神奈川県知事選挙 |
福岡県知事選挙 |
山本 正治(労新) 317,176 (11.3%) |
中村 哲郎(労新) 123,266( 6.5%) |
岡崎 洋(無現) 1,730,724 (61.9%) |
麻生 渡(無現) 1,529,882 (80.7%) |
中里 竜夫(無新) 480,256(17.2%) | 政時 輝紀(無新) 186,508 ( 9.8%) |
関山 泰雄(無新) 159,640 ( 5.7%) |
徳川 高人(無新) 55,166 ( 2.9%) |
佐々木 栄(無新) 109,802 ( 3.9%) |
県民は岡崎県政を信任しなかった
岡崎氏は、百七十万票余の得票で前回から二十万票増加した。これは有権者が前回比で四十万人増加しており、しかも七党派相乗りの結果であって当然といえる。
投票率は前回より下がって四五・六八%、史上二番目の低さとなった。有権者は棄権という形で、岡崎知事に対する批判の意思を表したとみることができる。岡崎知事は、県民の四分の一強の支持を得ただけであり、県民全体から信任されたとはいえない。
山本候補は、失業者支援などの不況対策、モノづくり産業の復権、バランスある県政への転換などを訴え、広範な県民から支持を集めた。
山本候補の得票率が高かったのは川崎市全域、横浜市の臨海部の区、それと横須賀市などである。この地域は産業構造の転換が進み、産業空洞化が急テンポである。リストラで労働者の不安が強まり、失業者も急増している。この間の山本候補と労働党の失業者支援などの活動や選挙政策に強い支持が寄せられたことが分かる。またこの地域では工場跡地に大型商業施設ができ、商店街が地盤沈下している。工場閉鎖の危機に直面する中小業者、大型店進出に苦しむ商店主などにも政策が浸透してるということである。
今回の選挙で注目すべきは、共産党推薦・中里候補との関係である
中里の票と比較してみると、全県平均で得票率は労働党一一・三四%、共産党一七・一七%で、両党の支持の差は五ポイントそこそこの差でしかなくなった。山北、大井、松田、寒川、中井、真鶴などの町で中里より多いか、ほぼ互角の戦いをしている。
とくに横須賀市、平塚市、小田原市、秦野市、大和市、寒川町では、四年前と比べて中里との差を大きく縮めた。たとえば、小田原は前回五千票開いていたが、今回は千ちょっとの差である。日産自動車のある横須賀、平塚両市など、いずれも大工場が集中していた産業空洞化が急テンポな地域で、労働者の不満が高い地域である。
保守基盤の崩壊を誰が組織するか
また山北、大井、松田の各町や平塚市、小田原市、秦野市などの地域は、県内でもっとも保守基盤の強い地域である。そこが去年の参議院選挙結果にも出ていたが、自民党の旧来の支持基盤が急速に崩れている。政府の改革路線、県の一極集中とモノづくり軽視政策のなかで保守基盤が崩れ、それをどこが組織するかという点で、共産党とわが党が拮抗(きっこう)した争いを展開し、ところによってはすでに優位に立っている。
どの勢力に頼って自民党政治からの転換をめざすのか、新しい方向を求める商工業者や農民などの中間層の政治動向の萌芽(ほうが)を読みとることができる。
中村候補、七三%の得票増
福岡一極集中政策を批判し、バランスある県政の実現を訴えて戦った中村候補に対し、「前回の七万票から十二万票に伸ばしたのには驚いた」(毎日新聞、座談会)など評価が高まっている。
得票伸び率の高いところは筑後など県南部、旧産炭地の筑豊地域、大都市の過密問題をかかえる福岡市周辺、およびリストラに苦しむ労働者が多い北九州市の一部である。
旧産炭地の筑豊では、気配りのある県政と地域の振興を訴えた中村候補の政策は、労組活動家など住民から広く支持されただけでなく、首長にも歓迎された。
県南の筑後地域は、一極集中に対する不満が強いだけでなく、党がアサヒコーポ問題で闘い、活発な宣伝も行ってきた。大きく得票を伸ばした柳川市は大型店がどんどん進出し、規制緩和に対する商店主の怒りが強い地域である。
古賀市や糟屋郡など福岡市周辺では、大都市圏の膨張の中で都市過密問題など矛盾があり、県政への不満が強い。
共産党の拠点である北九州市でも若松区、戸畑区などで大きく伸びた。マスコミの事前調査でも共産党支持者のなかに一定の中村候補支持があったが、共産党の路線に不満をもつ労働者が多くおり、党の旗をかかげ闘えば、支持をかちとれることを示している。
県内三分の一の地域で共産党と互角に戦った
共産党は県議選で議席をのばしたが、社民党が衰退した部分をとりこんだ結果であり、選択肢を失った人びとがとりあえず入れたにすぎない。しかし、県政をめぐる争いでは、前回と比べ労働党が肉薄し、中村候補は、二十二市町村で共産党推薦の政時候補を上回った。地域的には中村候補が得票を伸ばした前記の地域だけでなく、行橋市など京築地域でもかなりのところで政時と互角に争った。
京築は、県政から遠ざけられていることに不満が根強く、党の分散化政策が受け入れられる素地は強い。一方この地域で共産党が強くない理由は、部落解放同盟や社民党が力をもっていることもあるが、その政策にある。共産党の「大型開発反対、公共事業減らせ」という主張は、県の開発政策の光が当たらないこの地域では、支持されない。
県政を変えるための広範な戦線形成に重要な一歩
今回の十二万という得票数は、「変えます!福岡への一極集中」「大企業・財界の手から県政をとりもどそう」と訴えて闘った政策が広範な県民に受け入れられた結果である。断固として闘えば展望が開かれることが一層明らかになった。この情勢のもとで苦悩し、方向を模索する社民勢力や労働組合にとっても大きな激励になるだろう。
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