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労働新聞 2020年3月15日号・5面 国民運動

横浜/市民団体が林市長に公開質問状

カジノ推進予算4億円阻止へ
怒りの大結集呼びかける

 「カジノ解禁法」をわずか五時間半の審議で強行採決した張本人である自民党の秋元衆議院議員が収賄容疑で逮捕されたが、疑惑は何一つ解明されないうえ、新たに萩生田文科相(「カジノ議連」事務局長)の大手カジノ事業者による接待疑惑が発覚、渦巻くカジノ利権の一端が暴露され、カジノに対する国民の不信と怒りが急速に高まっている。二月初めに発表された「共同通信」の世論調査によれば、七七%が「見直すべき」と回答した。すでに北海道や千葉市などは誘致見送りを表明、国会では野党による「カジノ法廃止法案」が上程されている。
 にもかかわらず、安倍首相は一月の施政方針演説で「カジノ施設の整備を進める」と表明、それを受けて林横浜市長は、逆風などどこ吹く風とばかりに、カジノ誘致に向け突き進んでいる。その背後では地元出身の菅官房長官がにらみを利かせているのは公然の秘密だ。
 昨年八月、林市長はそれまで「白紙」としていた姿勢を一転、カジノ誘致を表明するや、市民の強い抵抗に直面、昨年十二月から「IR(総合型リゾート)市民説明会」を開いてきた。「私が市民の皆様に丁寧に説明してご理解をいただく」と繰り返すが、その実態は、市の現状や観光客の日帰り率など、数字のトリックを使っての印象操作というべきもので、肝心な市民の疑問には何一つまともに答えていない。回を重ねるごとに市民の疑念は募り、「市長のアリバイづくり」に怒りの抗議行動が続いている。
 こうした中、林市長は開会中の第一回市会定例会に四億円のカジノ推進予算を提案、自公与党の支持を取り付けてカジノ誘致を推し進めようとしている。四億円は、事業者の公募・選定と、区域整備計画の策定、それに交通アクセスの調査、広報費に使われ、文字通りカジノ推進を保証する財政措置である。

既成事実化阻止へ行動
 いいかげんな議論で問題点が暴露されないまま予算が議決されると一挙に推進が既成事実化されかねない。誘致の是非を問う住民投票や市長リコールにも否定的影響が及ぶことを懸念した市民団体が、市会でカジノ予算を阻止することが当面のカジノをめぐる攻防の焦点と位置づけて活動を展開してきた。
 「一八行政区カジノ反対有志の会」は、二月十三日を皮切りに、二十一日、二十六日の本会議日に、市会前で「市長と議会は市民の声を聴け!」と宣伝活動を行った後、傍聴活動を取り組んできた。いい加減な市長の答弁に対して、真っ当な市民の思いを叫んで、五年ぶりとなる四人の「退場」処分者も出した。
 同時に、「立憲国民フォーラム」などの野党議員に対しては、議会内外の連携を求めて激励し、自公与党議員に対しては、市民の声を聴くよう働きかけてきた。
 しかし、委員会での議決が二十三日に、本会議の議決が二十四日に迫り、もはや市長の態度を聴く機会はない。
 そこで、林市長に対し「公開質問状」という形でただそうと、「有志の会」は十日、IR推進室を通じて手交した。
 質問の第一で、「予算案や、『横浜のIRの方向性』の素案に対するパブリックコメントの募集など、カジノ関連スケジュールを停止すべき」と問うている。
 また、カジノ予定地である「山下ふ頭の土地処分」について、不明解な答弁を質している。「ギャンブル依存症調査の情報公開」も求めている。
 さらに、特別委員会で、山下ふ頭への誘致に反対する横浜港運協会が移転要請に応じない場合、「行政代執行で立ち退かせる」ことについて、「研究の余地はある」と答弁したが、その真意をただしている。
 最後に、市長には十九日までに書面で回答するよう求めた。

■反対世論に追い風も
 他方で、「有志の会」は、二十三日の特別委員会、二十四日の本会議に向け、カジノ予算の議決を阻止するための、市庁舎を包囲する怒りの大結集の行動を市民団体や労働組合などに広く呼び掛けている。
 この取り組みを共同して成功させることで、住民投票、リコールを準備している人びととの協働を実現したいとの願いもある。
 市民の声を無視してカジノを強引に推し進める林市長に対して、逆風が吹き荒れている。一方、反対する市民の側には頼もしい追い風が吹いてきている。元自民党神奈川県連会長を務めた梅沢健治氏が「神奈川新聞」連載の回顧録で「私は元・地方政治家として、ふるさとに正義を残して死にたい。カジノ誘致は今なら止められる」と決意を語った。また「古い友人」の藤木幸夫・横浜港運協会会長が「ひとり果敢に反対し、権力に立ち向かっている」「未来のハマっ子たちへの愛だと思う」とし、自分も「九十一歳まで、生かされた命で、痛快な『命懸け』をやってみるつもりだ」と思いを述べている。  このハマっ子の未来を案じる、世界に誇れるミナト横浜を築いてきた二人のドンの気骨あふれる決意表明をどう受け止めて行動するか、いよいよ労働組合の態度が問われるところとなった。(N)


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