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労働新聞 2018年6月5日号・5面 国民運動

神奈川/
日朝対話と国交
正常化求め集会

 安倍政権の朝鮮敵視は破綻 世論と行動で転換させよう

 朝鮮半島情勢をめぐり、南北融和と朝鮮戦争終戦に向けた機運が高まっている。自民族の運命は自分たちで切り開くと「板門店宣言」を発表した南北朝鮮、また米国、中国、ロシアなどは、それぞれの利害をかけて激しい外交戦を繰り広げている。こうした中、わが国の安倍政権は、「蚊帳の外」に置かれ、融和の流れを妨害し、米国の先兵として「制裁と圧力」を叫び、「拉致問題の解決」を他国に頼む醜態をさらしている。こうした情勢下、神奈川では五月二十五日、幅広い県内人士が呼びかけた集会「今こそ日朝対話を、国交正常化の時」が開かれ、安倍政権の朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)敵視政策の転換を求める世論と行動を呼びかけた。東アジア情勢が大きく変わろうとしている時、議会野党はなお「朝鮮制裁と圧力」を唱え、安倍政権に同調・追随している。集会は、安倍政権の対米追随・時代錯誤の朝鮮外交の破綻を暴露し、その根本的転換を示す政治的な取り組みとなった。


 横浜市で開かれた集会は米朝首脳会談中止のニュースが内外に衝撃を与えたその日、わが国の自主的平和的な外交が切実に問われていることを痛感させられる状況の中で開かれた。
 集会は呼びかけ人の露木順一・前開成町長の司会で進められた。

日本の責任問う声
 主催者あいさつで、呼びかけ人の日本キリスト教団牧師の関田寛雄氏は、朝鮮との対話を推進する上で日本政府に求められていることを指摘した。
 最初に、わが国が一九一〇年から三十六年間にわたって渡って朝鮮半島を植民地支配し厳しい弾圧と差別を行ってきたこと、戦後は米国の南北朝鮮分断政策に加担したことの責任を認識し、謝罪することが対話の前提だと訴えた。
 また、四月二十七日に南北朝鮮の両首脳が署名した「板門店宣言」を支持し、日本政府としては二〇〇二年に日朝両首脳が合意した平壌宣言を原点に立ち返り、現政府の姿勢をあらためるべきだとした。
 さらに、朝鮮学校の高校無償化制度からの除外などの日本政府の差別的政治をあらためることや、横行するヘイトスピーチなどへの対応も求めた。
 朝鮮の非核化のみを要求する米国の姿勢も問われるべきだと批判した上で、南北朝鮮の交流を支援し、日朝国交回復のため、さらには東北アジアの平和回復のために寄与する集会にしようと訴えた。

「安倍外交は井の中の蛙」
 
続く問題提起では、元外交官の浅井基文氏が急展開を見せる朝鮮半島情勢の背景などについて解説した。
 浅井氏はまず、歴史的な米朝首脳会談合意に至るまでの朝鮮の内外政策の歴史的経過を説明した。朝鮮が自らの存続を脅かす米国と対等に交渉するためのカードとして核開発を進め獲得したこと、韓国では南北の融和と共存をめざす文政権が誕生したこと、また米国で朝鮮の政権崩壊を追求しないとするトランプ政権が誕生したことなどに触れ、その陰でバランサーである中国が役割を果たしたことも指摘、「トランプは米朝首脳会談中止を発表したが、そうした経過から判断すると仕切り直した上で行われるだろう。仮に今回は会談が流れたとしても、昨年のような最悪の状態には戻らない」と述べた。
 その上で浅井氏は、対米協調で「朝鮮の脅威」をあおり軍事大国化を進める安倍政権の外交を「井の中の蛙(かわず)」だと厳しく批判した。
 最後に、主権者・国民の政治責任として、朝鮮に関わる基本認識を正すことや、朝鮮半島に関する基本姿勢を正すこと、平和・安全保障に関する基本姿勢と正すことの必要性などを訴えた。最後に憲法九条と日米安保条約は共存し得ないとして、米国に追随し、南北朝鮮分断を固定化し、改憲に固執する安倍外交に引導を渡そうと呼びかけた。

積極的な声次々と
 集会に寄せられたメッセージが紹介された。鳩山由紀夫元首相、あべともこ衆議院議員(立憲民主党神奈川県連代表)、伊波洋一参議院議員、久保孝雄元県副知事、国際手話通訳者の桑原絵美氏らがそれぞれの立場から日朝対話を求める取り組みへ連帯の意が表明された。
 各界からのアピールも行われた。
 「神奈川新聞」の石橋学記者は、韓国を訪問した際に現地で朝鮮学校出身の在日朝鮮人が平和ガイドとして南北の橋渡していたことを「誇りに思う」一方、その朝鮮学校への差別的政策を日本政府や神奈川県が続けていることを厳しく批判、これらは自らの足元の差別問題であると同時に東アジアの平和の問題でもあるとして、より積極的な取り組みを提起した。
 横浜国立大学の山本泰生教授は、明治以降の日本外交が「孤立の事実」が「孤立の恐怖」を生み、その打開のために強国にすり寄る「一辺倒外交」(日英、日独、日米同盟)の過ちを繰り返してきた一方で、朝鮮半島や中国とは幸福な関係を築いてこなかったと指摘、今年こそ明治百五十年の温故知新として、中国や朝鮮半島と連携して平和なアジアをつくり出せる関係を築きたいと訴えた。
 千葉景子・元法相は、自身の訪朝経験なども踏まえ、朝鮮との違いを認め合い、よき隣人としての対等な関係を築こうと呼びかけた。またこうした努力が破綻した安倍外交を変える力となると語った。
 大和市議会議員で第五次厚木基地爆音訴訟団代表の大波修二氏も自身の訪朝経験などについて語り、朝鮮の国民は戦争ではなく平和を望んでいるとして、「非核化」を押し付ける日米の思惑などについて正しいことを学ばなくてはならないと訴えた。
 綾瀬市議会議員の越川好昭氏は、米朝戦争となれば戦場になるのは日本、とりわけ基地を多く抱える神奈川は危険にさらされると警鐘を鳴らし、その上で安倍政権の朝鮮敵視政策を変えるためには野党が日米基軸の枠にとどまる限り闘えず、独立・自主、アジアの共生の鮮明な対抗軸を掲げるべきだと訴えた。
 また会場からも「与野党問わず朝鮮制裁の国会決議をあげているような状況は変えなければならない」「朝鮮は国連加盟国であり、国交を結べないというのはおかしい。右も左も日朝対話を掲げるべき」などの意見が相次いだ。
 最後に、日下景子県議会議員が「この運動は、戦後七十余年間続いてきた米国追随の国の生き方を、自主的でアジアと共生する生き方に転換し、激動する世界で日本の進路を切り開く歴史的一歩になると確信する」とし、対話を求める県民世論を高める運動を県民各層に呼びかけるアピール案を提案、満場の拍手で採択された。
 閉会あいさつでは、自主・平和・民主のための広範な国民連合・神奈川の代表世話人である原田章弘氏が、差別される朝鮮学校の生徒や、経済制裁による石油不足で寒い冬を強いられる朝鮮国民など、普通の人の暮らしに思いをはせることを大切にしようと呼びかけ、集会を締めくくった。


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