20010115

闘う決意あふれる2001年旗開き

「安保破棄アジアの共生へ」国民的闘いを

日本労働党中央委員会副議長 山本 正治


この危機をどう打開するか

 わが国は、政治や経済、安全保障、また社会的な問題など、いくつかの方面を打開しなければならないが、安保体制を打破して、アジアとの関係を「共生」に変えていく、この問題を中心に据えて危機を打開する中にこそ展望があると考えています。
 その問題に入る前に、今年は日米安保条約、サンフランシスコ講和条約が調印されて五十周年です。今日、沖縄から佐久川政一先生がお見えでございますが、沖縄がこのサンフランシスコ講和条約によって日本から切り離されて、異民族支配のもとに放置されて長い苦難の時期を過ごす出発点でもあります。
 わが国は形式的な独立は遂げましたが、いまもさまざまな問題を抱え、いやますますわが国の困難を倍増させる根源になっております。そういう意味で、改めてこの五十年間を振り返ってみたいと思うんです。
 それから、少し違いますが、昨年、日本共産党が二十二回大会を開いて、あの党、ずいぶん長い時間をかけて腐敗と堕落を続けてきたわけでございますが、いよいよごく普通の、永田町の周辺におりますほかの政党と同じく堕落した普通の政党に成り変わった。こういう意味で、非常に特徴のある大会だったと思うんですが、大会で、「日米安保体制のもとでなんでもできる」と。自主外交も可能だし、有事があれば自衛隊で対処するだとか、いろんなことを決めております。日本の五十年間を振り返り、またこれからの闘いを考える際に、この党の堕落をも改めて振り返りながら、反面教師というふうにするのも、ムダなことではなかろうと思います。

経済の仕組みを切り替えるべき

 まず日本の経済の問題です。
 こんにち、日本の危機を打開できない、不況が十年も続き「失われた十年」などといわれているその根底には、非常に一般的に申し上げれば、資本主義の経済、あるいは世界資本主義が危機になっていること、こういうことももちろん背景にはあると思います。けれども、これだけでは、説明がつかないと思います。日本の特徴ある危機は説明がつかない。だってそうでしょう。世界資本主義は危機で、しかも米国は世界中から借金をして、だいたい昨年一年間で四千億ドルを世界中から借金をして成り立っている国が世界一好況で、十年間も続いた。ヨーロッパも違います。日本だけが、十年間も不況が続いている。
 日本の特徴は何か。これは、日本の労働者や国民が汗水たらして働いたおカネが、その相当の部分が米国に流れ出て国内に回っていないと、このことと深くかかわりがあると考えております。日米安保体制に縛られた、わが国のこの仕組みの中に問題がある。これを変えることが、まず経済を考えたときにも出発点ではないかと、こう思うのであります。
 いま、普通はこういわれています。政府も、自民党の加藤紘一元幹事長や民主党もとりわけそうですが、構造改革を進めれば、そしてIT(情報技術)革命を進めれば、要するに新しい産業を興せば、日本の経済はよくなると。こういうふうに説明しておりますが、おそらく誰も信じないと思うんです。
 しかし、世の中がいかに事態をごまかしているかということを考えるために、少し実例をあげさせていただきます。民主党の危機打開策の一つに「可処分時間倍増計画」というのがありました。もう日本人は豊かになって、何も買うものはない、だからなかなか消費が伸びない。皆望んでおるのはレジャーだけども、それにしては余暇が少なすぎる。だから可処分時間倍増だ、これで消費が伸びて、日本の経済はよくなるに違いないと、大まじめに書いてあります。説明するまでもなく、われわれの置かれている実感と違うと思います。
 いい加減なのは、次々あります。たとえば共産党は「資本主義のルール」通りにやればいいんだと、こう言っているでしょう。資本主義のルールというのは、「首切りの自由」じゃありませんか。皆さんが、日本の労働者階級が、肌身で知っていることでございます。かくもいい加減。
 戦後の日本経済について、自民党の皆さんは「安保繁栄論」と言ってまいりました。日米安保体制のもとで、軍事費をあまりかけずに、米国の市場に依存して、輸出立国で日本は発展できたんだと。まるでウソだったとは思いません。いくらかは事実で、いくらかは説得力があった。
 日本は、戦後の復興、次の欧米に「追いつけ、追い越せ」も、資源や技術を外国から導入して、日本中に工場をつくり、米国市場にどんどんモノを輸出して、確かに発展してまいりました。しかし、同時に、朝鮮戦争、ベトナム戦争の特需で、戦後もアジアの人びとの血をすすって、こんにちの繁栄を実現したわけでございます。沖縄も犠牲にしました。
 こんにちとの対比で、その元手、資金はどうしたかです。政府は、その資金を、貯蓄を国民に強制して獲得いたしました。強制するといってもピストルでやるわけにはいきません。これは、働いている皆さんがよくご存じです。住宅、子供の教育費、老後の不安、もう年がら年中、働き始めてから死ぬまで不安で、膨大な貯蓄をしなければならない。ピストルで脅かされなくても、貯蓄をする。いまもまったく同じです。
 その貯蓄資金を、大蔵省、日銀が、全国に張り巡らした銀行、あるいは郵便貯金を使いながら吸い上げて、そしてこれを戦略的な輸出産業にばらまく。あの護送船団方式です。この仕組みで、工場がつくられ、雇用が生まれ、もちろん農村はつぶされましたが、見かけ上の発展をしてきたわけでございます。そして、世界第二位の経済大国にまでなった。
 この仕組みが行き詰まった。それが、よくいわれるプラザ合意のあった一九八五年以降、完全に露呈した。ずいぶん日本の経済は変わりました。
 まず、この輸出がパタッと打撃を受けた。急速に円高が進んで、それまで一ドル二五〇円前後だったドルが一二〇円ぐらいまで半分に、円は倍の価値になりました。輸出が難しくなるのは当然です。日本の工場はどんどん海外に移りました。円高ですから、非常に安いコストで海外に工場をつくることができた。
 それだけでなく、当時すでに日本の企業もカネ余りになっておりましたから、米国の国債を膨大に買っておりました。この持っていた米国債が半値になったわけでございます。米国は、借金返しが半分ですむようになりました。日本の企業や政府は、資産が半分になった。
 これから始まって十五年、さまざまなことがありました。たくさんあげることはできませんが、特に触れなければならないのは、あれ以来ずっと、日本の国は超低金利が続けられております。この超低金利の結果、貧しい貯金の中から年に十兆円ほど、国民のふところから銀行に所得が移転しているんですね。
 しかし申し上げたいのは、それだけじゃないんです。もっと大問題は、日本の超低金利で、米国との間で四%ぐらいの金利差がずっと維持されていることです。これは日本だけです。ヨーロッパ諸国は、米国と同じ金利水準をずっと維持しています。水は高い所から低い所に流れるわけですが、おカネは金利の低い所から高い所に流れてまいります。ちょっとした金持ちのところには、ここにはおられませんが(笑い)、銀行から「外貨預金をしませんか」と。そういうことなんです。どのぐらいかと申しますと、一昨年の数字ですが、二十兆円ぐらい日本からカネが出ていっている。輸出でもうけているのは、このうち八兆円ぐらいですね。差し引きで残りの十数兆円は、国内からわざわざドルに替えて、出ていっているんです。
 かつては、先ほど申しましたように、輸出で稼ぎましたが、そして確かに労働者のところにはおこぼれしかきませんでしたが、企業は国内にその売り上げを持ち帰って工場を増やし生産を増やしたので、雇用が増えたり、下請け企業も拡大したりで、いくらかずつは労働者や国民のところにも回ったんです。
 いまは、企業も銀行も国内で使わずに、外国に持っていく仕組みが、十五年間きっちりつくられている。これですね。これは非常に重大なことです。根本的な変化といってよい。もちろん、われわれの生活にとっても重大なことですが、世界の資本主義、米国の資本主義にとってもきわめて重大なことなんです。
 というのは、八五年以来、米国は世界最大の借金国になったんですね。ですから、どこからかおカネを調達しない限り、サラ金に追われている国ですから、やっていけないんです。昨年は四千億ドル、五十兆円近くを、世界中から借りて成り立っているんです。
 どこかの国が供給しなければ、かつて四年ほど前にアジア通貨危機とか、ロシアの危機とか、ブラジルの危機とかいろいろありましたけれども、みな同じですね。外国から借金をして成り立ってきた国が、外国資金が止まって大騒ぎ。アジアでもインドネシアをはじめ、あちこちで政権が変わったわけです。
 米国は八五年以来、いつそういうことが起こってもおかしくない事態に直面しているんです。それもタイやインドネシアとは規模が違います。それを支えているのが日本ですね、この仕組みがつくられている。「ドル環流システム」と、いろんな人が言い始めました。それが壊れると、米国経済だけでなく、世界経済はめちゃめちゃだ。
 確かにめちゃめちゃでしょう。われわれのようなものは「それはそれで結構」。そう考えている者は、それはそれでよいわけですが、米国中心の資本主義の仕組みのもとで潤っている者にすれば大変なことです。その連中のイデオロギー攻撃、国民大多数に米国中心のシステムを信じ込ませるための攻撃として、グローバルスタンダードだとか、ビッグバンとかの考え方が盛んに宣伝されたわけです。

対立する二つの方向

 米国は当然この仕組みでまず潤っておりますが、次に申し上げなければならないのは日本の国内でも、この事態に対して二通りの対応があるということです。
 労働者と国民の多くは、この仕組みではやっていけないと。十年間も不況が続き、先ほどのように厳しい事態があるわけでございますが、一部の巨大企業はどうですか。この三月期の決算でも、増収増益、笑いが止まらないでしょう。日本の国内にも、こういう利害の対立が明確にある。ですからこの十五年間、いろいろなところで出ておりますが、日本の国内で貧富の差がずっと広がっている。日経新聞風にいうと、勝ち組、負け組の差が大きくなっている。企業間でもそうですが、まして、労働者階級やその他国民大多数と、一部巨大企業と、ずいぶんと差が出ているわけでございます。
 この仕組みについて、オランダ人のウォルフレンという学者というか評論家が、日本は米国民に補助金を与えている。この補助金のおかげで、米国人は豊かな暮らしができているといって、日本人を論評するというか批評するというか、バカにしております。日本は植民地なんだと。外国人から見るとそう見えるらしいです。米国の金融的な植民地です。
 問題はここから言いたいことでございますが、というのはこの発言を私どもが知ったのは、先ほど来二度三度名前が出ている、中曽根の本なのです。あの国士づらをした、民族主義者づらをした中曽根がですね、この言葉を紹介しているんです。ところがです、私が特に言いたいことはそこなんです。日本が米国人に補助金を与える、そういうバカなことをしている植民地だと、それほど言われているということを紹介しながら、それについて中曽根はただのひとことも、怒ったり、ではどうすると言わない。まったくこの問題に触れないんです。「自主憲法」などと騒いでいるヤツですが、米国からの自立を言わないんです。こういう人物を売国奴と言わないで言うときがありますか。
 これは、国内で、いまの仕組みが自分たちにとってきわめて好都合だという連中がいるということです。そういう基盤の上で、中曽根は政治をやっているということです。財政赤字を食い物にする銀行に、さらに長期にわたって何十兆円も利子を払い続けることを提唱する。大銀行や大企業のために中曽根はこれからも政治をやろうとしているということでしょう。
 従属的な、植民地のような日米関係を打開しなければ、この経済危機を打開できない、したがって、国民生活が直面している問題を打開できないんだと思います。
 ヨーロッパの人びとはこの状態をこの十年間に拒否してきました。統一通貨ユーロを立ち上げたということはそういうことだと思います。それなしにこのドル支配のシステムから抜け出す道がなかった。
 日本も同じ道をたどったらどうでしょうか。とるべきだと思うのです。
 そしてもう少しこの問題を考えていただきたいのは、ご承知の通り、ヨーロッパ諸国はユーロで通貨統合するために大変な努力、努力というと、違いますね。大変な痛い目に遭いました、労働者や国民が。各国みな財政赤字でこれを国民総生産(GDP)の三%の枠に抑えなきゃならんというので、公務員の首切りとか福祉などが切り捨てられました。そして、大体みな足切り、同じ水準にして通貨統合となった。ヨーロッパの資本家たちはそうやって自国に、国内に犠牲を押しつけて、通貨統合をやって何とか米国の支配から抜け出したんです。ヨーロッパの労働者階級は、日本の連合などと違って、ずいぶんと闘いましたが、力及ばずして負けたわけでございます。
 何が言いたいかというと、労働者など自国民を犠牲にしないで、やる方法、道があります。日本はそうでなければならないと思います。
 それにしてもヨーロッパはさまざまな困難を乗り越えながら、新しい道に踏み出しております。安全保障でもヨーロッパは、これ以上北大西洋条約機構(NATO)、米国に頼っているとうまくないと、NATOとは違う、独自の軍隊をつくろうと、EU諸国だけ集まった、新しい軍隊を立ち上げることを決めて、もう仕事に入っております。そんな形で、米国のドル支配のシステムから抜け出して、自国の経済の発展のためにさまざま努力をしたわけでございます。
 日本ももうこのへんで抜け出さないと、「失われた十年」が二十年、三十年、深刻な問題がいっこうに解決されない、破局的な危機が来ることになります。日本がいくら尽くしても、ドルの破局は避けられないからであります。ドルからの離脱は、いくらかは混乱があるでしょう。でもどこかでは必ず抜け出す以外にない。どうせ痛い目に遭うとしたら、傷は浅い方がよいでしょう。

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