日本労働党政府綱領(案)

(二)新しい日本の外交、安全保障政策
−−独立・自主、アジアの一員として生きる平和日本

(2)アジア諸国との関係について−−アジアが必要とする日本に


1、アジアの一員としての日本

 わが国は、アジアの一国として、経済だけでなく政治や安全保障でも、さらに社会、文化、学術、環境などあらゆる方面でアジア重視、アジアに生きる国として進路を定めます。とくに歴史反省に立って、すべての国家、民族の対等平等、内政不干渉、国家主権と民族的文化・伝統の尊重などの原則を確立・貫く必要があります。
 マハティール・マレーシア首相が提唱した、アメリカ主導のアジアではなく、相互協力で自主的な発展をめざすEAEC構想を、重要な問題提起として日本は受けとめ、断固支持します。
 わが国は、アジア諸国の自主的な経済発展の努力を支持し、安価な労働力を追い求める植民地主義的・垂直分業的経済関係を改め、アジア諸国が必要とする進んだ技術移転を積極的に進めます。水平的な分業体制で、アジア地域の経済協力体制を進めます。
 また貧困と格差是正の闘いを支援するのための公的援助を増やします。民間資本投資については、現地国の法律・規制を完全に遵守するのは当然のこと、なんらの特権も求めてはならず、進んで友好協力に努めなければなりません。とくにアジアでの公害防止、環境保全で各国の主権と自主的取り組みを尊重し、支持して、積極的に貢献します。
 アジアから、国費を中心に留学生を年間、数10万人の規模で受け入れるなど、交流計画を進めます。また日本から、アジア諸国への留学生派遣、児童生徒学生のアジア諸国との交流を強めます。
 長い間、帝国主義の支配、干渉、植民地主義の犠牲となり、戦火に見舞われてきたアジア諸国ですが、いま、その経済的発展は目ざましいものがあります。さらに、今後、21世紀にかけて、アジアの発展が予測され、世界経済での比重は高まると予測されています。
 21世紀はアジアの時代と言ってよいでしょう。
 アジアの最近の発展の重要な特徴は、アジア諸国間での相互依存関係が強まっていることです。日本もそうですが、全体としてアジア諸国は、第2次大戦後アメリカに経済的に依存して発展してきました。ところが最近では対米依存から脱却し、域内での相互依存関係が急速に発展し、域内での自立的発展の方向が出てきています。例えば、日本を含むアジア諸国の地域別輸出依存度は、アジア域内貿易が86年に30・9%から92年には43・1%に上昇しました。2000年には50%に達すると予測(野村総合研究所)されています。他方、対米依存度は、86年に34・1%だったものが92年には24・2%まで低下、2000年には20%程度と予測されています。一方、世界経済は、今後ますます、地域的結びつきを強め、ブロック化の傾向を強めるのは避けられないと見られています。
 こうした世界で、この発展するアジア、中国と、わが国はどのような関係を結ぶか。21世紀とさらに将来のわが国の命運にかかわる最大の問題です。
 これまでのような、アメリカだけを向いた日本から、アジアの一員としての日本へ転換し、アジア諸国の発展に協力し、名実ともに「進んだアジア」を実現するために貢献する日本にしなくてはなりません。
 アジアは、帝国主義と植民地主義の犠牲となった20世紀の歴史を清算し、21世紀に新たな展望を開こうとしていますが、とくにわが国は明治以来のアジア植民地化と侵略戦争の歴史をもち、第2次大戦後も、中国、朝鮮、ベトナムをはじめアジアの戦乱を米国側に立ち加担し、「特需」で経済の飛躍的発展をとげた歴史をもっています。この反省に立ってアジアの発展に積極的に貢献すべきですし、それができれば、わが国は世界史の新たな歴史を切り開く役割をはたすことになります。こうした中でこそ、日本の繁栄も可能です。


2、戦後処理について

 新政府はまず、台湾植民地化、朝鮮併合以来の植民地主義による、中国、その他のアジア諸国への侵略、その結末としての太平洋戦争を引き起こした国家としての戦争責任を明確にし、歴史への厳しい反省と国の内外での「戦後処理」をきちんとします。
 なによりも朝鮮民主主義人民共和国との間での、植民地支配と侵略戦争に対する謝罪と国家賠償を含む、戦後処理を急ぎます。
 朝鮮人、中国人などの強制連行、元従軍慰安婦などへの補償を、国家責任として実現します。
 国内では、植民地主義と侵略戦争を反省し、2度と戦争を引き起こさぬよう平和と友好連帯の感情をはぐくむ歴史教育を重視します。アジア諸国の協力で歴史事実の究明と保存、教科書編纂など進めます。わが国の過去の植民地主義と侵略戦争の肯定・賛美に対して、一定の事項については表現の自由などとの整合性を得つつ、法的禁止も検討します(靖国神社公式参拝とか侵略戦争賛美とか、軍国主義宣伝など)。原爆被爆者の国家補償など、第2次世界大戦の犠牲者への補償措置を実現します。


3、戦後の日米安保体制下での50年間の従属外交への反省と処理

 新政権は、戦後一連の政府による、日米安保体制下での、朝鮮戦争への出撃拠点としての加担と日韓条約以来の分断固定化・北敵視政策、日台条約による中国敵視・統一の妨害以来、日中国交回復までの中国包囲網の形成、ベトナム戦争、湾岸戦争への加担など、自主的で平和なアジアをめざす諸国の努力への敵対・干渉を深く反省し、独立・自主、対等平等、平和の外交を進めます。
 対中国政策では、「日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべきであり、また、樹立することが可能である」、それは「両国国民の利益に合致することであり、また、アジアにおける緊張緩和と世界平和に貢献するものである」という「日中共同声明」(1972年)と「日中平和友好条約」(1978年)の原則を誠実に厳守し、各方面での平和友好協力関係を拡大発展させます。
 とくに「日清戦争」以来の、わが国の台湾植民地化を反省謝罪し、敗戦で放棄した台湾が、中国領土の不可分の一部であることを明確に宣言します。中国の統一を支持し、いかなる形であれ、内政に決して干渉・介入しません。台湾独立に手を貸すようなあらゆる策動を許しません。
 また、アメリカ政府のすすめる、人権問題などいかなる形式・問題であろうが、中国敵視政策に反対します。
 新政権の対朝鮮政策の基本は、朝鮮の分断に手を貸さず、朝鮮のことは朝鮮人民自身に任せ、統一された平和な新しい朝鮮人民の国家と友好関係を樹立し発展させることです。そのため、朝鮮民主主義人民共和国政府が提唱している、自主的・平和的統一をめざす政策を断固支持します。また新政権は、南朝鮮からの米軍撤退を求める朝鮮人民の闘いを断固支持します。これは朝鮮の分断に手を貸してきた日本の戦後外交の総括に立つ新政権の義務です。
 新政権が、朝鮮の北部には朝鮮民主主義人民共和国政府が存在し、南部には米軍の軍事支配と大韓民国政府が存在する状況下で樹立された場合は、朝鮮民主主義人民共和国政府と即時に国交を樹立し、友好協力関係を全面的に発展させ、外交的空白期間の政治的・経済的・社会的な交流の遅れを補足する特別の措置をとるようにします。
 また、南側の韓国政府との関係は、旧政府の外交関係を継承し、維持しますが、北側との関係でバランスを考慮しながら両国関係を発展させるようにします。
 このように侵略戦争の歴史はもちろんのこと、1945年以後の歴史を直視し、その総括と反省をすることなしに、アジアの近隣諸国との信頼関係を構築することは不可能です。


4、地域の政治的安定・安全保障の推進

 アジア地域での核兵器の使用を禁止し、さらに核兵器廃絶をめざす地域条約体制を推進します。アメリカなど地域外の国が核兵器を持ち込むことを許さず、すでにある核については撤去を求め、核兵器の拡散・新たな核兵器所有国の出現を許さず、また、保有国に対してはすでに中国政府が行っている「核先制不使用宣言」のような国際公約の厳守を求めるなどの、アジア地域核兵器不使用条約体制を進めます。
 わが国からの米軍基地の一掃を前提に、アジアの国々が、いかなる形であれ外国軍隊の駐留をいっさい許さず、外国軍隊の基地をつくらないことを求めます。
 アジア諸国の相互理解を前提に、アジア集団安全保障体制をめざします。アジア地域の不安定問題、あるいは地域紛争については、地域の当事者・国家間での問題解決と地域安定のための国際会議など、関係諸国の話し合いによる平和的解決が絶対に必要です。こうした積み重ねと相互信頼の形成を前提に、地域集団安全保障体制をめざします。
 また、太平洋地域の相互理解と安全保障の会議なども必要です。その場合の重要な前提は、あらゆる覇権主義を許さないこと、それに地域のすべての国の参加、すべての参加国の対等平等です。こうした安全保障形成では、アメリカをあらかじめ排除することはしませんが、アジアが自主的につくることがなによりも基本です。小沢一郎氏らが唱えるような、アメリカ中心のアジア安保体制、APEC構想などに反対し、EAECなどアジア諸国の自主的な経済発展、地域安定の提唱、努力を支持します。


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