20020125

労働党旗開き 壮大な闘いへ意気高く

情勢は求める 国の進路の転換

大隈鉄二議長が講演


(3)わが国の進路と闘い さまざまな議論

 わが国の進路について、最後に申し上げたいと思います。それにはさまざまな議論があるんですが、どういう展望があるかについて触れたものはありません。
 前に紹介したように「米国にある程度距離を置き」ながら、「情報の武装化」や「ある程度の軍事力がなければならん」というようなことはありますが、さりとて「これでやっていける」という道は示されていないように思います。
 中曽根も、『日本の国家戦略』を書いたり、後見人のような顔をしておりますが、にもかかわらず、彼とて明確ではない。したがって「まず憲法を変えたい、教育を変えたい」などということにしているようです。
 それで奇異に感じますが、ウォルフレンの「日本は植民地だ。せっせと黒字を米国に貢いでいるではないか」という文章を長々とその本の中に引用しているんですね。「こういう人もある」といって、それ以上書いてないですね。つまり彼らも知っているんです。
 石原慎太郎は、出す本、出す本に「日本は植民地だ」と書いてますよ。ところが9月、テロ事件の前日、米国で演説し、「日本にもう少し武装を許したらどうだ」といって、中国の悪口をさんざんいってですね。また、正月の読売新聞とのインタビューでは、「もはや米国はガリバーである。世界のどの国も米国に対抗できない」。そして「日本の政治家は、国家存亡の危機なのに誰も国家ということがもう頭の中にないんだ。日本の政治家はもう政治家ではない」と国士ぶってるんですね。ところが、読売の記者が「あなたはどういう国家像を望みますか」と聞くと、石原はそれ以上説明しない。モヤモヤと、言わない、言えない。
 「植民地だ」というのなら、どうやって逃れるかという話でなければならない。つまり、戦後の自民党政治の下で、対米従属政治の下で、取り返しのつかないところまで来て、彼らがこの危機を救うことはもはやできなくなっているんですね。
 97年から98年にかけて、自民党の野中広務さんが盛んに、「米国は帝国主義みたいだ。せっせとアジアを日本が開拓したのに、次から次と企業を奪い取っているではないか」と言っていた。その後も、さんざんいっていますよ。にもかかわらず、逃れる道は提起されない。

国家意思としての自主独立の道を選択すること

 私は、これは結局、国家意思として独立の道の選択以外にないわけですね。そしてこの問題は選択する、しないの問題ではなくて、やがて国民経済の危機の中で、日本人がこの国で生きていこうとすると、「選択」ではなくて、余儀なくされる時代が来る。時代というのはあまりに漠然としていますが、余儀なくされる時期がやがて来ると思います。
 生産の空洞化その他で、労働者、中小業者などは生きる道がないんです。そしてその結果、ちょうど米帝国主義が世界の不安定要因に対して、ますます経済政策とか景気とか外交には頼れなくなって、軍事力に依存して世界秩序を維持しているのと同じように、わが国の政府が、国民経済を守らないとすれば、闘いが起こり、国家権力をめぐって、いわばグローバリズム下の売国政府や政治勢力と、国民経済を守ろうとする勢力との、国家権力をめぐるすさまじい闘争は避け難くなると思います。
 これは理の必然でしょう。いま、だれかがやるとか、やらないとかという問題ではない。やらざるを得ない。客観的に余儀なくされる時期が来る、そう遠くはないというのが私どもの見解です。
 国民が立ち上がった時に、政治家がそれにこたえる必要がある。こたえなければ、それは国民の支持をなくすということだと思います。

アジアとの共生が不可欠である

 またこれは、アジアとの共生が不可欠です。EUの諸国では、欧州1国、1国では生きていけないのでユーロが登場した。あれは、戦争の経験も前提にしていますが、もう1つは、ドル体制の崩壊から欧州あるいは各国を守ろうとしているんですね。あそこに「万里の長城」を築いたんですね。だから、米国発の津波が直接、小国の1つ1つには押し寄せない。欧州の多くが加盟する大事業ですね。
 しかし、日本はどうやって国民経済を守るんですか。ユーロのようなものはない。アジアと何らかの連携なしにはやっていけない。例えば、経済1つとっても、日本の膨大な生産力、資金を、比較的早い時期、アジアに振り向けるならば、たちどころにアジアは歓迎すると思うんです。この問題を真剣に考えなければと思うんですね。
 しかし、米国は反対する。例えばマハティールは東アジア経済協議体(EAEC)構想をやったけれども、米国は素早く反対した。通貨危機の時に、アジア通貨基金構想は日本が企画したんですが、米国からたちどころに「米国を排除するのか」とやられた。
 今小泉が東南アジアを回っていましてね、一つはシンガポールと自由貿易協定は調印しましたが、アジアの方向についても話が進んでいるんですね。進んでいるんですが、今度はすごく中国を意識しているんですね。
 アジア基金構想の時は、中国が米国に気兼ねしたようですが、状況はすっかり変わっています。アジアとの共生をやるなら日本は確固とした自国の意思を持つべきですね。小泉は回りながら、自由貿易構想を打診しているようですが、これとても米国を加えるという、つまり米国が納得しないと日本のアジア外交もままならない。
 こういう及び腰では、どうにもならない。米国は自分のシステムがその地域で完全に機能しなければ、それを許すはずがない。

全国民的議論と団結、国民運動がなければならない

 しかし、私は国民経済を守ることが余儀なくされる時期が来ると。その闘いのためには結局、国民の世論の高揚ですね、国民運動がなければ、国内の反対する支配層、有力な勢力がおり、動揺する部分があるわけですから、労働者階級の大多数が立ち上がる、そういう強力な国民運動がなければ、日本がこの苦難から逃れる道はないと思うんです。私たち労働党は、そのために闘う。
 もちろん、世界の状況、資本主義の全体的な発展から見れば、社会主義は成熟しきっている。しかし、危機が具体的に現れる状況を考えますと、まず国民経済を守るのか、守らないのかとか(戦争問題も排除できないが)での、わが国の熾烈(しれつ)な政争、反政府の国民的な闘いとして、始まると思います。
 そういう意味では、多くの企業家たち、排除されグローバリズムについていけない人たちの、共同の闘いになる。目標は、国民経済を守る政権の樹立、いわば、国民政府の樹立だと私は思います。

(4)労働党がめざすもの

 労働組合の皆さん。もう定期昇給停止も、賃下げまでいわれる。まあ、今のところ、連合傘下の労働組合では、目の前のことはほぼ太刀打ちできない。また、企業家も生きていけない状態ですから、「闘争するなら、俺は外国に出ていくよ」と言われたらおしまい。そんな気にもなる。
 だから今日、明日、少しばかりの妥協とか何とか、それは構わない。あまり昨日まで闘わんじゃったのだから、今日から革命家になれとは、われわれは言わない(笑い)。にもかかわらずですね、情勢はそういう世界的状況、日本の状況も皆さん知っての通り、そういうことになっておりますので、このことを確固としてつかんで、そしてそれに備えるという、心の準備がなければならない。そのことを指導的な労働者の皆さんに訴えたい。
 それから、心ある政治家や官僚や知識人にも訴えたい。官僚の手助けも必要だと思うんですね。実際を知っていますから。国民多数の信頼を取り戻すまたとないチャンスでしょう。
 そういうわけで、わが党は今いったような情勢をふまえて、国民運動の組織者になって闘うこと、国民生活と主権のために闘うということを今一度表明したいと思います。
 全党の同志の皆さんにも、そういう方向で中央と団結して、進もうではないかと呼びかけたいと思います。
 大変ありがとうございました。