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2009年11月15日号 2面・社説 

「普天間基地即時閉鎖、
県内移設反対」
県民大会が大成功

沖縄に呼応し、
安保破棄・基地撤去!
鳩山政権の対米従属政治と
闘おう

 沖縄県民は立ち上がった。宜野湾市で十一月八日、米軍普天間基地の県内移設に反対する「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民大会」が、二万一千人の労働者・市民が参加し開かれた。普天間基地の即時閉鎖・返還などを決議し、鳩山政権に対して沖縄県民の強い闘いの意思を示した。
 大会前日には、嘉手納基地への統合案に反対する嘉手納町民大会も開かれ、二千五百人の町民がデモを行った。さらに、米兵によるひき逃げ殺人事件も発覚、新たな闘いが始まっている。
 沖縄県民の闘いは、従来の枠組みを超えた広がりを見せつつある。県民大会は、伊波・宜野湾市長などと並んで、自民党県連幹事長の経歴を持つ翁長・那覇市長が共同代表を務めた。嘉手納町は保守系首長の下、従来、反基地闘争と一線を画してきていた。また、自民党沖縄県連内には、普天間基地の「県外移設」方針をめざす動きが強まり、名護市長も「基地受け入れ」姿勢の転換すら示唆(しさ)している。
 これ以上沖縄県民の闘いを孤立させてはならない。連帯して闘い、県内移設を阻止し、すべての米軍基地撤去の闘いを前進させよう。

「県外移設」に自縄自縛の鳩山政権
 沖縄県民の断固たる闘いは、普天間基地問題で欺まんと動揺を重ねる鳩山政権を追い詰めている。
 民主党は、マニフェスト(政権公約)で「対等な日米同盟関係」を唱い、財界と自民党による長年の対米従属政治に対する国民の不満を引きつけ、また沖縄では「普天間基地の国外移設、最低でも県外移設」を訴えて歓心を集め、総選挙の大勝を引き出した。さらに、社民党、国民新党との「政権合意」でも、「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地の在り方についても見直しの方向で臨む」などと、沖縄県民に期待と幻想を抱かせた。
 だが、政権成立から二カ月、普天間問題でも地位協定問題でも、「前向き」には何一つ動いていない。事実は逆で、岡田外相や北澤防衛相は「県内移設」など公約違反の言動を繰り返した。岡田外相にいたっては、基地機能の嘉手納基地への統合を打ち出し、県民の怒りを買った。鳩山首相も迷走を繰り返した。
 鳩山政権は、「県外移設」の公約を反故(ほご)にした上で「落としどころ」を探っている。だが、作業グループ設置と「早期解決」が日米間の公約となった。鳩山首相は国民との公約を取るか、日米間の公約を取るか、自らを窮地に追い込んだ。

 問題は、鳩山政権が戦後の保守政権、自民党あるいは自民党中心の政権と比較して、またとくに小泉政権と比較して、同じであるか違うのか、これである。
 内外の激動が始まった一九九〇年代以降の自民党政権あるいは自民中心の連立政権、それは宮沢政権、その後、九三年に細川連立政権が成立、自民党は下野したが羽田政権を経て、自民党は社会党と手を組んで復活した。村山政権、そして禅譲(ぜんじょう)で橋本政権が成立した。次いで、公明党が与党入りした小渕、森、小泉、安倍、福田、麻生の各政権となる。
 これらの政権はそれぞれに違い、いうところの特殊性がある。
 だが、共通性もある。戦後の自民党あるいは自民党中心の政権は、みな財界の走狗(そうく)で、財界ともども対米追随勢力であった(いうまでもなく、細川政権も羽田政権も基本的に同じであった)。
 民主党、鳩山政権は、それとは異なっているのか、似たようなものか。その本質に迫るためには、まず、小泉政権が「自民党をぶっ壊す」と言って政権を掌握し実行した改革政治を、やや歴史をさかのぼって検討(分析)しなければならない。鳩山政権も改革政治を唱え、「戦後行政の大掃除」をす
るといっているからである。

自民党政権と同じ対米貢献策
 普天間基地移設問題でのペテンのみならず、鳩山政権の「対等な日米関係」という主張は口先だけに過ぎないことが暴露されている。
 オバマ大統領と鳩山首相との日米首脳会談やそれに先立つ日米外相会談は、鳩山政権への幻想をはぎ取るものとなった。鳩山首相は迷走したが、結局「日米同盟深化・発展」を確認しただけだった。
 鳩山首相は、「日本外交にとって日米同盟はすべての礎(いしずえ)」などと表明。自主外交の看板である「東アジア共同体」構想についても「アジアで米国のプレゼンスが高まることを期待する」とし、米国を関与させることを明言した。
 アフガニスタンへの支援策では、五年間で五十億ドル(約四千五百億円)の「民生支援」で合意、わが国は「反テロ」の口実の下で、米国の無法なアフガン占領を引き続き支える。海上自衛隊によるインド洋での給油活動は、日本側が代替策を検討することになった。中国や朝鮮民主主義共和国(朝鮮)をにらみ、ミサイル防衛(MD)のための政府間協議を始めることも決まった。
 その他、オバマ大統領が提唱した「核のない世界」については、米国の核戦力に依存しながら、米国などの核独占体制を守ることで合意したに過ぎない。朝鮮に六者協議への復帰を求めることや、イランの核問題の早期解決なども協議された。
 鳩山首相のいう「対等な日米関係」の、「対等」への具体策は何も出なかった。
 むしろ、「日米基軸」を掲げて米戦略を支え、また、米国抜きの対アジア政策を採らないという基本姿勢において、鳩山政権は自民党政権と何ら変わらない対米追随政権であることが明らかになった。

矛盾激化する日米関係
 しかし、首脳会談で「未来志向」を唱わざるを得ないほど、「現在」の日米間の矛盾は深い。
 大国間の争奪激化の世界で、米国は、昨秋のリーマン・ショック以来の金融、経済危機の混乱から立ち直れていない。財政投入などで危機は「中休み」しているが、そのツケで国家財政とドルの危機が進んでいる。アフガニスタン統治でも窮地に立ち、朝鮮やイランの核開発問題、イラク問題などで手が伸びきるなど、経済・政治・軍事すべての面で衰退を早めている。失業者増大など内政の危機も深く、オバマ大統領の支持率は政権一年で激減である。
 その米国は、オバマ東京演説でも明らかだが、「雇用戦略」とまで位置づけるほど経済活路をアジアに見いだそうとしてもがいている。しかし、アジアでは中国の強大化が著しい。米国は、冷戦終結以来の「東アジア戦略」を基本的に継続し、中国に対する包囲・関与政策を維持しているが、一方ではその中国に米国債購入を頼らざるを得ないなど、矛盾に満ちた対応を迫られている。
 衰退し危機にあえぐ米国にとって、自らの世界戦略に日本を抑え込んで動員し、さらなる負担を迫ることは不可欠であろう。オバマが「対等な同盟」を口にしたとしても、独自のアジア政策を許すことはない。


鳩山政権の模索と迷走
 巨大金融機関を頂点とするわが国支配層も、争奪激化の世界への対処を迫られている。国家による国際政治面での力、軍事を中心とする能力強化を求めている。米国の衰退はある種、チャンスとも映っているであろう。
 だが、問題は軍事力を含めて急速に強大化する中国である。核武装した朝鮮も出現した。経済でアジア依存を深めながらも、隣国をべっ視し恐れもするわが国金融独占体には、米軍に依存しない「自主的」な道は容易でない。また、ドル世界にもどっぷりと依存している。対米従属政治の継続以外に選択肢はない。
 しかも鳩山政権は、来夏の参議院選挙を控えている。制度疲労した「戦後行政を大掃除」して、国家的強靱(きょうじん)さを実現することが戦略課題であり、そのための参院選での大勝が当面の最大課題である。欺まん的なマニフェストに期待を持った有権者も多数で、公約をそうむげにできない。
 また、参院選までは社民党などとの連立を維持せざるを得ない。
 鳩山の模索と迷走、戸惑いはこうした結果であろう。普天間基地の問題一つにしても、鳩山政権にはきわめて困難な課題となった。

沖縄県民と連帯して闘おう
 こんにち、日米関係は揺らぎ、争奪と再編の世界で、わが国の進路は岐路にある。対米従属政治を打ち破り、自主外交で中国、朝鮮などアジアとの関係を発展させなくてはならない。その好機である。米国を頂点とする帝国主義の歴史的後退の中で、中小国は自立的な発展のため努力を強めている。わが国だけが時代錯誤ではやっていけるはずがない。
 現実に、沖縄県民の闘いは保守層にまで広がりはじめている。自民党が政権を追われたいま、歴代政権が進めた強引な対米従属政治への疑問、見直しの機運が、保守層、あるいは従来、自民党支持だった農民や都市の自営業者など中間層の中にも広がるのは当然である。
 沖縄で進んでいる変化は、広範な戦線をつくりあげ、鳩山政権への幻想を打ち破って闘いを前進させる上で、重要な示唆を与えている。
 沖縄県民の闘いと連帯して、独立・自主の進路を掲げた国民運動を全国で大きく巻き起こさなければならない。労働運動には、国の進路を切り開く国民的闘いの先頭に立つ、指導的役割が求められている。
 鳩山政権の対米従属政治を打ち破り、安保条約破棄、すべての米軍基地撤去へ闘いを前進させよう。


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