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2009年7月15日号 2面・社説 

民主党政権で政治は変わらない

幻想を捨て、現実の
闘争を準備しよう

 東京都議選が七月十二日投開票された。本来、この選挙で問題になるのは石原都政の評価である。だが、総選挙が近づく中、与野党は「国政選挙並み」に力を入れた。
 その結果、自民党は前回から十議席も減らして惨敗、相対得票率は五ポイント近くも減った。とくに、長年議席を維持してきた中央区、千代田区などでのベテラン候補の敗北は、党内に大きな衝撃となっている。
 同じく与党の公明党は、前回議席数を維持した。かれらは「底力発揮」などと自賛するが、得票数・率ともに減らしている。上位当選が相次いだ前回とはうって変わった「すべり込み当選」がほとんどで、「守り」の選挙戦術が一定程度功を奏したにすぎない。
 国民の意識を十分には反映しない選挙ではあっても、麻生政権と自公与党、さらに石原都政に対して厳しい審判が下ったと言ってよい。
 これに対して、民主党は十九議席増と躍進、都議会第一党となった。約百二十万以上得票を増やし、世田谷区、練馬区の二選挙区では三議席を得た。石原都政の事実上の与党であったことにほおかぶりし、「東京から政権交代」だけを叫ぶ恥知らずな選挙戦を行ったことが、成功したように見える。
 共産党は、五議席を減らす八議席と大敗である。志位委員長らは得票数の微増を「成果」と吹聴するが、得票率は三ポイント以上減らしている。かれらは今回、十六年ぶりにすべての選挙区に候補者を擁立することをやめ、候補者数を三人も減らし「力を集中して」臨んだ。その結果が、四十四年ぶりの「一ケタ議席」で、独自の議案提出権も失った。志位らの「総括」は、党員さえも納得させられないものだ。
 候補者を二人擁立した社民党も議席獲得に至らず、大敗と言ってよい。
 このほか、最近の地方選挙においても、自公与党、あるいは民主党を含む現職に対する厳しい結果が相次いでいる。一般に「現職有利」の傾向が強い首長選挙において、これは大きな変化である。
 この現象をどう見るか。
 労働者・労働組合がこれら選挙結果から読み取るべきことは、民主党による「政権交代」に期待することではない。諸悪の根源である、対米従属政治に対する現実の闘争を準備することである。

国民の現状打開の願いが背景
 都議選の結果を受け、与野党は一気に「解散・総選挙」一色となっている。
 支持率低迷にあえぐ麻生政権はまったくの「死に体」となったが、捨て身の解散に打って出ようとしている。すでに離党した渡辺元行革担当相は「新党」を明言、鳩山前総務相らも離党含みである。
 他方、民主党は「政権交代」のトーンを上げ、これを実現すれば政治がまったく変わるかのような幻想を、これまで以上に振りまいている。
 社民党中央はこの民主党への追随を深め、選挙後の「連立政権入り」へと踏み出している。
 連合中央の幹部は民主党を全力で支え、労働者の生活難を解決することはそっちのけで、かれらを選挙運動に駆り立てている。
 だが、都議選などの結果から真に読み取るべきことは、国民が政治の現状を変えること切実に望んでいるということである。現状打開なしに、国民は生きていけないからだ。
 世界的恐慌を口実に、多国籍大企業は労働者に対する無慈悲な首切り、賃下げを強行している。ハローワークには失業者があふれ、職を得られる労働者はごくわずかである。職がある労働者にとっても「明日はわが身」だ。失業率の「五%超え」は、こうした現実の一端を示すにすぎない。中小商工業者も、大企業による単価切り下げ要求や大銀行による「貸し渋り」で経営が立ちゆかず、倒産が増加している。自殺者も増え続け、四月には初めて、一日当たり百人を突破した。まさに、国民諸階層は「生きられない」状況に突き落とされている。「やり場のない怒り」に基づく衝動的な事件が増えているのも、こうしたむごたらしい現実が背景である。
 加えて、麻生政権は多国籍大企業や大銀行には手厚い救済策を実施、このツケは、消費税増税や社会保障制度の改悪などとして国民に押しつけられる。麻生政権は、在日米軍再編や朝鮮敵視など、東北アジアの緊張を高めてもいる。
 政治の変革なしに、国民の苦難を解決することはできない。

選挙結果は民主党への支持ではない
 都議選の結果は、こうした深刻な国民生活、それをもたらした麻生政権と自公与党に対する怒りの一定の反映で、その「退場」を強く願ったものである。
 だが、これは国民が民主党に「期待している」とか、政権交代による変化を「あてにしている」ということを示すものではない。共産党が「オバマ美化」などで堕落を深め、社民党が頼れないなど、「他に選択肢がない」下での投票行動なのである。
 最近のある世論調査によれば、民主党と自民党の政策の間に「あまり違いはない」と見ている有権者は六四%と約三分の二に及ぶ。また、「民主党政権」でも日本の政治が「変わらない」とする割合は五九%で、「良くなる」(二六%)の倍以上である。
 この調査結果は驚くことではなく、現実の反映である。
 民主党は、財界が狙う保守二大政党制のための一方の装置であり、対米追随で多国籍大企業のための政治を行うという点で、自民党とまったく同じだからである。鳩山代表は、消費税増税や道州制、憲法改悪、朝鮮への制裁強化など、自民党と悪政を競うありさまだ。また、衆議院の比例区定数削減も打ち出しており、これは社民党はもちろん、共産党など小政党は排除されるものとなる。議会制民主主義さえ、いっそう空洞化する。
 この民主党主導の「政権交代」では、なおのこと、国民の苦難が解決するはずはない。民主党による「政権交代」を「よりまし」と描く人びとよりも、世論は冷静なのである。

労働者は現実の闘争を準備すべき
 歴史を振り返れば、選挙では動かすことのできなかった情勢が、ときに動いたことがある。それは、ほぼ例外なく、労働者をはじめとする大衆行動が巻き起こったときである。
 戦後直後の諸闘争はもちろん、六〇年の安保闘争は三井三池炭鉱における闘いとも結びつき、数十万人が街頭行動やストライキで闘った。この闘いは、岸政権を退陣に追い込んだ。最近では、九五年の少女暴行事件を契機とした八万五千人の県民大会など、沖縄県民の断固たる闘いが政府を追いつめた。
 「国が揺れる」のは、国会の野党議席が数議席増えたからではなく、現実の大衆行動によってである。
 世の中を変えようという意思を持つ政党、政治家であるならば、労働運動や国民運動と結びつき、国を揺さぶってこそ役割を演じられるし、選挙を闘う上でも効果がある。また、労働運動活動家は、こうした歴史に誇りと確信を持つべきで、目前の選挙に血道をあげたところで、政治を変えることはできない。
 都議選の結果からも明らかなように、国民各層の中には、政治への怒りと闘うエネルギーが満ちている。闘う側にとって、このエネルギーと結びつこうとすれば大きなチャンスなのである。都道府県庁や市役所、さらに国会などに押しかけ、包囲し、要求を突きつける闘いが求められている。
 支配層は闘争だけを恐れる。労働者・労働組合、進歩を願う人びとは選挙に期待せず、現実の闘争に立ち上がろう。

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