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労働新聞 2023年10月25日号・8面

日藝映画祭
「移民とわたしたち」

入管法改定が考える契機に

 日本大学芸術学部映画学科の学生による映画祭が、12月2日から開かれる。同映画祭はこれまで「中国を知る」「領土と戦争」など、情勢を踏まえた問題を取り上げてきた。第13回目の今回のテーマは「移民とわたしたち」。「移民の世紀」と言われるなか、日本もまた400万人を超える外国人が在留する「移民大国」である。一方、2021年に名古屋入管局でスリランカ国籍のウィシュマさんが死亡した事件を機に、在日外国人の人権問題や劣悪な入管体制への注目が集まっている。映画祭に関わる学生たちに聞いた。(文責・編集部)


ーーテーマを「移民とわたしたち」にするまでには、どのような経過があったのでしょうか。

古賀 毎年、4月から6月にかけてテーマを決めるのですが、検討過程で「働く女性」「テロ」「移民」の3つに絞りました。最終的に「移民とわたしたち」というテーマになりましたが、日本と移民・難民の結びつきについて学ぶことが狙いです。上映作品には、日本で配給権が切れている「ル・アーヴルの靴みがき」や、国立映画アーカイブにしかない「からゆきさん」も含まれています。

松本 ウィシュマさん死亡事件があり、その後、入管法改定案が国会を通過したことが背景にありました。テーマの発案者が、入管法改定反対のデモに参加していたことも影響しました。

田辺 3つの中でいちばんタイムリーで、私たちが考えていかなければならない問題だと思ったからです。当初は、日本に関わる映画に限る予定だったのですが、興行面も考慮して、世界的な視点で考える方向に変えました。

佐々木 私は当初「テロ」をテーマに推していました。ですが、「何がテロ」なのか、定義が難しかったです。江戸時代の赤穂事件(忠臣蔵)も、今起きれば「政治テロ」ですから。

高 私は生まれも育ちも日本の在日韓国4世です。両親の方針もあって「日本人として生きてきた」という気持ちですが、テーマを見て「自分が考えなければならないことだ」と感じました。いつ、映画に出てくる人びとのように不当な扱いをされるか分からないと、感じるようになりました。

宮内 10月に入ってからパレスチナ問題が浮上したことで、この問題が結果的にタイムリーであったとも思っています。

ーー企画準備を通して、皆さんの意識に変化はありましたか。

大藪 準備過程では、外国の配給会社との連絡を担当しました。元々は海外の社会的弱者の問題に関心がありましたが、日本も「移民大国」で、さまざまな問題があることを知りました。

松田 外国人は日本にとってどんな存在で、どのように生きているのか、もっと知る必要があると思いました。

佐々木 準備段階でいろいろな人に話を聞くなかで、関東大震災時の在日朝鮮人虐殺事件など、日本に外国人への構造的差別があることを知りました。

田口 これまで、移民問題についてはほとんど知りませんでした。日本社会にある差別について、考えていかなければならないと思いました。

田辺 高さんの身の上を改めて聞くことで、在日外国人が身近な存在であることを再確認しました。もしかすると、私が気づかないだけで、これまで会った人びとの中にも外国人の人がいたかもしれません。ですが、そうした人が入管法改定で強制送還されかねない状況にあると知り、「隠されていた」問題だと分かりました。

ーー未来を担う若者として、日本社会のあるべき方向、自分の将来について考えることはありますか。

川井 小中学校のクラスに外国人の友人もいましたので、移民は「当たり前のこと」と感じてきました。仮に「在留資格外活動」で生活していたとしても、凶悪犯罪でもない限り、法解釈だけで強制送還することがよいことなのか。もっと柔軟な社会であるべきだと思います。

高 まず、外国人の声を政治に反映させる体制を整えてほしいです。

石島 「外国人だから」という理由で認められないことがある社会です。人として、個人として生きられる権利がほしいだけだと思いますし、そうあってほしいです。

清水 これからも「もし、彼らの立場だったら」と考えていきたいですし、このテーマの作品に関われたらと思います。

大藪 来年、海外留学する予定です。そうすると、自分が「移民」のような立場になります。もっと他国の文化を知り、いっしょに生きていきたいと思います。

ーーありがとうございました。

詳細は「日芸映画祭」でご覧ください。

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