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2009年9月15日号 2面・社説 

民社国が「合意文書」を締結

鳩山連立政権は
内外の危機を解決できない

 民主党、社民党、国民新党の三党が九月九日、党首会談を開き、連立政権を樹立する「合意文書」に署名した。首班指名や組閣はこれからだが、新政権はこの三党による連立となる。
 その新政権を取り巻く環境は危機的である。世界的恐慌に打開のあてはなく、国民諸階層の生活苦は限界である。膨大な財政赤字など難問山積だ。麻生政権が抱えていたこれらの課題は、そのまま鳩山新政権に引き継がれる。この上に、対米外交がいっそう困難なものとなってのしかかっている。
 自民党と基本政策が同じ民主党主導の連立政権には、これらの解決は困難で、財界の望む「政治の安定」は保証されていない。
 労働者を中心とする国民運動の発展こそ、内外の危機を打開するもっとも頼りになる方法である。

民主党優位の連立政権
 民主、社民、国民新の三党は、総選挙で選挙協力を行っており、あらかじめ連立は想定されていた。それでも「選挙の結果次第」であった。
 鳩山・民主党代表は総選挙翌日の八月三十一日、社民党と国民新党に連立政権の樹立に向けた協議を正式に呼びかけた。
 社民党は九月二日、地方県連の代表を集めた全国代表者会議を開き、連立政権協議への参加を正式に了承した。当然のことながら、「百歩譲っても閣外協力」「村山政権の『二の舞い』は避けるべき」などの反対・慎重意見が続出した。だが、福島党首ら中央は踏み出した。
 国民新党も合意して、同日、連立に向けた協議が始まった。
 協議は、主として安全保障問題をめぐる民主党と社民党との意見の調整で、合意がずれ込んだ。社民党が政権内でいくらかの手がかりを得たのも事実だが、「合意」は民主党マニフェスト(政権公約)の枠内のものとなった。
 確かに、民主党は社民党を必要としている。民主党は参議院では過半数に三議席足りず、五議席の社民党が不可欠だからである。
 だが衆議院では、民主党と他の二党の議席は三百八対十(社民七、国民新三)と隔絶している。その差は自民党と公明党の差以上で、しかも自公関係とは異なり、民主党には社民党の協力なしに当選できない議員はほとんどいない。社民党が独自性を発揮できる余地は限られている。

「日米同盟」を明記した「合意」
 三党間で何が合意されたか。「合意」には、国民新党の要求をいれて「郵政事業の抜本見直し」が明記されたほか、温暖化対策や子育て支援などが盛り込まれた。併せて、政府内に党首級の協議機関を設けることとなった。
 外交・安全保障問題では、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」との文言が盛り込まれた。
 インド洋での海上自衛隊による給油活動については、鳩山代表が選挙中に述べてきた、来年一月以降は活動を延長しないという趣旨は明記されなかった。社民党も「即時撤退」を取り下げた。ソマリア沖での海上自衛隊による「海賊」対処活動と在日米軍に対する日本側負担(思いやり予算)については、まったく言及されていない。対朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)外交もふれられず、民主党は不当な制裁を延長する方針である。
 一方、「緊密で対等な日米同盟関係」と明記された。「テロの温床を除去する」と、米主導の「反テロ」陣営に引き続き加わることも宣言された。鳩山は九月三日、オバマ大統領に「日米同盟が基軸」と表明し、早くも忠誠を誓っている。
 民主党は「合意」をマニフェストの枠内に抑え込んだものの、フリーハンドとしたかった外交政策に、一定の縛りを受けることになった。社民党からすれば、そこに「活路」を見いだしたいところであろう。だが、それは「細い糸」である。
 「合意」は対米従属政治を変更するものではなく、本質上は「社民党への譲歩」ではない。

難問山積の内外環境
 鳩山新政権がどんな政策を掲げたとしても、実現できるかどうかは、内外の環境に大きく規定される。
 新政権が「同盟」の相手とする米国は、歴史的衰退のただ中にある。
 アフガニスタン情勢は、旧政権勢力・タリバンの反攻が強まり、「オバマのベトナム」になりつつある。朝鮮やイランの核問題も難問だ。
 経済も深刻で、失業率は一〇%に近づいている。財政赤字は膨らみ、中国の米国債購入に頼らざるを得ない。医療保険改革をめぐっても、オバマ政権は批判にさらされている。発足直後には七割以上に達した支持率は急降下、五割を切った。
 米国にとって、日本がインド洋での給油活動から撤収するなら、アフガン現地への派兵など別の「貢献」が必要となる。日米地位協定の改定などには応じない姿勢だ。オバマ政権には余裕がないのである。
 わが国の内政面での危機も深い。
 多国籍大企業は新興国の需要と政府による支援策で業績の回復を見せているが、持続できる保証はない。他方、中小零細企業の倒産は増加し、雇用問題はますます深刻だ。
 国・地方の赤字は先進国中最悪だで、「財政再建」は待ったなしとなっている。
 だから、わが国財界はマスコミを使って「『君子豹変(ひょうへん)』せよ」(日経新聞)などと、民主党に「公約破り」をけしかけている。新政権は、この一握りの多国籍大企業中心の経済の上に成立している。本質上、その意向に逆らうことはできない。


連立与党は深刻なジレンマに直面
 鳩山新政権の「安定」は保証されておらず、取り得る選択肢はきわめて少ない。「四年間は行わない」とする消費税増税にも、早晩、手を付けざるを得ないだろう。他の公約の限界も明らかである。それは、自公政権を崩壊に追い込んだ国民の怒りが、民主党に向くことを意味する。
 一方、政権入りに喜ぶ社民党も、ジレンマは日とともに深くなる。社民党からすれば、連立を来年夏の参議院選挙までの「期限付き」とさせず、かつ生き残るためには、「存在感」を発揮する以外にない。だが、社民党が海外派兵問題などで「存在感」を高めれば、政権自身が揺らぎかねない。社民党にはその覚悟はあるか。
 いずれにしろ、社民党が新政権を支えることは、対米従属政治に手を貸し、労働者、国民を裏切ることである。旧社会党は細川政権において、「政権維持のため」としてコメ自由化を容認したが、今度は党の存亡にもかかわろう。
 与党間でも、矛盾の激化が避けがたい。「合意」で「日米地位協定」などが明文化されたことに対し、早くも、民主党内で不満が高まっている。政策決定の「内閣への一元化」を掲げる民主党は、今後ことあるごとに、「社民党はずし」をちらつかせてけん制を強めよう。
 それでも、当面、民主党は社民党を連立に抱えておかざるを得ない。参議院対策もあるが、支配層には、社民党を取り込んで労働組合を無力化させ、保守二大政党制の一方を支える基盤にするという戦略的狙いがある。民主党幹事長に就任するとされる小沢は、それを熟知している。
 連立政権は、正式発足を待たずして深刻なジレンマに当面しており、前途多難である。
 以降の推移は、何より、労働者・労働組合の闘いにかかっている。新政権への幻想を捨て、インド洋やソマリア沖への派兵を許さず、米軍再編を挫折させるため闘うことが肝心である。併せて、生活と営業の危機にある国民諸階層の要求を支持し、対米従属を打破する広範な戦線の指導勢力として闘うことこそ、真の展望ある道である。

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