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労働新聞 2018年4月5日号 投稿・通信

「運転手不足」で大手は値上げも 
中小・下請けには恩恵ナシ


手取り減少し生活はたいへん

熊本県・流通業労働者 松本 隆雄

 「労働新聞」読者の皆さん、こんにちは。
 私は地方の小規模な営業倉庫で事務員として働いています。親会社が繊維会社なので繊維製品の扱いが多いのですが、他にもさまざまな商品の保管を行っています。地域によって異なると思いますが、最近の私の地方の営業倉庫の動向を書いてみたいと思います。
 
運転手不足の影響
 営業倉庫は自社でトラックを所有し運送業を兼ねている所が多いのですが、私の働いている倉庫は規模が小さいためトラックは所有していません。このため荷主から保管商品出荷の指示があった時は地域の運送会社の営業所にトラックの手配を行っています。
 昨年以降、各運送会社とも運賃の値上げと一回に出荷する商品の数量制限を言ってきています。ドライバーの数が足りないからです。地域の運送会社の営業所担当者の話では、ドライバーが給与面で条件の良い大手の運送会社や大都市の運送会社に流れていて、新規のドライバーの募集もうまくいかず、ドライバーがいつも不足しているとのことです。
 私の働いている倉庫は、親会社の製品や近隣の営業倉庫のアンダー(下請)の商品の扱いが多いので、それほど影響は出ていません。しかし近隣の工場では、商品がオーダー通りの数量で出荷できなかったり、期日通り出荷できなかったりで、影響が出ていると聞きます。
 私の職場では、近隣のホームセンターの商品(家具・住居用品等)を扱っています。例年十一月に入ってから商品が入り始め、二月から出荷が始まり三月中頃までには商品はすべて出ていきます。三月から四月にかけては入学・就職・転勤の時期で商品が売れるからです。
 ところが今年は商品が出て行きません。「引っ越し難民」問題の影響です。引っ越し難民は、皆さん御存知のように、引っ越しをしたいのにできない状況の人たちのことです。引っ越し業者の受け入れられる量に限りがあり、引っ越し料金が上がってきていることによるものです。こうした問題が私の住んでいる地域でも起こっていて、その影響で売れ行きが鈍いため、商品の出荷が遅れています。ホームセンターで扱っている商品なのでそれほど値段の高い商品ではないのですが、引っ越しを料金が下がる時期に遅らせたり、必要な生活用品を地元で揃えず引っ越し先で購入しているからです。昨今の運転手不足がこのようにさまざまな所に影響を与えています。

利益増は内部留保へ
 全国で運送会社の運賃や作業料金の値上げが続いています。マスコミはその理由を「運転手や作業員の給料が上がっている」と報道していますが、果たしてそうでしょうか。
 実際のところは、運転手の給料はほとんど上がっていないと思います。私の働いている倉庫に来る運転手は、大手運送会社の下請け会社の運転手が多いのですが、嘱託・契約社員の人が大半で、賞与もなく、身分は不安定で、固定給は低く、一回運送するごとに報酬をもらう給与体系の人が多いようです。遠距離を運送するほど手取りが多いので、無理してでも一昼夜かけて遠距離の運転をしている人も多くいます。
 運賃・作業料金が上がっているといっても、それは大手の話で、中小の運送会社は荷主の了承が得られず、値上げも小幅に止まっているようです。大手運送会社の下請けで運送する場合、値上げした料金は大手運送会社が取って、下請けの運送料金はほとんど上がらず据え置きのままも多いようです。
 トラックの走行速度の制限、積載重量の制限、運転手の労働時間の規制を理由として、大手運送会社は運賃・料金の値上げを実現していますが、それは大会社の経営の話で、増加した利益は内部留保に回るものの、その中で働いている労働者にはそれが回っていないのが実状です。
 数日前に配達にきた全国的に名の通った宅配便会社のドライバーは、「給料の手取りはほとんど上がらず、拘束時間も長く、サービス残業は常態化している」とこぼしていました。
 中小の運送会社は料金値上げも小幅に止まり、大手会社の下請けでは料金が据え置かれ、どこも経営が苦しく、中で働いている労働者の手取りはほとんど増えておらず、社会保険や税金のアップでむしろ手取りは減っているのが実状ではないでしょうか。
 私の働いている倉庫の料金も十数年据え置きです。値上げを提示しても、荷主の了承が得られず、料金は据え置きのまま、値下げを言ってくるところまである有様です。
 今の職場で働き始めて十年以上経ちますが、給料はわずかしか増えていません。社会保険料や税金のアップで実質はむしろ減っています。
 マスコミの報道では、運送会社は料金値上げで働く人の給料が上がり、労働条件も良くなっているかのように言われていますが、それは大手の名前の知れたところです。中小の会社で働く人は給料も上がらず、労働時間も減っていないのが現状です。
 今の政府の経済政策「アベノミクス」で潤っているのは、富裕層や大企業ばかりです。私のような地方の中小の会社で働く人間は、何の恩恵もありません。
 今の政治の構造を変えないと、労働者が働いて充実感を得られる政治はいつまで経っても実現しません。財界・大企業・多国籍企業・富裕層のための政治から脱却、真に人民・労働者の利益になる政治を実現していくため、私も微力ながら職場・地域社会でがんばっていきたいと思います。


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