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労働新聞 2018年9月15日号・5面 国民運動

北海道地震で全道停電、
生活・経済に大打撃

 原発固執・震災軽視、国の責任重大

  北海道で9月6日、南西部の胆振地方を震源とする震度7を観測した大地震が起こり、多大な人的・物的被害に見舞われた。被害を大きくしたのが、震源地に近い苫東厚真火力発電所(厚真町)の運転停止から引き起こされた全道停電で、救助や復旧の大きな妨げとなり、全道民の生活と経済に大打撃を与えた、これは日本政府と北海道電力が泊原子力発電所(泊村)の再稼働を前提に電力供給の分散化を怠った結果だ。原発再稼働政策に固執し災害対策を軽視した安倍政権による人災であり、責任は重大だ。被害に遭った道民からの通信を紹介する。


北電の災害耐性のなさ露呈
札幌市 泉川 幸司

 九月六日午前三時、北海道太平洋沿岸を震源とする大地震が発生しました。一九六八年の十勝沖地震以来の深刻な被害を伴う、五十年来の地震でした。私にとっては「室内がメチャメチャ」になる初めての地震でした。
 その日はたまたま夜更かしして起きていたので大きく揺れ動く本棚を手で押さえることができましたが、反対側の台所ではコップやら食器が音を立てて床に落ち、その破片の中でこの地震の深刻さを実感することができました。
 そして十数分後停電が発生しました。
 私が住んでいるのは十世帯ほどが入っている札幌市内のアパートです。一年前に引っ越してきたばかりで、まだどんな人が住んでいるのか分かっていませんでした。しかしこの日は停電を機にアパートの前に住民が集まりました。中には恐怖のあまり夫に支えられながらも終始泣きじゃくている若い妻もいました。
 集まった住人同士で励ましながら余震に心を備えると同時に、「いったいこの停電はどこまで続くのか」が皆の関心の中心であったように思います。「あそこのビルは電気がついているけど」「いや、あれは病院だから非常用電源でしょう」「街路灯がみんな消えているから深刻ではないか」と、被害の程度を推測はするものの、ニュースも聞くことができず困っていました。一人が自家用車にエンジンをかけその電気でテレビニュースに接することができ、初めて規模が大きく再開の目途の立たない停電であることが分かりました。

■地震ない地域まで大停電
 夜が明けると私は町がどのようになっているのかカメラを提げて出歩いてみました。すぐ近くの家電ショップの前にはオープン前から長蛇の列ができていました。食料品店やコンビニなど開いている店にはどこも長蛇の列ができていました。すべて乾電池を求める長蛇でした。
 実際、私も携帯(ほかの大半の人はスマホ)の電源が切れるのを気にかけ、その確保に最初の労力を掛けることになりました。停電により通信機器が使えず、何が起こっているのかがまったく分からない。このことが本当につらいことなのだということを実感しました。
 太平洋沿岸や、札幌市の一部では大きな物的被害は出ましたが、道民にとっていちばんの大きな被害はやはり長期となった停電でしょう。食品工場等の停止を招き、牛の搾乳を停止させ、JRや地下鉄の交通を止めました。北海道の生活や経済全体に大きな打撃を与えました。
 私の住む地区は比較的早く二十時間程度で復旧しましたが、この停電は揺れることのなかった地方にまで及び、二〜三日の長期停電を強いられた地域もあります。私の親戚は稚内に住んでいますが、停電解消後に電話をすると「揺れてもいないのに三日間も電気が使えなかった」とぼやいていました。

■冬であれば凍死続出も
 一週間たった現在、ようやく貧乏人の食料、納豆や豆腐、牛乳がわずかずつですが店頭に申し訳なさそうに並ぶようになりました。
 地震直後に近所の人と話すことはといえば「冬でなくてよかったねー」でした。冬には火事の心配もありますが、凍死の危機があります。今時、灯油だけで暖の取れるストーブはありません。電気が通じてなければ火は燃えないのです。たとえ家の中でも何日も火のないところでは過ごすことは困難です。屋外でたき火で過ごすことはありえないのです。
 北海道電力の災害に対する耐性がこんなに貧弱だったとは思いもしませんでした。それは道民すべての共通の思いでしょう。食料は地方から運ばれてきます。まだ地方が健全であれば災害からの復旧は難しくはなかったでしょう。しかし今回のブラックアウトは都市のみならず地方経済までダウンさせてしまいました。
 この地震の経験を北海道民の暮しの在り方を根本から考え直すきっかけにしなければしなければならないと考えています。

「原発ベース」こそが問題だ
札幌市 青野 忍

 九月六日の大地震。地震そのものの被害もさることながら、停電の長期化で社会機能がストップし、北海道に住む私たちの生活・産業・社会活動に大きな混乱と損害を与えました。酪農などの農家、漁民、市場などは今でも影響を与え続けています。地震は天災ですが、北海道二百九十五万全戸に及ぶ停電は人災だということを感じました。
 前代未聞の全北海道「ブラックアウト」は、北電の電力供給システムに根本的な問題があると思います。苫東火力に変わるベース電源として原発が必要だという考えが政府、北電にあったからだと思います。道の電力供給体制を、最初から泊原発をベース電源とすることを前提にし、泊原発が停まっていても電力供給体制を変えていないからこそ、このような深刻な全道停電になったのです。
 今回の停電で北海道社会全体の混乱を導いたのは、北電とこれを指導する国・経産省です。責任を問うべきです。


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