20010101

共同の力で保守連立政治打破へ
安保破棄・国の進路めぐり最も広い国民運動で闘う

2001年新春インタビュー(3)

日本労働党中央委員会副議長 秋山 秀男


東アジアをめぐる変化とわが国の進路

―― 昨年は、朝鮮半島など東アジアをめぐる情勢に大きな変化がありました。これらをどのように見ておけばよいでしょう。

秋山副議長 おっしゃる通り、東アジア情勢は昨年六月の南北朝鮮首脳会談の成功、また「東アジア自由貿易圏」構想など、いま変化のただ中にあります。アジアでは、九七年の通貨・金融危機以降、米国に対する自主的傾向が強まっていると思います。
 しかし、共産党のように手放しで喜ぶことは、米帝国主義の現実の支配を容認することになり、たいへん危険なことですね。
 というのは、共産党は二十二回大会で、東南アジア諸国連合(ASEAN)および同地域フォーラム(ARF)が前進していること、また南北朝鮮首脳会談の成功を画期とする朝鮮半島の緊張緩和の流れ、この二点をあげて、「東アジアで生まれた平和の激動」と高く評価しています。
 確かに南北朝鮮首脳会談の成功は画期的であり、南北朝鮮の和解、長期的な平和共存、自主的な統一へ向けて大きく動き出したことは、事実だと思います。しかし、米国がこの地域からこのまま退くことは当分ないでしょう。また、ASEANやARFに米国の長い腕が伸びていることも事実ではないでしょうか。
 米国は九五年に「東アジア戦略」をつくり、以降日本を抱き込んで、強大化する中国に戦略的に対峙(たいじ)することを中心に、アジアに対処してきました。米国は当面、この戦略についてアジアの新しい情勢の変化で調整を余儀なくされていますが、基本点は堅持すると思います。ですから、アジアは引き続き不安定であり、きな臭くなっているといえるのです。
 ところが、驚くべきことに共産党は、大会決議でも「東アジア戦略」にただの一行も触れず、米国のアジア支配・干渉を見事に隠ぺいしているんですよ。それで結局、この米国のアジア支配と闘うことを避けており、米国への幻想を振りまき、米国への警戒心を解こうと努め、全く悪質と言うべきです。

―― 東アジア情勢の変化のもとで、米国の戦略調整とはどのようなものか、お聞かせください。

秋山副議長 それは、昨年秋、米国家情報会議(NIC)が「東アジアと米国―現状と今後五年の展望」という報告を、また民主、共和両党のアーミテージやナイ両元国防次官補など対日政策に発言力を持つ超党派の有力者たちが米国の新政権に向けて提言を発表しました。
 これらを読むと米国の危機感がよく表れており、共産党がいかに平和ボケをしているかよく分かります。
 例えば、NICの報告は、今後のアジア情勢を悪化させる動きとして、米経済の衰退にともなうアジアと米国との貿易摩擦の激化、朝鮮半島の緊張緩和の結果、在日、在韓米軍が両国民の反感を高めざるを得ないこと、台湾問題を中心とする米中関係の緊張激化が避けられず、地域各国が米中のどちらかを取るか選択を迫られ、米国への支持を減らすこと、の三点を上げているんですね。
 アーミテージなどの提言は、中国は社会、経済の変動の最中にあり、その結果は不透明だと指摘し、「朝鮮半島、台湾情勢など米国は瞬時にして大規模紛争に巻き込まれる可能性がある」として、戦争の危険を想定しながら、自主的傾向の強まるアジアに対抗して、自国の覇権と権益を守ると表明しております。しかし、米国独力ではもはや困難であり、日米同盟の強化で何とか切り抜けようとたくらんでいます。
 それは具体的には、日米安保共同宣言(九六年)で再定義された日米安保体制を日米同盟の双務化といいますか、米国とイギリスの関係のように強化するということです。その中身は、日本が集団的自衛権を容認し、有事体制をつくること。つまり日本は、米国がアジアでやる戦争を勝ち抜くために、もっと準備しろということなんですね。
 他方、中国はどうするか、よその国のことですからよく分かりませんが、中国にとってみれば、国家的な統一というのは長い間中国民族の悲願だと思います。すでに香港、マカオは復帰しました。残っているのは台湾だけです。中国国民からすれば、国家的な統一は当然な権利です。ですから、これを放棄したら、中国の政権は成り立たなくなると思います。
 そこで米中関係は、台湾問題をめぐって非常に緊張した不安定な局面がこれから続くのではないかと思います。その中で、日本がどうするのかということが、いま問われているのです。

―― 米国のこうした戦略調整ともいうべき動きに、わが国支配層はどうしようとしているのでしょうか。それに対するわれわれの闘いは。

秋山副議長 わが国支配層・政府は、日米安保共同宣言で米国との政治的、戦略的な同盟関係を強めることを選択しました。ですから、米国の「戦争の準備をしてくださいよ」という対日要求を断ることはできないでしょうね。その準備はすでに始まっています。
 しかも、アジアの繁栄のなかで強大化する中国を恐れていますね。中曽根元首相はさっきの本の中で、日米安保条約を堅持しつつ、ARFなどを活用し、発展させながら東アジア各国で集団安全保障機構をつくりたいなどと書いております。こうした見解を耳にすると、わが国支配層主流は日米安保を基軸としながらも、中国を抱き込み、米国主導の「アジアの平和と安定」をなんとか維持したいと思っているのではないでしょうか。
 もちろん支配層の中には、安保・外交問題について、いろいろな傾向があります。岡崎久彦元駐タイ大使などは、アーミテージなどの提言を大歓迎し、いまこそ日本が軍事的役割も含めてより積極的な役割を果たし、日米両国が本当の同盟国になるチャンスであると盛んに主張しています。また逆に、後藤田元副総理は最近も、日米安保条約の見直しを提唱しております。情勢の発展の中で、支配層の違い、対立も必ず出てきますよ。
 国の進路、その核心をなす日米安保条約の是非をめぐって、国論が真二つに分かれて争われるような時期が、近い将来必ず到来します。
 わが国とアジアの平和と安全は、安保破棄の広範な国民世論と国民運動の発展にかかっているのです。わが党は安保条約破棄を中心に、自主・平和・民主、アジアの共生など新しい国の進路をめざし、今年はこれを最重点の闘争課題として取り組んでいくつもりです。

次へ