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労働新聞 2017年8月5日号 5面・国民運動

神奈川/
地位協定抜本改定求め
県民集会

知事に主権行使できる改定迫る

 トランプ政権が登場し、朝鮮への軍事圧力を強め、緊張が高まるなか、これに追随・加担する安倍政権は、沖縄の辺野古新基地建設を強行、これに反対し、沖縄県民は8月12日、3万人規模の県民大会を開いて断固阻止しようとしている。こうしたなか、「第二の基地県」である神奈川で7月28日、「米イージス艦衝突抗議! 黒岩知事は主権を行使できる独自案を! 神奈川から日米地位協定抜本改定のうねりを! 人権を守り、主権を取り戻す県民集会」が開催された。黒岩佑治県知事が昨年来県民に約束してきた地位協定改定の「県の独自試案」を提出する渉外知事会を目前に控え、主権が行使できる6項目の内容を盛り込み、県民世論を興し運動の先頭に立つよう県民の声を集めて迫った。


 集会は神奈川平和運動センター、厚木基地爆音防止既成同盟、自主・平和・民主のための広範な国民連合・神奈川などで構成する実行委員会が主催、各界の七人が呼びかけた。集会には、基地周辺だけでなく県内各地から、労働組合、地方議員、中小自営業者、農民、学生、市民など各界の県民が集まり、県民運動の第一歩となった。「集会決議」と併せ「県民へのアピール」を採択、「沖縄県民の島ぐるみの闘いと連帯し、結びつくことによって、国を動かす」と強調した。

米艦衝突事故の問題点
 集会冒頭、司会を務めた越川好昭・綾瀬市議会議員から六月に起きた米海軍横須賀基地所属のイージス艦「フィッツジェラルド」の衝突事故への抗議を契機に、十団体が共同して集会を開くに至ったこと、中野新(弁護士)、露木順一(前開成町長)、山本泰生(横浜国大教授)、元山仁士郎(元SEALDs琉球)、澤光代(元逗子市長)、内藤勝二(相模原市大野中地区商店連合会代表)、斉藤勁(元衆議院議員)の各界七氏によって呼びかけられたことが報告された。
 次に原田章弘・元横須賀市議が主催者あいさつを兼ねて経過報告を行った。
 原田氏は、一九九五年九月沖縄における米兵による少女暴行事件、二〇一六年五月の沖縄県うるま市での米軍属による女性殺人・死体遺棄事件など、重大事件が起こるたびに日米地位協定の抜本改定が提起されてきたが、いまだ実現できていないと指摘、改定のためには広範で強力な国民世論と運動が求められていると問題提起した。
 また、昨年来の全国知事会、さらには労働組合の連合でも日米地位協定の見直し、米軍基地の整理・縮小に向けた機運が出てきていることを紹介、こうしたなか、昨年二月の神奈川県議会で黒岩知事が、日米地位協定改定に向け「県の独自試案を出す」と答弁したこと、これを運動のきっかけにして、知事への要請行動を取り組んできた経過が報告された。駅頭署名活動や県内各地域での学習会を経て、六月議会を前に対県再要請行動を行い、「県の独自試案」に盛り込むべき内容として、@米軍への国内法適用、A日米合同委員会に代わる国会審議・承認と自治体の意見尊重など六項目の改定案を提出、知事が県民運動の先頭に立つことなどを強く求めた。
 そして最後に、県民、市民、そして各級議員がこぞって声を上げ、沖縄県民とも連帯し、日米地位協定の抜本改定を求める一大県民運動のうねりをつくろうと呼びかけた。
 呉東正彦・弁護士から、イージス艦衝突事故の問題点について特別報告が行われた。衝突したフィリピンの貨物船については海上保安庁の捜査が及んでいるが、もう一方の米艦については、地位協定がカベとなって十分な捜査ができていないとし、これでは事故の真相解明が行われず、したがって再発防止の有効策が出せるはずもなく、事故が繰り返し起こるのは必至と指摘、もし、原子力空母や原潜で事故が起きれば、その影響は計り知れないと警鐘を鳴らした。

基地周辺からの被害告発
 続いて、基地現場で闘ってきた団体から基地被害の実態が告発され、地位協定の改定が切実な課題となっている現実が指摘された。
 米軍厚木基地の現状について発言した厚木基地爆音防止期成同盟の荻窪幸一書記長は、横須賀基地に寄港した米空母の艦載機による離発着訓練が激しさを増していることや、厚木基地以外の嘉手納などの基地からの航空機の飛来が増加していること、また一四年から垂直離着陸機オスプレイの飛来が始まり、本土におけるオスプレイの拠点基地化が進められていることを指摘された。さらに部品落下事故も相次ぐなど、依然として昼夜を問わず、米軍機による爆音などの被害が続いている現状を告発した。米軍機の飛行差し止めを求め新たな第五次怒りの訴訟団を結成し、提訴に踏み切ると決意を表明、訴訟への支援と参加を呼びかけた。
 続いて、一昨年八月の米軍相模原補給廠の爆発火災事故について報告した監視団の沢田政司代表は、事故に際し実際に消火活動が行われたのは発災後五時間も経過してからであったことや、地元の消防局の関与も十分でないままに事故原因の究明に向けた動きがストップしている状況を報告、日常的に基地のなかにどのような危険物質が貯蔵・保管されているかも分からないまま危険性と隣り合わせで暮らさざるを得ないことに憤り、地位協定の抜本改定によって、消防局などがもっと関与できる必要性を強調した。
 横須賀基地の現状について、再び呉東弁護士が登壇、イージス艦の配備増加、米原潜の入港が相次ぐなど、基地機能が日々強化され、米軍による「航行の自由」作戦の拠点化が進んでいることを明らかにした。そして、海上自衛隊が「米艦防護」ということで、米海軍の軍事行動と一体化し、集団的自衛権行使が現実のものとなっている事実を指摘、基地負担の強化を叫ぶ米トランプ政権の登場でいっそう基地負担が強いられ、その結果、横須賀基地をはじめ、県内にある各米軍基地の機能強化が行われる危険性について指摘した。

沖縄からのメッセージ
 次に「沖縄からのメッセージ」が前泊博盛・沖縄国際大学教授からの届けられ、元山氏から読み上げられた。メッセージで前泊氏は、日米地位協定にはこの抜本改定を阻む「無関心の壁」「無知の壁」「無気力の壁」など「八つの壁」があり、これを突き崩すことが運動に課せられていると指摘された。そのうえで「地位協定問題は、主権国家、国民主権の実態、法治国家としての矜持(きょうじ)など、戦後日本の政治の『質』を問う重要な試金石」と地位協定改定の意義について鮮明に提起した。
 また、川平朝清・東京沖縄県人会名誉顧問からも「応援メッセージ」が寄せられたことが紹介された。
 さらに、「私たちの改定案について」と題して、憲法を守る神奈川の会代表の中野新・弁護士が、黒岩知事が提出する「県の独自試案」に盛り込むべき内容を報告、「第二の基地県である神奈川県民の願いに応え、渉外知事会の会長としてリーダーシップを発揮する」ためには、原則として米軍や米軍基地内にも日本の法令が適用されることを明確にすること、日米合同委員会にある「基地権密約」の破棄、事件・事故を起こした米兵などについては無条件に日本が刑事裁判手続きが行えるようにすること、米軍基地の提供など地位協定の運用は日米合同委員会に代わって国会が審議・承認することなどを盛り込むよう求めた。
 「県議会からの報告」として、日下景子県議会議員(民進党)が発言、県の独自案をしっかりとしたものにし、「国の専管事項」とされてきた地位協定の問題に少しでも風穴を開けるため、「皆さんの運動と連携して県議会としてもがんばっていきたい」と決意を述べた。
 最後に、山本泰生・横浜国大教授から「主権が行使できる『県の独自試案』を渉外知事会に提案する」こと、「(知事が)抜本改定向けて、県民運動の先頭に立ち、国に強力に働きかけること」などを求めた「集会決議」が提案され、満場の拍手で採択された。
 続いて加藤久美・中井町議会議員から「県民へのアピール」が提案され、参加者全体の大きな拍手で確認された。
 なお、沖縄県の地元紙「琉球新報」が七月三十日付で今回の集会を報道、沖縄県民にも神奈川で始まった県民運動が伝わった。


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