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労働新聞 2019年3月5日号 投稿・通信

「日本は責任果たしてきた」は
本当か?


あまりに恣意的な歴史の理解

コリアNGOセンター
東京事務局長・金 朋央

 今朝のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の特集は米朝首脳会談だった。当然の流れで話題は日韓関係にも及び、歴史問題も何回か出たが、そのすべてが「日本は何度も謝ってきた」という前提で話されていた。コメンテーターとして呼ばれてた国際政治が専門という大学教授は「日本の子どもが海外で、日本は謝ってないと韓国系の子どもたちにいじめられている。何とかしないと。日本は毅然とした態度を」と、まさにネトウヨが繰り返す虚実の疑いの濃い逸話を取り上げていた。しかし他の誰も反論しない。
 しかし、何をもって日本は謝ったと言っているのか。これをきちんと説明しているものを、これまでニュース番組や新聞記事で見た覚えはほぼ皆無だ。
 この点について引用されるとしたら、一九九五年の村山談話、日本軍「慰安婦」問題ならば九三年の河野談話になるのだろう。九三年、当時の細川首相が「侵略戦争だった」と発言したことが衝撃を与えたことを当時大学生だった私は今も記憶している。
 ただ、これらは首相や官房長官の談話や所信表明などの発言であって、国会決議ではない。しかも「謝罪」という単語は絶対に使わず、意図的に「お詫び」という法的責任を認めない単語しか使っていない。このことは当時から当事者や市民団体が指摘してきたことだが、この間のメディア報道で取り上げられたことがあるのだろうか。そもそもこれらの談話が、植民地支配と侵略戦争が終わった後、半世紀も経って出てきたことをどう考えるのか。
 さらに日韓間について言えば、問題が「解決された」ことの「根拠」とされている六五年日韓請求権協定や、国交正常化となる日韓基本条約には、実際には「謝罪」も「お詫び」も盛り込まれていない。この事実はほぼ報道されない。日本が韓国に出したおカネも、民間投資を含めれば半分以上が貸付(有償)であり、それも現金ではなく物品・役務の形で提供されている(これは韓国に対してだけではなく、他のアジアの被害国に対しても同じ)。
 あまりに歴史の流れを無視している。事実を提示しそれをどう理解するかの「価値観」のレベルの議論ならまだしも、前提の理解・解釈があまりに恣意的だ。「戦前の日本が何をしたのか」と、「戦後日本が何をしたのか(しなかったのか)」、きちんと検証してからでないと、まったく話にならない。
 冒頭の番組に出演していた弁護士が、日韓間の戦後補償問題を「もう解決済みなのに。韓国とどう対話したらいいか分からない」と発言してるのを見て、この人にはとても人権侵害事件を任せられないと思った。
 日本政府・軍の加害責任と、それがいかに放置されてきたかという問題が、なぜこんなにタブーになってしまったのか。昔からそうだが、現在に至るまでに、いつの間にか「日本は誠実に責任を果たしてきた」という錯覚が深刻なまでに定着している。
 では聞きたい。植民地と戦争による侵略の事実に対し、日本政府は、日本社会は今まで何をしてきたのか。具体的に説明してほしい。結局、それも感覚で話してるんでしょ、と思ってしまう。
 このような主張をすると、「在日コリアンだからそう主張するんだ」と思われる人もいるだろう。だがそうではない。私の意見は日本の中の戦後補償運動を通じて築き上げられてきたものだ。昔からこの問題に取り組んできたアジア各国の当事者や日本等の支援者の語る言葉と論理の方がずっと筋が通っていると思ってきたからだ。
 過去清算と歴史認識問題に蓋をしながら、外交問題を何とかしよう論理はやはり私は受け入れられないと今回再確認した。凄惨な被害を受けた人たちを両国関係の「厄介物」にしてしまうことになるだから。
 被害者が誰で、加害者が誰なのか、その間で何があったのかに焦点を当てるべきだ。
 私は直接の被害者でも加害者でもない。この酷い人権侵害の被害者が生存されている現在に、何とかしようとするかどうかという点での責任性が問われているというポジションにいる。その点で日本の人たちと変わりないと思ってる。選挙権の行使などでできることは異なってくるとしても。


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