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労働新聞 2019年5月25日号

このままでは「日本消滅」だ

  デタラメな安倍政治に怒り

埼玉県・古谷 邦夫

わが幸手・杉戸
 政府は「まち・ひと・しごと創世」をうたい文句に地域振興の掛け声をかけ、各県に振興計画を出させている。その進行状況を毎年チェックする県の有識者会議があのだが、その議事録のなかで埼玉県幸手市について「消滅可能性都市に指定されている…企業に勤めている人の六五%くらいは中小企業で、年収二百五十〜三百万円、退職金ももらえない…地方に住んでいる兼業農家のおじいちゃん、おばあちゃんは貧しい。孤独死される方も多く、民生委員もまわりきれない」と述べられている。
 私はこの幸手市の隣にある杉戸町に住んでいる。埼玉は農村地帯だが東京のベットタウンとして人口が急増した。しかしそんな中でも幸手・杉戸には交通の利便性がない。田中角栄政権の頃から住宅地が開発され団地も造られたが、東京に通うといっても一時間半もかかり、遠すぎる。鉄道線路も一本しかない。
 また県境で川に挟まれているため、橋を渡らないと隣の県に行けないという地理的問題がある。昔はキャサリン台風というのがあって川が氾濫し大変な被害が出た。どうしても川の周辺は地価が安くなり、結局低所得者が集まってくる。国交省は百年に一度の洪水に耐えられるスーパー堤防を造ろうとしているが、工事は一部の地域に偏っていてこの幸手・杉戸地域は見捨てられている。だから洪水が起これば人災ともいえる。
 幸手市は工業団地を造ったが、この団地は元々は中川の河川敷だった場所だ。堤防を壊して工業団地をつくった。場所が不便なので安く分譲しないと企業が来てくれない。来た企業は町工場に毛の生えたような工場が多く、それで地域が潤うということにはなっていない。最近は近くに圏央道が走るようになり、新たに工業団地ができ地域が潤っているようなことを市は言っているが、大半は物流団地で、ほとんど新たな雇用は生まれていない。
そんなことで財政は貧困、それでも住民生活を充実させようと病院を建てたが、その病院は近くの久喜市から「四十三億円出すから」と誘われて引っ越してしまった。結局自治体間の競争に負け、ますます低所得層だけが集まる地域になってしまった。
 平成の大合併もあったが、近隣の中心市である春日部市や久喜市から貧乏である幸手市と杉戸町は見捨てられてしまった。

私の仕事について
 そういう中で雇用といっても、大きな企業は来ないし、地域独自の産業もない。結局、規模の小さな道路工事など公共事業に頼っている。それも道路整備、水道管や橋の補強など、老朽化した施設を更新するのが精いっぱいだ。建設関係の労働者といっても比較的高い給料をもらう大学出の中堅労働者は東京の方に流出してしまい、残っているのは高齢者が大半だ。
 私は、警備会社から派遣され、道路工事の時、交通誘導の仕事をしている。超低賃金だ。給料は警備会社からの最低保証は一銭もなく、日当は七千八百円で、ここ十数年、日当は上がるどころは少し下がっている。仕事は多い時でも月二十日くらい。今は年度初めなので月十二日くらいしか仕事がない。月収が十万円に満たない時もある。
 以前はスーパーの駐車場の誘導の仕事に派遣されていて、一応は毎日仕事があった。そのスーパーもイオンとか超大型店の進出で撤退してしまった。
 最低保証のある人とない人は、雇用形態で区別されているわけではなく、年齢を基礎に会社の一存で決まってしまっている。三十歳代など若い人は日給以外会社からの最低保証があるが、大学を出ても月十五万円ほどだ。これではまともな生活はできない。警備会社の労働者は一時五十人ぐらいいたが、若い人は来ないし、年寄りは辞めていく。今は半分くらいになってしまった。

外国人労働者の状況
 零細な下請けの土木・建設会社には、きつい、汚い、危険の3Kの仕事が回ってくる。下請けのいちばんきつい仕事は安い給料で外国人に頼ることになる。以前はブラジル、最近は技能実習生としてベトナムの労働者が使われている。かれらには零細の仕事の中でもいちばんきつい仕事が押し付けられている。
 具体的には水道管を取り返るための穴掘りのような仕事で、二メートル近く穴を掘って水道管を埋設するのだが、水道管やガス管が入り組んでいるため、ユンボでは掘れないで手でやるしかない。工事計画に沿った一日のノルマがあり、残業になる。ベトナム人などは他県から一時間半くらいかけて仕事にくる。九時ぐらいまで残業になり、十時半頃に宿舎に帰り、翌日また六時に起きて仕事に来る。こんな毎日で食事とかどうしているんだろうと思う。
 小さな土木会社はNPO法人から実習生を紹介されて、それをアパートみたいなところに住まわせて仕事をさせる。「タコ部屋」みたいなところも多い。彼らは借金して日本に来ているから、きつい仕事にもよく耐えてがんばる。それでも日本語が分からないから仕事の微妙なところですれ違っている。仕事を間違ってたりするとすごくどなられたりする。
 政府はデタラメを放置していながら「アベノミクス」「地方創生」「働き方改革」「改正入管法」と聞こえのよいスローガンを連発しているが、地域の問題は何一つ解決していないばかりか、悪くなるばかりだ。このままの政治が続けば「地方消滅」どころか「日本消滅」である。


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