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2009年8月25日号 2面・社説 

民主党の「政権交代」では
政治は変わらない


労働者は自らの力による
闘いを準備しよう

 第四十五回衆議院選挙が八月三十日、投開票を迎える。残暑の中、連日奮闘する皆さんには、誠にご苦労様と申し上げたい。
 総選挙の公示に際し、財界は「『政権選択』であることを自覚すべき」(桜井・経済同友会代表幹事)などと叫んでいる。この意を受けたマスコミは、自民党、民主党という二大政党の「対決」を騒ぎ、民主党の「政権交代」への期待感をあおっている。
 こんにち、国民諸階層の生活と営業は未曾有(みぞう)の危機にある。政治の喫緊の課題は、国民の苦難の根源であり、歴代政権が続けた、多国籍大企業のための対米従属政治から脱却することである。
 各種世論調査によれば、民主党が「圧勝」する勢いで、「政権交代」は確実な情勢である。ところが、対米従属政治の問題は論争にさえなっていない。それは、自民、民主の両党が、対米追随と多国籍大企業のための政治でまったく同じ立場だからである。また、共産党が堕落し無力だからであり、社民党中央に戦略がない結果でもある。
 さらに言えば、選挙、議会制度とはそもそもそうしたものである。まさに、総選挙は茶番劇である。民主党主導となるであろう「新政権」にも期待はできない。
 労働者を中心とする力強い大衆行動こそが、政治を変えられる。労働者・労働組合は目前の選挙に熱中するのではなく、労働者の党を強め、闘いの準備を進めるべきである。

対米従属では世界に対応できない
 政府は、選挙中なので「実績」をアピールする狙いから、四〜六月期の国内総生産(GDP)が〇・九%成長となったことをもって「持ち直し」などと言う。
 確かに、自動車・電機の多国籍大企業は、労働者への犠牲とエコカー減税、エコポイントなどで一息ついている。〇・九%の成長は、このような政府の支援と公共事業、アジアでの需要によるところが大きい。だが、支援策は今後も継続できるあてはない。一方で、GDPの六割以上を占める個人消費は低調で、景気の先行きを占う指標といわれる設備投資は、引き続きマイナスである。
 何より、わが国多国籍大企業にとって利益の最大の源泉であった、米国の過剰消費は崩壊したままで、回復のメドが立たない。米国では中小金融機関の倒産が相次ぎ、不良債権処理もままならない。家計は膨大な債務を抱え、失業率も一〇%突破が確実で、GDPの七割以上を占める個人消費は冷え込んだままである。ドル不安もくすぶっている。
 米国に代わる市場としてあてにされている中国も、輸出不振による沿岸部への打撃は深刻で、政府の対策で成長を持続できる保証はない。
 他方、各国中央銀行による金融緩和は、これまで以上の「カネ余り」を生み、「新たなバブル」さえ言われる不安定な状況となっている。
 政府の「持ち直し」発言は、大多数の国民にとっては実感がないどころか、デタラメなものである。
 こうした中、中国など新興国、そしてアジア市場をめぐる争奪がかつてなく激化している。これは、わが国労働者が新興国やアジアの労働者と、賃金や労働条件をめぐって「争わされる」ことを意味する。
 野党には、この問題への暴露や打開策がまったくない。

国民を危機に陥れた対米従属政治
 政府は、危機を口実に多国籍大企業や大銀行を手厚く保護し、国際競争力を高める手助けをしている。
 反面、国民諸階層には多大な犠牲が押しつけられている。政府統計によってさえ三百五十万人近い労働者が失業し、失業率は五・四%と最悪時に接近、有効求人倍率は過去最悪だ。さらに、大企業は六百万人以上の労働者を「社内失業」と見なし、首切りの機会をうかがっている。
 中小商工業者の倒産も、親会社からの犠牲に加え、大銀行の「貸し渋り」「貸しはがし」で増大した。農民は、売国農政による市場開放の犠牲を受け続け、こんにちでは日米自由貿易協定(FTA)締結策動にさらされている。これは国の独立の上でも大問題である。燃料費高騰も、農漁民をはじめ国民諸階層に大打撃を与えた。地方経済は、著しく疲弊(ひへい)している。
 これらのむごい現状は、対米従属で多国籍大企業のための政治の責任である。この政治を打ち破ることなしに、国民諸階層の生活と営業は打開できない。当面して、中国を含むアジア諸国との平等互恵の関係を前提に、アジア規模での内需を大幅に高め、ドルに揺さぶられない経済社会をめざす以外に活路はない。

米戦略補完する売国政権
 外交・安全保障の面でも、対米従属政治の限界は明らかである。
 自公政権は、米国の世界戦略に付き従い、海上自衛隊によるインド洋での補給活動、無法なイラク占領を支える自衛隊派兵、さらには、アフリカ・ソマリア沖への自衛隊派兵に踏み込んだ。米軍再編によって、沖縄をはじめ横須賀、岩国など、全国が米軍の出撃拠点化されつつある。
 「核」や拉致問題を口実に、朝鮮民主主義共和国(朝鮮)に対する敵視があおられ、制裁措置は強化された。朝鮮、さらには中国に身構える形で、集団的自衛権の行使容認や武器輸出三原則の緩和、「敵基地攻撃」論、核武装論などが強まっている。アジアで生きていく以外にないわが国にとって、孤立の道である。
 日米安保条約を破棄し、在日米軍基地を撤去させ、自衛隊の海外派兵をやめるべきである。朝鮮との即時無条件の国交正常化をはじめ、過去の侵略に対する謝罪と保障などで、アジア諸国との友好関係を実現しなければならない。
 経済、国民生活の面からも、外交、安全保障の面からも、わが国が進むべきは、独立・自主、アジアと共生する国の進路なのである。


自民、民主は日米基軸で同じ立場
 対米従属政治の限界がいっそう明らかになっているにもかかわらず、自民、民主の両党は時代遅れの「日米基軸」で一致している。
 とくに民主党は、財界の意を最大限にくんで、インド洋での給油活動の「即時撤退」取り下げと、ソマリア沖派兵の継続を表明した。さらに、「マニフェスト(政権公約)」に「成長戦略」や数年後の消費税増税、道州制、公務員削減などを明記した。
 それは、自民、民主両党の飼い主であるわが国多国籍大企業がドルに依存し、対米従属政治を自らの利益としているからである。御手洗・日本経団連会長は「真剣で責任ある政策論争」などと言い、桜井も「『この国のかたち』を争点に」などと言う。さりとて、かれらには「日米基軸」以外の国の進路など思いもつかない。
 国民生活と営業の深刻な危機を打開し、外交政策を転換するためには、政治を一握りの多国籍大企業のためのものから、労働者と国民諸階層のためのものへと転換することが不可欠である。それは、民主党への「政権交代」では不可能である。


国民のエネルギーに依拠して闘おう
 民主党主導となるであろう「新政権」に、いっさいの幻想を持つことはできない。共産党のように「建設的野党」などという態度では、民主党への幻想をあおるばかりである。
 対米従属政治に対する国民諸階層の怒りのエネルギーは、ますます高まっている。そのエネルギーに依拠し闘ってこそ、悪政を打ち破れる。
 国民運動の中核となるべき労働者が「政権交代」の茶番に惑わされず、実力による闘いを準備することこそ肝要である。そのためにも、労働者階級は自らの党を持たなければならない。
 わが党は、労働者階級の政党として自らを強めるため、いっそうの奮闘を決意している。先進的労働者は、わが党とともに、政治の根本的転換のために闘おう

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