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2009年9月5日号 2面・社説 

第45回衆院選挙の結果について

 第四十五回衆議院選挙の結果、自民党は下野し、民主党中心の政権が九月十六日にも発足することとなった。
 財界は、極限に達していた国民の政治・政党不信がとりあえず「解消」され、一定の「安定」を取り戻すと安堵(あんど)しているようだが、日米関係を含めた民主党政権への戸惑いや不安も隠せない。マスコミは、民主党に「君子豹変(ひょうへん)」を盛んに呼びかけている。
 辛うじて議席を維持した社民党は、全国代表者会議で「連立参加」を決定、国民新党とともに連立政権協議に入った。
 新政権がどう組閣されようが、崩壊した麻生政権と同じ危機的な内外環境の下で成立するのであって、条件から見ても国民の期待に応えるのは容易ではない。
 民主党政権の暴露は急速に進み、議会政治のさらなる不安定化、あるいは議会外の大衆行動が避け難くなる、そんな情勢を予測させる。
 国民苦難の根源は多国籍大企業のための対米従属政治にある。この政治を根本的に転換するため、われわれは労働運動の前進を促し、議会政治にも対処しながら、広範な国民各層の連携、保守層を含む壮大な統一戦線を形成し奮闘する。

悪政への怒りは極限に
 悪政を続けた自公両党は大敗、民主党が大躍進し、自公と民主の関係は四年前とちょうど逆の選挙結果となった。二〇〇五年「自民党をぶっ壊す」と絶叫した小泉首相(当時)が国民の悪政への怒りを引きつけ、大勝した。マスコミの誘導・協力の下、自民党総裁が自党の悪口で有権者をダマすという、まったくの欺まん選挙であった。民主党は「政権交代」を掲げたが争点にできず、敗退した。
 今回は大都市部を中心に、多くの無党派層だけでなく、他党の支持者すら、民主党支持へと大きく動いた。また地方でも、支持団体や保守層の「自民離れ」が目立った。悪政を続けた自民党とそれを支えた公明党は、政権の座から追われた。
 国民各層の経済的生存条件の悪化に伴って不満は急速に増大し、政権政党である自民党の衰退はすう勢であった。一九八〇年代半ばから、農業者や中小商工業者などの伝統的な保守基盤が動揺して「自民離れ」が進み、ついに九三年に単独政権を失った。その後も連立政権の中心だった自民党への批判は高まった。
 〇一年の小泉政権は、自民党への批判が頂点に達していた中だからこそ誕生した。しかも多国籍大企業のための構造改革政治は、農民や商工業者など自民党支持層の不満をいちだんと高めた。自民党への批判は「自民党をぶっ壊す」という小泉の欺まんにまんまと引きつけられた。
 さらにいちだんと危機は深まり、人びとの生活と意識は以前と異なった状況となった。〇七年夏以来の世界的危機、とくに昨年九月のリーマン・ブラザーズの破たん以後、自動車を先頭とする大企業による生産縮小と派遣切り、それに続く正社員への解雇攻撃は、深刻な打撃を中小企業・地域経済と労働者、国民各層に与え、人びとの困窮と不満は極限となっている。諸階級の状況、その相互関係は急激に変化し、現状打破なしに生きていけない労働者と各層の「下層」が急増、切実に変化を求めている。対米従属への怒りも広範な国民に高まっている。
 現状打破を望む気運が急速に広がっていることは、最近の一連の首長選や都議選結果にも示されていたが、今回の選挙結果にも決定的にあらわれた。
 国民は今回、悪政への怒りを民主党に賭けた。民主党は受け止めることに成功した。しかし、これが小泉同様の欺まんでないという保証はない。支持政党を失い、見つけきれずに、選挙のたびに変化を求めて移動する有権者が激増し、振幅も大きくなっている。そうした中での今回の民主党圧勝という現象である。

矛盾深まる保守二大政党制の策略
 財界は、一九九〇年前後から「民間政治臨調」(現在の「二十一世紀臨調」)を連合中央幹部などとともに組織して「二大政党制」を戦略的に追求し、マスコミを使った「管理」選挙などで誘導してきた。
 財界は、現状打破を求める気運が国民諸階層の中に急速に広がる中で、激変する世界に迅速に対処できる「安定」した政治の実現を緊急課題とした。マスコミは「政権選択選挙」を大々的にキャンペーンした。
 民主党はこれに呼応して「政権交代」を掲げ、四年前の小泉と同様に反自民の国民世論を引きつけることに成功した。
 政治不信はとりあえず民主党に吸収され、財界が恐れた「政党政治の崩壊」は何とか免れ、二大政党制は前進したかにも見える。だが財界の狙い通りに、二大政党制による議会政治の「安定」は容易でない。それを否定する傾向もまた進む。二大政党的に大きく近づいた〇七年参院選は「衆参ねじれ」をもたらし、財界にとって高くつくものになった。
 民主党の政策軸、とりわけ日米関係と安全保障・外交政策をめぐって党内に「幅」があり、激変の世界政治にどう対処するか、財界にとっては新たな不安そのものである。また、保守政党としての自民党の「再生」も容易でない。
 民主党は「比例定数の八十削減」を公約している。二大政党制の完成・定着を狙ってのものだが、これで国民の高まる不安と政治不信を吸収できる保証はない。「二十一世紀臨調」は九月三日に「緊急提言」を発表、振れ幅が大きすぎ政治が安定しないと、「緩和効果」として比例定数を削減することに「慎重」対応を求めた。激変緩和措置は小政党が存続する余地を高め、二大政党制確立は遠のくことになる。
 米英の経験でも、二大政党制は「豊かな社会」の上にこそ成り立つ。しかし、いまわが国はその条件にほとんど欠ける情勢となった。それほど危機は深い。
 また、対米従属の限界も明らかである。国の進路は、ますます公然たる議論となろう。
 二大政党制はほとんど「闇の中」で、支配層は政治の不安定化に苦しむことになろう。

新政権は期待に応えられるか
 鳩山は選挙で「格差是正」や「生活第一」を掲げ、子育て支援、農家への戸別所得補償などの「生活支援」を約束した。生活に窮した有権者は、いくらか期待もしている。新政権側は連立政権となるだろうし、連合も有力な支持基盤である。しかも来夏に参議院選挙を控え、すべて裏切るわけにもいかないだろう。
 だが鳩山政権も、麻生自公政権と同じ社会基盤、そこに内在する矛盾、難問に直面し、条件づけられる。一握りの金融資本とそれに連なる大企業中心の経済、その危機、そこからの税収と財政赤字、さらに国民生活の危機と貧富の格差拡大、現状打破を望む「下層」が急増し社会矛盾が激化した「同じ日本」を引き継ぎ、そこで政治を行うことになる。国際環境も同様である。
 鳩山政権であろうが、財界、大企業の協力なしに政権が運営できないことは周知のことである。
 新政権は、国民とのわずかな約束すらどこまでできるのか。限界は自ずと明らかである。だから民主党は、選挙に際して政権が近づくにしたがって、日米関係はじめ内外政策を財界の主張にそって「調整」したのである。
 問題はそれにとどまらない。開票翌日の各紙社説は「豹変の勇気をもつことだ」(朝日新聞)などと、いっせいに「政権公約の見直し」を民主党に迫った。「マニフェスト(政権公約)選挙」などとあおっておきながら、公約破りを主張するとは、デタラメのきわみである。
 財界は、日米関係が気がかりだし、「財政再建」、消費税増税と自分たちのための法人税減税などを民主党に迫っている。まだ十分なパイプがないことも、不安の背景であろう。米国も迫っている。財界、米国と無数の糸で結ばれた、官僚たちも距離を測っている。
 鳩山側も、財界・大企業、その手先・官僚の協力なしに政権が運営できないことは承知しているが、どこまで譲歩できるか測ってもいる。鳩山はさっそく、連合執行委員会で消費税増税への理解を求めた。オバマには「日米同盟堅持」を約束した。
 どのような政権として発足するか、具体的には待たなくてはならないが、とても四年も保たないだろう。有権者へのわずかな約束すら守られる保証はまったくない。
 それでも確かなことは、鳩山や幹事長就任が決まった小沢以下、ほとんどの民主党幹部は元自民党、それも「保守本流」と言われた竹下派の幹部だったことである。自民党を離れた後も、一貫して財界の戦略に呼応し策動してきた連中である。
 民主党の基本は財界の党であり、二大政党制戦略に沿った、自民党の「別働隊」のような政党である。このことは忘れてはならない。
 こうした民主党の勝利のために、連合中央指導部は組合員を真夏の選挙に駆り立てた。「永年の悲願であった政権交代が実現した」(高木会長)などというが、財界のための政党である民主党中心の政権を支えるのは、企業内での「労使協調」を社会、政治にまで推し広げるようなものである。連合中央指導部は、今後ますます公然と組合員を裏切るか、瀬戸際に立たされる。
 社民党は連立政権参加の方向である。「豹変」は鳩山だけではない。福島党首も、あれほど強調しマニフェストにも明記していた「インド洋での給油中止」も「非核三原則法制化」も、あっさり棚上げするようである。これは多くの党員と支持者への裏切りである。
 共産党は「建設的野党」などというが、民主党政権への幻想をあおり、財界のための政治、また二大政党制策動を客観的に助ける点で、国民大多数にはまったく有害である。


あくまでも国民生活の現実を基礎に闘う
 失業率が戦後最高の五・七%となり、さらに悪化する見通しであるなど、労働者と国民各層の苦難はいちだんと深刻化している。もはや闘う以外にない。
 有権者は民主党に期待したのではなく、自公を拒否したのであり、支持した有権者の多くすらも民主党には幻想を持っていない。それは、世論調査にもあらわれていた。
 国民はもっと厳しく見つめている。「政権選択」の幻想がさんざんあおられたが、投票率は前回比でわずか一・七ポイント上昇したにすぎない。有権者の三割、民主党支持よりも多い、実に三千万人余の人びとが「棄権」を選択した。
 もちろん、棄権者の中にはまったくの「無関心層」もいるだろうが、多くは最後まで期待を託す候補者・政党を見つけられなかったのである。今夜の寝場所、明日のメシにも窮する労働者が、お祭り騒ぎの選挙戦、議会制民主主義に背を向けたとして、それを誰が責められようか。
 戦後、二十四回も衆議院総選挙が行われ、労働者はそのたびに「政権交代」のかけ声の下、選挙戦に動員されてきた。しかし、何一つ変わらなかった。今回、政権は変わったが、民主党政権が生活の危機からくる労働者と国民各層の政治不信、現状打破の要求に応えなければどうなるか。
 選挙闘争の役割と限界について、ハッキリ言うべき時期に来たようである。もちろん、選挙闘争と議会での闘いを無視しないが、歴史の経験から見てもそこには真の展望はない。労働組合と各界の心ある人びとは、もうこの問題をきちんとすべきではないか。
 やはり労働者には、ストライキ闘争がいちばんふさわしい。国民各層とともに進める強力な国民運動こそ、政治を揺さぶり転換させる力である。
 わが国の将来は、そうした労働運動の前進にかかっている。そのためには、敵に対抗する戦略展望を持った労働者階級の党が力強く登場しなくてはならない。真の活路を切り開くため、先進的な労働者に日本労働党への参加を呼びかける!
 労働運動が中心となって農民や商工業者など危機に苦しむ国民諸階層の要求を支持しともに闘い、対米従属打破の壮大な戦線を形成してこそ展望である。

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