2008年2月25日号 2面 社説 

米軍基地一掃、在日米軍基地の
即時、全面的撤去を
要求して闘おう

地位協定見直しだけでは
問題は解決しない

 沖縄で二月十日、米海兵隊員による十四歳の女子中学生に対する暴行事件が起こった。駐留米軍による許しがたい犯罪、蛮行がまたも繰り返された。
 しかも、事態の鎮静化を図ろうとする駐日米大使や在日米軍司令官、さらに日本政府の「遺憾」「謝罪」表明、「綱紀粛正」「再発防止」の言い訳が繰り返される中で、飲酒運転や家宅侵入で逮捕される米兵が続出、ついには二十一日、フィリピン人女性を暴行したとして米陸軍兵士が米軍当局に逮捕されていた事実も発覚した。
 わが党が、すでに十二日の声明でふれた通り、米軍当局の言う「綱紀粛正」や「再発防止」などがその場しのぎの言い逃れにすぎないことが、一連の事件によってあらためて明白となった。
 当然にも、沖縄県民の怒りは頂点に達している。
 駐留米軍に蹂躙(じゅうりん)され続ける沖縄県民の悔しさ、怒りはいかばかりであろうか。この悔しさと怒りを沖縄だけに負わせてはならない。
 わが国全土で、すべての国民の課題として、諸悪の根源である米軍基地の一掃、駐留米軍の撤兵と日米安保条約破棄の旗を鮮明にさせた闘いを、沖縄と連帯して発展させなければならない。

事件の真の原因は米軍の駐留にある
 駐留米兵による凶悪な事件は、沖縄県民の一大決起につながった一九九五年の沖縄での少女暴行事件以降も、沖縄はもちろん佐世保、横須賀、さらには広島など各地で頻発し続けてきた。
 そして、今回の事態である。
 事件を起こした兵士の所属する在沖海兵隊は、「遠征軍」という名称が示す通り、アフガニスタン、イラクなど常に侵略戦争の先陣に立たされてきた。しかも、米軍再編のただ中で、沖縄を出撃拠点として全世界を戦場と想定した、移動、戦闘訓練に明け暮れている実戦部隊である。兵士にはいっそうの実戦能力、即応能力が要求され、激しい訓練が繰り返されている。戦場に投入され、殺人兵器とされる兵士の人権も踏みにじられているが、その兵士は常に死の恐怖と戦場の緊張、殺りくの記憶の中にある。
 「綱紀粛正」とか「隣人としての教育」などと言っても、この殺人部隊が平和な市民生活と共存できないことなど明らかである。
 しかも、イラクやアフガニスタンにおける米軍の捕虜虐待や市民、非戦闘員に対する数々の犯罪行為は記憶に新しい。韓国でも米兵が韓国人女子学生をれき殺し、韓国民の憤激を買った。
 帝国主義の侵略軍が、全世界で占領国の国民を支配し、蹂躙して、犯罪にまみれている事実は、古来から変わらないものである。
 繰り返される米軍犯罪の真の根源は、米国による対日支配と米軍の駐留、米軍基地の存在そのものにある。基地がある限り、米軍人による凶悪犯罪をはじめとする日本人の生命と生活、財産への脅威を根絶することができないことは明らかである。

「地位協定の見直し」にとどめてはならない
 沖縄現地では、「綱紀粛正など期待できない」「米軍と共存はできない」と、米軍基地の撤去と米軍撤退を求める声が、あらためて急速に高まっている。
 十三年前の少女暴行事件や昨年高揚した教科書改悪問題への闘いのように、県民あげての島ぐるみの闘いが広がり、県民大会の開催も準備されている。
 一方、このような中で民主党の小沢代表は、繰り返される米兵犯罪に対処するためとして、「日米地位協定を見直し、裁判手続きなどを対等の仕組みにする」と記者会見で述べ、地位協定改定を政策上の焦点とする方針を示した。民主党はこの課題で国民新党と協議し、社民党など他の野党にも共闘を働きかけている。
 しかし、これは全国的な闘いを発展させる上で、警戒すべき動向である。
 言うまでもなく日米地位協定は、日米安保時条約によってわが国に駐留する米軍の法的地位を定めたもので、日本の司法当局は犯罪を犯した米兵が基地内に逃げ込めば逮捕することもできず、日本側が起訴するまで容疑者の身柄も米軍から引き渡されない。その他の内容でも、米軍の治外法権を認めた本質的に不平等なものである。
 しかし、今回の事件では容疑者の米兵は基地外で日本の警察に緊急逮捕され、身柄は拘束されている。米軍当局は、地位協定の「運用の改善」で日本側の捜査と裁判に全面協力することを早々と表明、沖縄と全国の反米闘争の拡大を抑え込もうと画策している。
 しかも、どのように地位協定を改定しようとも米軍の駐留が続き、米軍基地がある限り、米軍犯罪のもとを絶つことはできない。
 日米同盟堅持、優先を外交政策の基本とする民主党は、この本質問題をあいまいにし、高揚する国民的な反米意識、米軍基地撤去、在日米軍撤退を求める国民運動の発展を、地位協定の改定という狭い要求の範囲に押しとどめようとしているのである。
 事実、鳩山幹事長は「日米同盟をうたうのであれば真の意味で日米が対等の立場に立てるよう、日米地位協定の改定が不可欠だ」と、あくまで日米同盟維持と安保条約の円滑な運営のために、地位協定改定が必要だと強調した。十三日に提出された民主党の駐日米大使宛要請書は、「基地問題の解決には、国民の信頼が不可欠」と言い、「それなしでは日米同盟の将来にも悪影響を及ぼす」、米兵犯罪続発が「在日米軍への不信感を増すことを憂慮する」と、沖縄県民の願いとはまったく裏腹に、米国の対日支配の危機を「憂慮」した。これはまぎれもなく、対米追随の売国奴の言葉である。

反米闘争と連帯し、米軍基地一掃のため闘おう
 イラク侵略戦争と中東支配で泥沼にはまった米帝国主義は、世界政治での指導力を急速に失い、衰退を速めている。サブプライムローン問題に端を発した世界的金融の動揺は、戦後の基軸通貨、ドル体制の終えんの始まりを意味し、米経済の危機をいっそう深いものとしている。
 世界はまさに劇的な変動期を迎えている。
 世界の多極化が全面的となる中、弱小諸国や民族、人民の自由、独立、尊厳をかけた反米、反帝国主義の闘いが、いよいよ燃え盛っている。まさに米国の危機は深刻で、これと闘おうとする者にとっては、歴史的好機が到来している。
 このような時代に、わが国をこの落ち目の米国のための世界規模での出撃拠点とする米軍再編と日米の軍事一体化は、まさに時代錯誤で亡国の選択と言わねばならない。とりわけ沖縄を永久基地化する日米政府の狙いを挫折させなければならない。
 九五年の少女暴行事件は、島ぐるみの闘いとして、復帰以来最大の闘争へと発展し、沖縄の基地負担軽減や米軍基地の整理、縮小に向けて、日米両国政府を大きく追い詰めた。
 当時、自民党幹部が「安全保障問題についての議論もする必要がなくなった」とまで言いきった国会状況やマスコミの世論操作を打ち破ったのは、まさに県民の直接の行動とそれに呼応した本土での闘いの発展であった。
 このような国民的な運動こそが真の力であることを想起しなければならない。
 全国の米軍基地周辺自治体や住民、地方議員、平和団体など、こんにちでもすでに沖縄に呼応する闘いが、全国で始まっている。なにより、労働者、労働組合の力こそ重要である。
 沖縄の闘いを孤立させず、米軍一掃、基地の撤去で世論を結集し、発展させなければならない。そして、諸悪の根源である日米安保条約の破棄をめざさなければならない。
 全世界の反米、反帝国主義の闘いと連帯した、巨大な闘いのうねりをつくり出そう。


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