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ルポ 共産党員が町長・兵庫県南光町(上)

これが革新? 保守政治とどう違う


 共産党は昨年九月の二十一回大会の決議で、共産党員町長がいる人口約四千八百五十人の兵庫県南光町を「日本一の町」と持ち上げている。果たしてそれは本当なのか、実地調査も含めて検証してみる。


 共産党二十一回大会決議では、「共産党の歴史的躍進」の根拠として、国会の議席数などとともに、「革新・民主の地方自治体の広がり」をあげている。「革新自治体」の大先輩として兵庫県南光町を取り上げ、「その先駆的な民主行政の実績が注目されている」と天まで高く持ち上げている。つまり、南光町は日本一の町だとし、果ては「日本共産党員首長の自治体にあすの日本の政治が見える」(赤旗)とまで大言している。

 共産党南光町政の十七年間は、どこが「革新」で全国の注目の的なのか、さっそく南光町を訪れてみた。

政府と一体 解放同盟つぶしで町長当選

 南光町は、姫路市から西北西約四十キロメートル、JRのディーゼルカーで約一時間の山あいにある。駅前の国道沿いにいくらか商店街がある程度の、のどかないなか風景が展開される。しかし、一歩その裏側を覗くと、激しい階級間の闘争がかいま見えるのだ。

 文献や関係者の話によれば、そもそも共産党は八〇年十月の町長選挙で、南光町で力の強かった部落解放同盟の運動を破壊するために、投票日十日前、近隣の相生市から急拠、党員を候補者(現・山田兼三町長)として担ぎ出してきた。

 すでに七〇年代半ば、兵庫県北部の八鹿町、朝来町などでは、解放同盟による差別糾弾などの闘いに、政府権力・共産党が一体となって攻撃を強めていた。

そういう流れの中で、共産党南光町長も成立している。

 「革新」南光町の誕生の秘密とその後の最大の功績とは、支配層と一体となって解放同盟とその闘いを弾圧・瓦解させる役割だったのである。

 現に不破委員長が旗開き(九七年)あいさつで南光町を持ち上げた際、南光町の「実績」として言及したのは、唯一、解放同盟の運動弾圧の実績だけである。解放同盟対策のため、岩手県の町長らが国土庁の紹介で南光町へ視察に来た事例を取り上げ、「自民党政府の国土庁も、解放同盟対策の模範は南光町だと認めている」と吹聴している。

どこが「革新」か 「安心できる」共産党町政

 さて、南光町長自身が売り物にしているものは何か。それは、歯科保健センター、文化センター、ひまわり館、子ども歌舞伎と、町政運営の「民主的姿勢」なるものだけである(「赤旗」九七年一月一日、三日付、不破委員長・南光町長・狛江市長との座談会)。

 では、道路舗装率や上水道等普及率など最低限の生活基盤についてはどうか。南光町の人口に比較的近い兵庫県内の五町を見れば、共産党町長の町と保守系の町とは大して変わりがないことが、一目瞭然(りょうぜん)である。

 むしろ、波賀町では道路舗装率、上水道等普及率、し尿処理実施率、生活排水処理率でいずれも南光町を上回っている(別表)。

 結局、共産党町政十七年を経過して、過疎化は止まらず、当初五千人超の人口が今では約四千八百五十人(九六年三月)と減り続けている。

 町財政といえば、借金が約二十四億円(九五年度)と膨らむ一方である。しかも、毎年度予算の決定も就任以来、ほぼ全会一致で成立している。共産党は「革新自治体」というが、町予算の争奪をめぐって、いったいどこで保守、革新の争いがあるのか。まさに地域支配層の容認する枠内での町政でしかなく、支配層も「安心してまかせられる」共産党の自治体政治の実態を見事に表している。(続く)

南光町 波賀町

人口

4853 5235

道路舗装率

67.6 76.3

上水道等普及率

94.8 98.6

し尿処理実施率

43.5 48.9

生活排水処理率

25.5 96.2


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