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2009年8月5日号 2面・社説 

落ち目の米国支える
民主党の外交安保政策


アジアと敵対しては、
わが国の進路は切り開けない

 衆議院が解散され、与野党は党員や支持団体を駆り立てて、事実上の選挙戦に熱中している。マスコミも「歴史的選挙」などとあおり立て、異様なほどである。
 「政権交代」をあおる民主党だが、自公与党と政策上で本質的な差はなく、対米従属で多国籍大企業のための政治を掲げている。それは、民主党が七月二十七日に発表した「マニフェスト(政権公約)」を見ても明らかである。
 内政政策では「生活支援」というが、財界案と似たり寄ったりの「財政再建」や地方制度改革を掲げ、四年後以降の消費税増税にも道を開いている。外交・安全保障政策も自民党と同様、日米同盟を「日本外交の基盤」と明記している。
 何よりも民主党は、労働者と国民諸階層の苦難の根源であり、企業家でさえもある程度は解決を願っている、対米従属の政治、経済を転換するのではなく、擁護している。とりわけ今世紀に入ってから、米国の過剰消費を当て込んで自動車・電機など多国籍大企業だけが輸出で大もうけしたが、それもサブプライムローン問題で破たんし、わが国経済は先進国中最悪の後退となった。その犠牲は、あげて労働者など国民諸階層に押しつけられている。この責任は、歴代売国政権にある。
 民主党の政策はこの危機を打開できず、むしろ継続させるものである。財界の狙う保守二大政党制の一方の装置という、民主党の本質からすれば、当然のことではある。
 総選挙をめぐる騒動は茶番である。労働者は民主党中心の「政権交代」への幻想を捨て、現実の闘いに踏み出さなければならない。

民主党の政策は売国政治の継続
 民主党は自民党と同じく、日米同盟を「日本外交の基盤」とする。加えて、「安全保障だけでなく、経済などを含めた重層的な(日米)外交」(細野・政調副会長)などといって、自民党でさえ打ち出していない「日米自由貿易協定(FTA)の締結」を盛り込んでいる。
 日米FTAが締結されれば、貿易自由化の影響がほぼすべての農産物に及び、わが国農業は壊滅的打撃を受ける。食料の自給なくして国の独立などあり得ない。投資の自由化で、労働者の血と汗の結晶である富が、今まで以上に、米巨大資本に食い荒らされる。米国市場で勝ち抜こうとしている一握りの多国籍大企業には恩恵だが、大企業の多くでさえ許容できそうにないものだ。
 また、日米地位協定や米軍再編問題、米軍駐留経費の「思いやり予算」については、従来の要求を大きく後退させるか、言及を避けている。しかも、民主党は「米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす」という。米国が衰退を深めるこんにち、「役割を分担」とはどのような意味を持つか。マニフェストでは、ソマリア沖の「海賊」対策や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)制裁のための貨物検査の断行、国連平和維持活動(PKO)による海外派兵拡大などを打ち出した。
 どれも、アジア・世界の平和を妨げる許し難いものだが、米国からより以上の「役割」を果たすよう求められることも明白である。鳩山代表は、インド洋での補給活動の代替として、「新たな貢献策」を協議することを明言している。その他、政権が近づく中での、最近の民主党の「変ぼう」ぶりをみると、とてもこの党に期待することはできない。

「アジア重視」掲げる米オバマ政権
 対米従属政治が時代遅れのものであることは、国際情勢を見れば歴然としている。
 世界資本主義の未曾有(みぞう)の危機は、いまだ底が見えない。震源地となった米国は、有力企業が次々と国家の救済を受け、失業率は一〇%超えが確実だ。財政赤字は空前の規模に達し、中国が米国債を買わないことには回らない。新興国が国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)建て債権を引き受けるなど、「ドル離れ」は世界のすう勢である。戦後ドル体制の歴史的衰退は、決定的なものとなった。
 政治面でも、イラクに続きアフガニスタンで軍事的に追いつめられ、パキスタン情勢も不安定である。朝鮮は核兵器を手離さず、イランも干渉に屈していない。ロシアや中国などの新興国も、ときに米国への対抗を見せている。
 米国の衰退は急速である。各国間の力関係の変化は隠しようがなく、世界は特殊な多極化を進めている。
 他方、オバマ米政権は必死の巻き返し策を進めている。その柱が、比較的高い成長率を維持する中国やインドを含む、巨大なアジア市場への関与を強め、難局を乗り切ろうというものである。台頭する中国を取り込み、けん制する意図もある。
 クリントン米国務長官が、七月二十三日にタイで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議で、「米国は東南アジアに帰ってきた」などと述べたのも、こうした狙いからだ。
 オバマ政権にとって、アジアでのプレゼンスを維持するためには、一九九五年の「東アジア戦略」でも掲げた「十万人規模の米軍」が欠かせない。
 併せて、従属国である日本のさらなる負担である。ルース次期駐日大使は、日米関係を「特別な紐帯(ちゅうたい)」と述べ、対中けん制など、アジア戦略における日本の「貢献」に再度期待を表明した。
 民主党は、この米国と「役割を分担」するという。それは、さらに米国の手足の役割を果たす奴隷の道であり、アジアに敵対する道である。

対米従属ではアジアでも限界に
 民主党は「東アジア共同体」を掲げている。
 多国籍大企業をはじめとするわが国支配層も、「世界経済の成長センターであるアジアとの連携を強化する必要」(御手洗・日本経団連会長)などといい、「東アジア共同体」の実現を掲げる。米国市場の回復にメドが立たないこんにち、わが国財界にとっても、アジア市場は「希望」なのである。
 だが、対米従属の下では、その「アジア共同体」さえ容易ではない。米国は日本がアジアで独自の政策を採ることを決して許さないからである。かつては、東アジア経済協議体(EAEC)構想に強硬に反対したし、こんにちも、ASEANプラス3(日中韓)の枠組みさえ、「納得していない」というのが米国の公式な態度である。
 しかも、アジア経済との連携を進めても、通貨でドルに依存したままでは、その変動に絶えず揺さぶられる。麻生政権は真の国益に反して、世界の流れにも逆らってドルを積極的に支えたが、民主党もこの問題を避けている。
 麻生政権のように、米国の先兵としての政治軍事大国化を進め、隣国である中国や朝鮮への敵視を強めるようでは、なおさらアジアで展望は開けない。
 周知のように民主党の中には、自民党以上の朝鮮敵視はもちろん、対中国でも強硬派が多い。売国政権と同じ民主党の政策でも、アジアの中で生きていけるはずはない。


「政権交代」の幻想を一掃し闘おう
 対米従属政治の継続は、わが国の矛盾を極限にまで高め、支配層内にも亀裂を生まざるを得ない。対米従属政治を転換し、アジアの共生へと踏み出す政治が切実に求められている。民主党の「政権交代」では、これは不可能である。
 だから、「左派」の中にある「政権交代」への幻想は、早急に払拭されなければならない。とくに共産党は、「建設的野党」などといって民主党に秋波を送っている。わが国の自主的な進路を妨げる、きわめて反動的な態度である。
 労働者・労働組合は茶番と手を切り、現実の闘いを進めなければならない。対米従属政治で苦しむ国民諸階層と幅広く連携し、その組織者として闘うことが求められている。

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