20010101

共同の力で保守連立政治打破へ
安保破棄・国の進路めぐり最も広い国民運動で闘う

2001年新春インタビュー(2)

日本労働党中央委員会副議長 秋山 秀男


国民生活の苦境、どう打開する

―― 次に、こんにちの国民生活の苦境、その背景にある日本経済の現状などをどのように見たらよいのでしょう。

秋山副議長 バブル崩壊後十年もたつのに、一向に長期不況が好転する兆しが見えず、むしろこれからもっと悪化しそうです。
 それだけではなく、国内総生産(GDP)の一・三倍という六百四十五兆円に及ぶ政府累積債務、それに銀行など金融機関の不良債権が減らず、わが国金融システムは引き続きぜい弱であることなど多くの問題点を抱えており、日本経済はもろいですね。
 昨年秋以降、世界経済を引っ張ってきた米国経済が減速過程に入り、また株価も下落して、世界にショックを与えています。
 韓国などアジア経済、また西欧経済にも大きく響き、経済成長が落ちています。日本経済は、米国やアジアへの輸出で、また対米投資でもってきましたから、これが減少するわけで、すでに日米同時株安など深刻な影響が出てきています。東京市場の株が一万三千円を割れば、不良債権を大量に抱える銀行が倒産し、金融不安が起こるであろうと懸念されています。
 もっと根本的な問題は、米株価が急落するか否かでして、その度合いによっては対外資金が米国から流出し、ドル暴落となります。そうなったら世界経済は「破局」を迎えることになりますね。とりわけ日本経済への打撃は、対米証券投資などドルで資産をたくさん持っているし、また市場など依存していますから、深刻だと思いますよ。
 こういう危機的状況に対して、わが国歴代政権は主にどんな経済政策をとってきたかといえば、バブル崩壊以降、橋本政権の「六大改革」を例外に、財政支出による景気刺激策を一貫してとり続けてきました。
 九〇年代に入って今日まで、なんと総計百二十兆円以上の膨大な国家資金が、「景気対策」の名のもとで、使われたんですよ。要するに、一握りの大企業、大銀行のために、また米国のドルを支えるために、膨大な国家資金が略奪されているのが現実です。国民大多数の需要を作り出すため、また国民生活を「豊かに」するために国家資金が使われているわけじゃないんです。
 当然にも、一部の大企業・銀行の業績は良くなりましたが、日本経済は全体として、一向に好転しておりません。

―― 毎日報道されているように、大多数の国民の暮らしと経営はますますひどくなる一方ですね。

秋山副議長 その通りですよ。大企業は九〇年代に入って、国際的な厳しい大競争に打ち勝つために、事業・経営の再構築(リストラ)を進めてきましたが、また長期不況のなかで中小企業の倒産・廃業が急増し、その結果多くの労働者が首を切られ、路頭に放り出されました。
 九八年に入って失業率が四%台となり、それ以降高水準が続いています。失業者は、政府統計でも三百二十万〜三百三十万にも膨れ上がっています。また、派遣や臨時・パートなど不安定な雇用労働者、それに正規に就職できない高校生や大卒女性が急増しています。
 また、中小零細企業はもとより、民間大企業の現場の多くの労働者が低賃金で働かされているのです。
 では中小企業、自営業はどうでしょうか。昨年十一月期の倒産は、十三カ月連続で前年同月比を上回りました。昨年一月から十一月までの合計は、一万七千五百二十一件となって、前年を早くも上回ったのです。負債総額では、戦後最悪です。いかに、中小零細業者、自営業者の倒産、転廃業が激しいものかが分かると思うんです。
 これに農民を入れたらどうなるんでしょう。昨年秋発表された農業センサスによれば、耕作放棄地が五年前に比べて三割も増えておりますし、しかも、年間販売額一千万円以上の農家がかなり減っています。
 ですから、一方では大企業、大銀行を救いながら、労働者、中小企業、農民など国民各層にしわ寄せがいって、国民大多数の暮らしも経営も非常に悪化しているんです。
 それだけでなく、大企業や高額所得者には減税して、他方、国民には消費税の増税をしました(九七年)。また、大企業のコスト削減のため、介護保険の導入、年金や福祉の切り捨てなど国民生活はますますひどくなっています。

―― わが国支配層は、強い日本経済の再建を図るために、中長期的には、構造改革を断行せよと主張しておりますが、これで良くなるのでしょうか。

秋山副議長 なるはずがありません。もっと悪くなるでしょう。
 自民党の加藤紘一元幹事長は、政府の財政支出による景気対策だけに頼った結果、わが国の経済は自律的な展開が遅れた、と従来の自民党主導の政治を批判しています。
 そこで、加藤は、自己責任と競争原理が働く形で、経済や産業の新陳代謝が進まないと日本経済の新しい力はわいてこない、だから経済構造改革を断行せよ、「小さな政府」でいけ、と盛んに主張しています。
 民主党の鳩山代表なども、同じような主張をしています。
 また、ルービン前米財務長官は、日本経済が持続的で、力強い経済成長を回復するためには、不良債権処理、規制緩和、市場開放が不可欠であり、日本は構造改革を経済政策の中心に据えるべきだ、といっています。
 しかし、構造改革で、わが国経済は良くなると思いますか。ならないんです。情報通信関連産業などの一握りの大企業は、政府の幅広い支援と保護のもとで、技術的な優位を果たし、また大規模なリストラもやって、国際的な大競争に勝ち抜き、ボロもうけすることになるかもしれません。しかし、建設、流通、運輸など大多数の産業や企業が、また大企業の下請け、中小企業、地場産業や生活関連の中小、自営業は、内外の厳しい競争にうち負かされて、淘汰(とうた)されてしまうことは明らかです。その結果、中小企業の倒産、転廃業はいっぱい出るし、労働者は大量にリストラされてしまう。これでは、民間主導の内需拡大などできるはずがありませんし、持続的で、力強い経済成長は不可能ですよ。
 加藤、鳩山らは同じ穴の狢(むじな)ですが、かれらは米国や多国籍化した大企業の利害を代弁しているんですね。
 一方、こういう問題についても、共産党はまったくだめですね。共産党は、九七年の二十一回大会以降「ルールなき資本主義」の是正をいっており、独占資本の大もうけには手をつけず、搾取・収奪を基本的には容認しています。これでは国民生活の困難が打開できるわけありませんよ。

―― 結局、国民にとっての経済で、何が主要な問題といえるのでしょうか。またわが国は、米国との経済・金融関係でも非常におかしなところがありますね。

秋山副議長 それはですね、世界最大の債権国でありながら国民生活は貧しく、逆に世界最大の借金国である米国は豊かさを享受しておりますが、このアンバランスな構造こそ最大の問題であり、その抜本的な改革をやれるか否かに日本経済の前途はかかっていると思います。
 わが国支配層、多国籍化した大企業は、対外輸出で稼いだ膨大な黒字を日本の国内に投資しないで、あるいは国内の労働者、国民各層に還元しないで、米国を中心とする海外の国債や株に投資したり、また直接投資に使っています。例えば、米国への証券投資残高は四十三兆七千六百億円(九九年末)の膨大な額に達しております。
 これはまた、米国の強い要求でもあるんです。米国は経常収支が膨大な赤字であり、また世界最大の対外純債務をもつ借金国家なのです。それを穴埋めするためには海外から資本の環流が必要となります。米国は、世界とりわけ日本に超低金利を押しつけて、相対的に高金利の米国に資本が入るような仕組みを作ったんですよ。
 わが国支配層は、米国の強い圧力で、九五年に公定歩合〇・五%という各国に比べても異常な超低金利政策を現在までとり続けてきております。この歴史的な超低金利政策は、同時に日本の銀行救済のためでもあったんです。
 その結果、日本のだぶついた資金が対米証券投資(国債、株など)という形で環流していきました。ドル建てですから、ドルが暴落すれば資産価値は激減するのですが、わが国は米国の政治力で余儀なくされ、またほかに荒稼ぎするあてもなく、こんにちまで米国を中心とする対外証券投資を続けてきています。
 これではまったく米国の「植民地」ではないか、という話をよく聞きますが、その通りです。面白いことに、中曽根元首相は昨年出版した「二十一世紀 日本の国家戦略」という本のなかで、カレル・V・ウォルフレンの講演をとりあげています。
 ウォルフレンは、その講演のなかで日米関係について触れて、「日本は米国の植民地的ともいえる状態に陥っている」と明確に述べています。彼は、「日本の企業は輸出で得た膨大な利益を米国の銀行に預金しており、もしこれを日本にもち帰ればドルは暴落し、円は急騰することになるだろう。その場合、米国経済は大打撃を受けることになる」と指摘し、「他の角度からみれば、日本の労働者・消費者は自らの豊かな生活を犠牲にしながら、米国の消費者に補助金を与えているに等しいことになる」と説明しています。
 中曽根元首相も何か思うことがあるから、ウォルフレンの講演をとりあげたのでしょうね。また、石原東京都知事も以前から「日本は米国の奴隷だ」といっていました。
 直接の日米の経済関係だけではありません。わが国とアジアとの経済関係の発展も米国の力で押さえられていますね。日本とアジアとの経済関係の発展は、双方が平和で、また豊かな生活を維持していくうえで、大変重要だと考えます。
 しかし、わが国支配層は米国追随であり、きわめて問題です。九〇年代初め、マレーシアのマハティール首相は東アジア経済協議体(EAEC)構想を提唱しました。しかし、日本はそれにしっかりした態度を取らず、米国につぶされてしまいました。また、九七年のアジア通貨危機の時に、アジア各国が日本に対して「アジア通貨基金」をつくって資金援助をするように求めてきました。これも米国によって、つぶされました。

―― ではどうすれば、国民大多数の暮らしと経営がうまくいき、そして日本経済が好転するようになるのでしょうか。

秋山副議長 それは、対米従属的な、また大企業本位の経済・金融の仕組みを国民大多数が豊かになる仕組みに抜本的に転換する以外に道はないでしょう。
 例えば、日本は米財務省債権を約二十九兆円(九八年末)持っています。それを売り払って日本国内に、あるいはアジアに投資したらどうでしょうか。
 そんなことが可能なのかという疑問が出るかもしれませんが、かつて橋本元首相が売り払うことをちょろっと発言し、話題になったことがあります。しかし、彼はやれませんでした。
 「米国の金融奴隷」からの解放を唱える石原都知事も「米国債を売り払え」といっていますが、しかし彼は続けて、「その金で米国の株を買ったらどうか」というのです。つまり、彼はドル環流システムを壊すのを恐れているのですね。「反米派」が聞いてあきれますよ、全く。
 もちろん日本が所有している米国債を売り払えば、世界経済にショックをもたらし、またわが国が、経済的に政治的にも混乱に陥り、日米関係が極度に緊張しますよ。米国はもちろん、わが国支配層も必死で抵抗するでしょうね。
 しかし、何もしなくても、日米経済は危うい不均衡にあるのですから、いずれドル主導の世界経済は崩れるのです。そうなったら、わが国経済への打撃は深刻なものとなり、大多数の国民がまたもや犠牲になるのです。しかも、今度は実に深刻な状況になることは明らかです。一時の経済的な混乱を恐れて、何もしなければ、いつになってもわが国は米国の「植民地」のままです。
 そうなる前に、一握りの多国籍化した大企業、巨大銀行中心の、またドル依存、米国追随のわが国経済・金融の仕組みを抜本的に転換することが進むべき道だと思います。わが国は、いつまでも米国の奴隷でいるよりも、そろそろ別の生き方を取るべき時が近づいてきているのではないでしょうか。
 結局、最後の決め手は政治なんですよ。国民的基盤をもつ強固な政治力を構築しなければ、こうした大転換はやれませんね。橋本や石原の例を引くまでもありませんが、わが国多国籍化した大企業・巨大銀行と自民党などその手先たちには、その意思も力もありません。さりとて、彼らが黙って政権を手放さないことも明らかです。彼らは打倒されなければなりません。
 わが国の政治のシフトを、一握りの多国籍化した大企業・巨大銀行から労働者、中小商工業者、農民など国民大多数の側に移すことが必要不可欠となります。
 そのためにもこんにち、幅広い政治的な結集を進め、断固たる闘争で政治の根本的転換を図ることが求められていると思います。

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