日本労働党政府綱領(案)

(二)新しい日本の外交、安全保障政策
−−独立・自主、アジアの一員として生きる平和日本

 (4)わが国の平和と安全のための安全保障・防衛政策


1、安全保障の基本的考え方

 新政権は、民族の独立と国家主権の確保、国民の安全を守るための安全保障・防衛を重視します。
 国内で国民に信頼され安定し、世界で尊敬される国家・政府を築くことが最も重要な安全保障の基盤です。特に、国民が進んで守ろうとする国家・政府でない限り、いかなる武力をもってしても、国土と国民の生命・財産を守ることはできません。また、近隣国家の発展と地域平和に貢献し、敵対国家を作らないのはもちろんのこと、わが国の生き方への支持を得られることは国の安全、平和にとって決定的に重要なことです。近隣諸国をはじめ世界のあらゆる国と友好関係を築く外交を重視し、世界的な平和・不戦の体制を構築するため努力します。
 戦後自民党政治のように、日米安保条約という他国への依存と中国・アジア敵視への加担、そして自衛隊強化の軍事力主義を徹底して否定しますが、もちろん非武装の考えはとらず、祖国防衛の国民的合意を基礎に最低限の武装力を保有します。人類が民族国家に分かれて武装し、それぞれが「国益」をめぐって争っているこの世界で、理想とはいえ非武装では国民と国土を守れず、現実の国際政治に対処できないことは明白だからです。
 しかし、軍事力唯一主義の考えはとらず、総合安全保障政策を進めます。敵対国をつくらず友好国を増やす外交を重視します。過去の侵略戦争の歴史反省の教育、その後の戦後50年間の対米従属下のアジア敵対の歴史反省の教育、広島・長崎の経験をもとにした非核・平和の教育、さらに日米安保下の日本の反省・民族独立の愛国心教育を重視し、平和と独立の気概に満ちた国家を実現します。また、科学技術や工業力の向上に努めるとともに失業を輸出するような集中豪雨的な輸出、安価な労働力を求め陳腐化した技術しか移転しないようなアジアとの経済関係を打破し、近隣諸国を中心に世界全体との共生をはかります。また、食料やエネルギーの自給・安定的確保と備蓄など、総合的に進めます。アジア諸国とともに集団安全保障体制を構築します。


2、自衛隊について

 武装は必要ですが、自衛隊はアメリカの要求で作られ、強化され、作戦計画も指揮命令系統も今日に至るまで一貫して完全に米軍に握られ、わが国の防衛力とはいえない状況です。しかも在日米軍は基地を横田・横須賀・厚木をはじめ「首都東京ののどもと」(自民党「21世紀委員会報告」)に展開し、さらに「それらの基地を日本の自衛隊が守っている」(同)仕組みでした。こうした対米従属の自衛隊でありながら、アメリカの要請もあって、膨大な予算がつぎ込まれ、「専守防衛」とは名ばかりで、世界有数の軍事力を有するようになっています。
 新政権は、最低限の防衛力としての武装力をもつにしても、こうした自衛隊をそのまま引き継ぐことはできません。再編します。
 しかし、個々の自衛隊員、また部隊について、それ自身としては敵視するものではありません。わが国国家主権の完全な回復をめざした国民主権の行使である自主、平和、民主の政治的変革に対して、組織的抵抗、妨害を企てない限り、自衛隊のいかなる将兵も処罰されることはありません。
 むしろ愛国的な自衛隊将兵に、自主、平和、民主の国をめざして、共同の努力を進めるよう、積極的に呼びかけます。愛国的な将兵は、新政府を作るための統一戦線の構成部分です。新しい政権になって、新しい国民軍の一部を担おうとする愛国的将兵は、その希望がかなえられます。自衛隊員が新しい軍隊に参加するかどうかは、個々の隊員の自主的判断にまかせられます。こうした方向を支持・宣誓できない売国的将兵は除隊になります。新政権の方向を支持する除隊者は、一定期間、他の国家部門で仕事と生活を保障されます。


3、新しい国民軍の形成

 新政権は、国民の団結力・闘争力を基盤とし、その力を国家防衛の最大の基礎としますが、平時には、中核としての新しい軍隊を、国民合意の上で組織します。それは、新政府の方向を支持し、祖国を防衛しようとする青年の積極性に依拠した志願制の国民軍です。国土への侵犯を防止するための専守防衛に徹した最小限の軍事力を持ち、作戦行動は領土・領空・領海の範囲を越えないことを厳守し、いかなるかたちであろうとも国境を越えた作戦、派遣、駐留を認めません。
 志願制で少数精鋭・近代兵器で武装された数万の将兵からなる軍隊で、祖国防衛が任務です。防衛費については上限を決めます(たとえば、わが国を除くアジア諸国の軍事費総計の一定割合以下とか)。
 こうした真に「専守防衛」の軍事力を、決して国境の外へは出ない、出れない最小限防御力という意味で「クモの巣型」安全保障という人びとがいますが、言い得ていると思います。こうして、確実に侵略は阻止するが、外にはいっさい危害を加えない、加えることのできない軍事力に徹することが重要です。武装は、専守防衛型の武器に徹しますが、先端的技術水準が反映され、ミサイル防衛網などハイテク型軍備体系を築く必要があります。
 また、軍の配置は、自衛隊のような内乱対処型ではなく真に専守防衛型にします。首都圏の旧米軍及び自衛隊の軍事施設は閉鎖し、跡地は都市公園などに役立てます。
 軍隊に対しては、民主主義的な愛国政治教育を徹底させるとともに、シビリアン・コントロールを徹底させなければなりません。また、平時においては隊内での兵士の政治結社の自由、団結権など民主主義を確立・保障します。
 軍事情報の公開を徹底させます。また、近隣諸国軍隊との友好交流を重視します。こうして近隣諸国軍隊の将兵と友人となり、広範に信頼関係を築き、近隣諸国とは「銃を交えられない軍隊」にしておく必要があります。


4、核武装の永遠の放棄

 新政権は、絶対に核兵器はつくらず、持たず、持ち込ませない政策を堅持します。その主旨の非核法を制定し、将来、国民合意で憲法を改正する時には、永久の核武装の放棄を明記するようにします。広島・長崎の経験をもつ国というだけでなく、経済的にも技術的にも核武装可能な水準をもつ国であるにもかかわらず、世界ではじめての永世非核国を貫く、こうしたわが国の選択は、核兵器廃絶と世界平和の有力な推進力となるでしょう。また、武器輸出禁止3原則を堅持します。
 財界・支配層の言動からみて、その一部にはわが国の核武装計画がすでに存在するのは間違いありません。たとえば、小沢一郎氏が会長を務める「日本戦略研究センター」の研究報告の中にはその旨の記述が随所に見受けられますし、宮沢喜一氏も河野洋平氏もその発言の中で、小沢路線を進めれば核武装をせざるを得ない趣旨のことを危惧していることにもそれはうかがえます。わたしたちはこうした危険きわまりない核武装の方向に断固反対です。


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