20010115

闘う決意あふれる2001年旗開き

「安保破棄アジアの共生へ」国民的闘いを

日本労働党中央委員会副議長 山本 正治


とるべき安全保障・外交政策について

 もう道を切り替える時だ、というのがこの問題の結論でございます。
 もう一つ、安全保障の問題について触れてみたいと思います。と、いうのは「そんなことをすると、日米関係が切れたら安全保障はどうなんだ」と、そういう声があり、ここにお集まりの皆さんはそういうことには惑わされないわけでありますが、たくさんの世論を相手にしようとするとこの問題は非常に重要なことです。
 そして、この点、安全保障の問題は、戦後ずうっと日本の左翼にとっては弱点でありました。率直に申し上げます。もちろん、かつての戦争、日本がアジアに加えたさまざまな犯罪行為、こうしたことに対する深い反省、あるいは広島や長崎の原爆問題、こうしたことが日本人の心を深くとらえて、絶対の平和、非武装中立の理念、こういうものにひかれたのは当然で根拠があったと思うんです。
 しかしこれは自民党の文書にも出てまいりますが、そのおかげて自分たちは広く国民の世論を保守の側に引きつけることができたんだと。一時期は確かに非武装中立や反戦平和の思想は革新陣営に役立ったかもしれないけれども、それ以降はむしろ自分たち自民党の長期支配に役立ったとの総括が、自民党の文書に出てまいります。そんな意味でもこの問題、考えておく必要があると思うんです。
 安全保障というのは、本来リアルな問題です。国民の生命とか財産を守る、あるいは領海とか領土を守る、保全する。まあ、もう少し広げたとして、経済が繁栄するそういう諸環境を整える、とかいうようなことだと思うんです。リアルに考えるとそれ以上のことはないと思うんです。
 普通いわれる問題は、例えば朝鮮半島の問題とか、台湾海峡とか、あるいは最近は中国の圧力が強まっているということをあげる人がおります。そのほかに北方領土とかあるいは竹島、尖閣列島、こういう領土問題が存在しております。それから人によっては、日本の石油を確保するためには、シーレーンを一千カイリほど、マラッカ海峡までは防衛しなければという人も中にはおるようです。それから、核の傘に守られていないと不安だという方も中にはおります。まあ、大体、安全保障といわれる問題はそんなことだと思います。少しこの問題を考えてみたいと思うんです。
 まず朝鮮の問題、これは幸いにというか、昨年大きな進展がございました。少なくとも南北朝鮮の間では、朝鮮戦争以来の歴史的な和解で事態が進んだわけでございます。ですが、私どもはこれにそう楽観はしておりません。できない根拠がございます。それは米国が、朝鮮民主主義人民共和国が自主的な国の生き方をする、違ったふうに申し上げれば米国の覇権に、この地域での覇権に抵抗するような政策をとり続ける限りは、これを押しつぶして米国に抵抗しない国、まあ日本のような国ということでございましょうか、こういう国に変わるまでは、攻撃はやめないと。これは辞めようとしておるクリントン大統領にしても、これからのブッシュ大統領にしても米国の戦略的な意思でしょう。米国の文書、読んでみればそう書いていますよ。おとなしくしておれば援助をやると。おとなしくしないんだったらいつでもつぶすぞと。武力を使うぞと。
 ですから、この方向を日本が支持して、米国と共に歩む限りは、朝鮮半島の情勢は、日本の安全保障にとっては良い環境にはなりません。米国の対朝鮮政策と手を切れば事態は変わります。簡単なことではないでしょうか。
 それから中国の問題。中国が経済大国になって興隆している。これは誰も否定し得ない事実だと思いますが、米国人は経済大国は必ず軍事大国になると信じております。自分がそうだからでしょう。そして、米国人はこうも言っております。自分たちはかつての第二次世界大戦で大変な犠牲を払って日本とドイツをやっつけた。ようやく世界の覇権国、超大国になったと思ったら、ソ連が出てきて、これをやっつけるのにまた大変な五十年もかかったと。
 そしていま、中国を「二十一世紀のソ連」にしてはならない、米国人はそう言っています。「二十一世紀のソ連にしてはならない」と。要するに、せっかく日独をつぶし、ソ連をつぶした後、ようやく米国はわが世の天下と思っておったら、中国が対抗する勢力として登場し始めている、こういう認識です。これを抑え込まなければならない、これを普通の国にしなければならない。それが米国の国益だと。
 さて、この問題でのこれからでございます。どうも雲行きが怪しくなった、米国にとって厳しくなったというのが最近の米国の認識です。昨年暮れ米国の中央情報局(CIA)が、この先五年間の、ということで見通しを出しました。三方面から米国にとって難しい事態が生まれるとの見通しです。
 一つは米国の経済が衰退するという。衰退する、そこはいいんですけれども、その結果日米の経済摩擦が激化すると見ている。要するに米国は行き詰まったら日本にさらにおぶさってこようと、こうハッキリいっているんです。たまったもんじゃありません。
 二つめは、よいこともあってですね、韓国と日本で米軍への怒りが高まって米軍が居づらくなるだろうと。こういう見通しも五年以内にといって立てております。
 三点めはこれがいまの話の流れに続く点ですけれども、米国と中国の関係が台湾問題などで非常に緊張し、戦争が起こるかもしれない、その危険もあるとこういっております。そしてそうなるとアジアの国々が中国をとるのか、米国をとるのか迫られ、米国に対する支持が減るだろう、こういう見通しなんです。これが米国がもっている、五年以内という東アジアの情勢についての見通しなんです。
 そこで米国は、その時に頼りになるのは日本だと。米国の元国防次官補のアーミテージやナイという人をはじめとして何人かが超党派の提言というのを出しております。日本との同盟関係を強める必要がある、米国と英国の関係、こういう関係に日本を変える必要があるという見解です。英国というのは、最近でいえばユーゴの爆撃。ヨーロッパ諸国、ドイツにしてもフランスにしても最後はみんなやったんですけれども、ずいぶんとしり込みいたしました。そん時に一番にハイと手を挙げてやったのが、労働党のブレア政権なんですね。日本の社民勢力が盛んに持ち上げている「第三の道」なるものの張本人ですけれども、これが一番先に爆撃に乗り出した。何かの時に、ヨーロッパで一番先に手を挙げて助けるのが英国。アジアで日本がそれにちゃんとなってくれと。そうさせようと。そのためには日本が憲法を変えて、いつでも米国といっしょに世界中どこでも戦争をやれる体制をつくる必要があると。これが世の中でいわれている集団的自衛権問題です。
 もうちょっとこの問題を紹介すると、いまの自民党ではそこまでは難しいだろうという見通しがその報告書に出てくるんです。ずいぶん立ち入っていますよ。若い政治家たちの間にはこれに思い切って踏み込める、そういう雰囲気が出てきている、この人びとに期待しようと、そこまで書いているんです。こういうの読むとあの鳩山由起夫とかいろんな連中、元気づくのは無理もありませんね。まもなく米国に助けられて、自分たちが政権につけるか、ということですね。
 さて、話を戻しまして台湾問題。そういう中で台湾問題が非常に緊迫するのは間違いございません。この問題にどう対処すべきか。われわれは、これはあくまでも中国の内政問題だから、干渉すべきでないという考えです。
 五十年前に戻って考えれば、ことは簡単だと私は思います。ご承知の通り、中国で二次大戦後、日本が敗北して逃げ出して以降、内戦が起こって中国共産党が率いる中国人民が勝利したと。国民党の蒋介石は命からがら台湾海峡渡って、台湾に逃げ込んだ。ご承知の通りでございます。その時に米国は第七艦隊を並べて通せんぼをした。陸上では人民解放軍強いですけれども船持ってないものですから、泳いではなかなか難しい(笑い)。台湾だけ残ったわけです。
 ですから、あそこの問題は、米軍が引き上げれば、後は中国の人民が自分で解決することです。やり方はなるべくうまくやるでしょう、同じ同胞ですから。しかし、それはもう任したらどうですか。
 朝鮮の問題、朝鮮戦争も同じです。こんにちの問題の根源はここにあると思います。そして、この米国が台湾海峡でやる、朝鮮でも三八度線でやる、その時にこれを支えたのが日米安保体制です。時間がないからここで少し触れますが、自衛隊もその中でつくられた。在日米軍が全部朝鮮半島に攻めていく、日本国内はカラッポになる、米軍基地を守るガードマンがいない、自衛隊っていうのはもともとそのガードマンでしょう。ですから名前も警察予備隊だったわけですね。それ以来、ずうっと、自衛隊が米国のいわば番犬のような自衛隊にしかなっていない。これはみな周知のことでございます。
 こういうことですから、私はこの台湾問題、日本が手を出さなければ、日本が米軍に協力しなければ、何も危険なことはない。あくまで中国の人民に任せれば、任せることだと、こう思うんです。在日の米軍基地から中国を攻撃しなければ安全なんです。
 それから、もう少し触れれば、中身を言う必要はございませんが、シーレーンの防衛、とてもマラッカ海峡の先までいってオイルルートを守るなんていうのはどうですか、とてもとてもできる話じゃございません。米国のような超大国でも難しい。
 それから核の傘、これはもうどうでしょうか。あの米ソの核超大国が激しく争っている時でさえ、核の傘に守られずにちゃんと立派に生きた国がたくさんあるじゃございませんか。そのくらいの気概がなくて二十一世紀、豊かな平和な日本、アジアがやってくるでしょうか。私は、これはそんなことだと思うんです。
 ということで、日本の安全保障の問題、そしてこれからの日本の発展の問題、まず第一に日米安保条約、これこそが危険の根源だと思います。戦後、ずうっとそうでございましたが、しばらくやや具体的な戦争の危険、遠ざかっておりましたが、先ほど申しましたように、台湾海峡の問題などを考えてみますと、差し迫った問題になってきております。
 政府の側も一九九六年に、日米安保共同宣言ということでもって、もう一度体制を立て直して、その事態に備えようとしております。これを破棄することこそ、安全な道だと。米軍基地を撤去することこそ安全な道だと、こう思うんです。
 ここで少しだけ触れますが、昨日、日経新聞を読んでおりましたら、とんでもないやつが発言していました。前原某という民主党の若手が、安全保障問題の論客といって登場しておったんです。こいつがですね、もう本当にこいつはこいつと言わないとしょうがないんですが、日米安保同盟の下で百年間この先やろうと、こう言っているんです。百年間ですよ。そして、しかも最悪なのはその中国問題なんです。台湾問題をカードに使って中国と戦おうと、こう言っているんです。中国が言うことを聞かなければ、日本の米軍基地を中国攻撃に使わせる、とこういって中国と交渉しようと言う。絶対に許せないし、日本人民は許さないと確信します。しかし、こういう発言だけでも、日本とアジアの関係の中でどういう意味をもつか、何一つ考えていない。アジアと日本を対立させる売国奴、こう言わざるを得ないと思うんです。

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