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各界が共同して

日中平和友好条約締結20周年記念シンポジウム開催

21世紀に向けての日中関係を議論


 中国の劉徳有氏(中華全国日本学会会長、中国対外文化交流協会常務副会長)の来日を機に、東京、神奈川、福岡で広範な各界の人士の呼びかけによってシンポジウム「二十一世紀を展望して―日中両国のはたす役割」が開催された。これは、江沢民中国国家主席の訪日後、日中平和友好条約締結二十周年の記念事業の一環として、民間で初めての取り組みである。二十一世紀を展望し、日中関係のさらなる発展をめざして熱心な議論が行われた。このシンポジウムには経済界、国会議員など政界、労働組合、女性団体、日中友好団体、学者・文化人など各界の人びとが賛同し、自治体、マスコミの後援を得て行われ、大きな関心を集めた。東京でのシンポジウムを紹介する。

呼びかけ人を代表し、後藤田正晴氏があいさつ

 十二月六日、日中友好会館において「二十一世紀を展望して―日中両国のはたす役割」が開催された。

 シンポジウムは槙枝元文・日中技能者交流センター理事長の司会で開始された。

 主催者を代表して、後藤田正晴・日中友好会館会長が「日中関係は日中共同声明と平和友好条約で定められた原則にのっとり、四半世紀の間に経済、教育、文化そして人の往来などが順調に発展してきた。十一月二十五日には、江沢民主席が中国の国家元首として初めて来日し、二十一世紀を臨んだ『平和と発展のための友好協力パートナシップの構築に関する日中共同宣言』が発せられた。これは両国の友好関係のさらなる前進である。わが国は今後とも中国との信頼関係をいささかもゆるがせないことに努めることは無論のこと、今回の共同宣言にあるように共通の利益を最大限に拡大し、相違点はできるだけ縮小することに互いが務めなくてはならない。日中両国の平和友好協力は、アジアの安定と繁栄の系譜である。日中両国は、相互理解と相互信頼に基づく友好関係をさらに強化する必要に迫られている」とあいさつした。

 続いて、青島幸男・東京都知事の祝辞を茅野祐子・都生活文化局長が代読した。

 中江要介・元中国大使と劉徳有氏から問題提起が行われた(要旨別掲)。両氏は日中国交回復、日中平和友好条約締結後の日中友好関係の発展を振り返りながら、二十一世紀を展望して日中関係のさらなる発展についてそれぞれ意見を発表した。

 その後、元インド大使の野田英二郎・日中友好会館副会長もパネラーとして意見を述べ、会場からも熱心な議論が行われた。


日中不再戦こそ原点   中江要介氏

 日中関係は「日中共同声明」「日中平和友好条約」の二つの文書に規定されている。例えば、戦争責任については共同声明で示されており、何のあいまいさもない。

 また、体制の違いを乗り越えることを確認しており、冷戦後の世界にあっても重要な意義を持っている。

 平和友好条約は「反覇権条項」があるが、多極化世界の中で、両国がいかなる覇権にも反対することは世界平和にとっても重要になる。

 日中関係の原点は何かというと「日中不再戦」である。アジアの平和、世界の平和のための原点であり、日中関係の総論だ。

 今回の日中共同宣言は、地球的規模の問題、次世代の問題、安全保障の枠組みという三つの問題を提起した。

 安全保障の枠組みは、日中間でいえば、反覇権条項を確認し世界の覇権主義に反対し実行することだ。

 二つめには、核兵器に反対することだ。両国、とりわけ中国は核廃絶に向けイニシアチブをとってほしい。

 日中両国は国際社会の中で、反覇権を訴え、またアジアの不安定要因を取り除く努力を強めるべきだ。

 新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)、これは不必要な発言や不規則発言が出ている。だが、その原点は、安保条約であり、本来日米間の問題で第三国に及ぼすものではないはず。台湾問題は日中共同声明で、明確になっている。

 台湾海峡で米国が中国と事を構えるのは、米中間の問題で、日中問題ではない。これらをみれば、米国抜きに安全保障は議論にならない。だから日中は米国を含めて安全保障問題を議論すべきだ。


日本は歴史問題解決を  劉徳有氏

 中日関係の発展にとって、1成果を大切にし、二十一世紀に向けて新しい中日関係を構築すること、2中日関係の原点ともいうべき「共同声明」と「平和友好条約」を厳守し、今回の「共同宣言」を忠実に守り、両国友好の政治的基盤を維持すること、3中日関係の歴史について、正しい認識を持つこと、4いくつかの敏感な問題に正しく対処すること、5正しい歴史観で青少年を教育し、中日友好事業の後継者の育成に力を入れること、6長期的視野に立つ中日両国の相互利益を基礎とした協力関係を構築すること、7相互理解と相互信頼を深めること、が重要である。

 残念ながら、日本には絶えず歴史問題でトラブルを起こし、歴史の事実をわい曲ないしは否定するものがいる。このことは被害国の人民の感情を大いに傷つけ、中日関係の正常な発展を妨害してきた。中国としては、歴史の真相をまもり、中日関係の基礎という大局から出発して、こうした動きに必要な反応を示してきた。歴史問題の解決の鍵は、日本自身ににぎられている。日本政府は、歴史をわい曲・否定する勢力を真に制止していただきたい。

 台湾問題は中国の内政であり、国交回復時にすでに意見の一致をみ、平和友好条約で政治的・法律的に台湾の地位の問題を解決したはずだ。

 中国は、他の国との関係を発展させるにあたって、自国の主権を犠牲にすることは絶対にしない。「台湾独立」「二つの中国」「一つの中国、一つの台湾」および台湾の国連への復帰の企てには絶対に反対である。

 日本政府は新ガイドラインに関連し、周辺の事態は地理的概念ではないと言明している。だが、日本当局は防衛の範囲の問題において、台湾を含まないという公約を明確にすることは、どうしてもしようとしていない。

 日米安保条約は、いうまでもなく冷戦の所産である。冷戦はすでに終結したが、安保条約の適用範囲は逆に延長され、拡大された。これらに対し、中国とアジアの隣国は大きな関心を寄せざるを得ない。われわれは、日本が引き続き平和的発展の道を歩むことを望み、安保条約が防衛的な性格を有するものであることを望む。


呼びかけ人

紀平 悌子(日本婦人有権者同盟会長)
後藤田正晴(日中友好会館会長)
林  義郎(日中友好議員連盟会長)
伏見 康治(元日本学術会議会長)
槙枝 元文(日中技能者交流センター理事長)
村岡 久平(日中友好協会全国本部理事長)
鷲尾 悦也(日本労働組合総連合会長)
渡里杉一郎(日中経済協会会長)


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