である。しかし、財政危機も深刻で、国債発行などの対策もままならない。マニフェスト(政権公約)は、次々と反故(ほご)にせざるを得なくなった。辛うじて、自民党など野党の弱さに助けられている。
 一方、沖縄県民は十一月八日の県民大会の成功を勝ち取り、「普天間基地即時閉鎖・撤去」への断固たる意思を示し、ますます全県民的戦線を発展させている。
 また、鳩山は、当面参議院で過半数を確保のためにも、参議院選挙に勝つためにも、社民党や国民新党との三党連立を維持せざるを得ない。
 これらが、こんにちの鳩山政権を縛っている。
 そこで、カネもかからず、政権への支持を維持する術策が「事業仕分け」であり、普天間問題での「迷走」にほかならない。参院選後まで引き延ばすことが狙いなのである。その後に浮上するであろう、小沢幹事長がやりたいこと、「やる」と明言していること、すなわち、海外で軍事力を行使する「普通の国」戦略をいささかも見失ってはならない。
 かれらには、普天間など沖縄の米軍基地問題の解決は眼中にないのである。

アジアを活路とするオバマ政権
 マスコミは、政府特使の寺島・多摩大学教授が米側に拒否されとか、デンマークで行われている国連気候変動枠組み条約国会議(COP )の際の日米首脳会談を米側に拒まれたとか、おもしろおかしく書き立てている。交渉事だから、いろいろあるのは当然である。
 日米軍事同盟をめぐって日米政府間が「決裂」することはない。日米両政府、支配層はともに同盟(安保条約)を必要とし、かつ維持を願っているからである。
 経済が未曾有(みぞう)の危機にある中、各国の多国籍大企業は、アジアを中心に世界市場をめぐる争奪を激化させている。だとしても、日米の支配層が日米同盟を崩壊させることはあり得ないし、米軍が沖縄など日本から撤退すると考えるのは夢想にすぎない。
 米国の事情は深刻である。米国経済には出口がなく、雇用問題は差し迫った課題になった。米国は、世界の「成長センター」となっているアジア市場に活路を見いだし、市場として確保しようとしている。アフガニスタンでの劣勢など、急速に衰退する国際的指導力をばん回することも課題である。このような米国にとって、米軍を日本に駐留させ、抑え込み、支配的位置を維持することは、アジアに関与するために不可欠な「足がかり」なのである

米国はアジアから自ら撤退しない
 冷戦後、二度と再びソ連のような対抗する超大国の出現を許さない、とりわけアジアでは中国の強大化を許さないとする米国の戦略は、一九九〇年代後半の「東アジア戦略」以来、一貫したものである。九六年の日米安保再定義とその後の米軍再編、日米外交・防衛閣僚会談(2+2)合意などはその線に沿ったもので、朝鮮民主主義人民共和国だけでなく、中国を事実上の「仮想敵国」にするものだった。
 こんにち、中国の経済的強大化は著しく、危機の中で存在感を高め、「G2」などとも言われるようになった。軍事力強化も図り、米国の軍事圧力に備えようとしている。一方、米国は、オバマが「核廃絶」を唱えざるを得ないように、軍事超大国を経済的理由からも維持できなくなった。しかも、米国は国債購入を中国に頼るなど、ますます矛盾に満ちた対応を迫られている。
 日本も、中国を市場としながら恐れてもおり、一国だけでは中国に対処できない。アジア市場をめぐって争う日米だが、共同して中国に関与し、抑え込む点では利害が一致しているのである。
 米国にとって、東アジアから米軍を撤退させると受け取られるような政策変更は容易でない。それは、アジアでの米国のプレゼンスを決定的に危うくさせ、引いては、衰退した国際的指導力にいっそうのダメージを与えるからである。

「同盟深化」に警戒と闘いを
 さまざまな事情を鑑みれば、同盟の枠内で、日米間をより「相対化」することは可能である。
 米国からすれば、日米同盟の「深化」と日本の軍事力強化に信頼を置けるかどうかである。
 一部マスコミが報じた、「キャンプ座間(神奈川県)への陸軍第一軍団司令部の移転中止」のように、米軍再編計画の一部が修正されることなどはあっても不思議ではない。普天間基地の移設問題でも、現行計画にとどまらない合意がなされるかもしれない。
 だがこれは、わが国が軍備増強に突き進むことと「抱き合わせ」である。アーミテージ元国務副長官は、都内で行われたシンポジウムで、日本が軍備を増強してこそ「日米は対等になる」と述べたし、長島防衛政務官(衆議院議員)も「有事のリスクを日本が肩代わりしないといけない」と呼応している。
 当然にも、海外派兵の拡大や集団的自衛権の行使、憲法改悪へとつながるものである。これらは、小沢幹事長の長年の持論でもあり、来年の日米安保条約改定五十周年を機に、日米安保「再々定義」として日米間でやりとりが進んでいるであろう「日米同盟の深化」の中身でもある。
 だが支配層には、この「普通の国」に踏み込む十分な準備がない。民主党内でさえ、矛盾が激化せざるを得ないだろう。
 だから、この断行には、小沢幹事長らの主導で国論を統一し、継続しなければならない。それも容易でない。


 いずれにしても、この小沢・鳩山路線は、広範な国民が望む対米従属からの脱却、独立・自主の進路ではない。「対等な日米関係」どころか、戦後の対米従属政治の継続にすぎず、わが国をいっそう米国の世界戦略に縛りつけ、アジアと対立させる危険な道である。沖縄県民にとっても、真の解決ではない。
 安保条約を破棄し、すべての米軍基地を日本全土から一掃すること、そのための戦線を強め、闘うことこそ、唯一の打開の道である。


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