日本労働党政府綱領(案)

 (四)政治制度、憲法問題について
−−新しい民主主義国家の実現をめざす

(1)今日の議会制民主主義の各方面の不平等を改める


 新政権は、新しい、より民主的な政治制度・仕組みをつくりあげます。
 今日わが国支配層もまた「新しい国づくり」をめざし、政治改革、地方分権など第2次大戦後形成された諸制度の見直しを進めています。憲法も問題となっています。しかし、これはむしろ民主主義のいっそうの制限・破壊で危険で時代遅れで、わが国がとるべき方向ではありません。
 わたしたちは、憲法の精神を生かし新しい民主的政治制度をめざし、政治・経済・社会のすべての方面で民主政治の徹底化を進めます。
 ここでは、今日大きな争点になっている重大な問題、すなわち政治改革、地方分権、憲法問題、以上3つを取り上げてわたしたちの政策を述べます。

1、選挙権年齢を引き下げる

 20歳選挙権年齢を引き下げ、18歳以上の日本国民は国政選挙の選挙権を有するものとします。
 また、衆参議院議員の被選挙権(現行は衆院25歳、参院30歳以上)についても18歳以上の日本国民は有するものとします。
 若者が選挙に参加し、国会議員となることによって政治的民主主義はいっそう拡充され、強化され、新しい国づくりに活力がうまれるでしょう。これはわが国の前途にとって有益であると確信します。


2、選挙制度の民主的改革

 衆参議院議員の選挙制度を改革します。国民の政治的意志、民意を比較的正確に反映させることができ、また、一票の価値が平等になる点でも、民主主義的な制度である比例代表制とします。当面、衆議院は都道府県単位の比例代表制、参議院は全国単位の比例代表制とします。
 戦後の中選挙区制度では、いわゆる「死に票」という形で、意思が議席に結び付かず、代弁者を国会に送れない有権者が大量に出ました。また、政党ではなく個人を選ぶという制度は、長所もありますが、政党政治からみると変則的です。ましてや、選挙区での地盤が財産となって、世襲されるといった事態は異常そのものです。
 中選挙区制度を否定してできた、「小選挙区比例代表並立」の新しい選挙制度でも事態は同じか、改悪でしかありません。比例代表制を加味しているとはいえ、過半は小選挙区で、そこでは「死に票」は中選挙区の比ではありません。ほとんど民意は政治に反映し難くなり民主主義はいよいよ破壊され、多様化した民意にますます対応できず、議会政治はいわば空洞化します。選挙制度という意味でも、小選挙区比例代表並立制度は明らかに改悪です。
 議会制度として本来は、1院制がより民意の変動を反映した政治を可能とします。もともと、2院制(上院)は普通選挙制度が採用されるにともなって、たとえば日本では貴族院から始まったことに端的に出ているように、国民の選択で政治体制、ないし政策が激変しないための安全弁としてうまれた保守的な制度です。
 したがって新政権は1院制が望ましい選挙制度と考えますが、憲法で衆参2院制が規定されています。そこで国民合意で憲法改正を行う際には問題を提起しますが、それまでは衆参の2院制を継続します。
 また、全国政治のための選挙制度としては、全国単一の完全比例代表制がより完全に民意を反映しますが、全国の地域に差異があり、都道府県といった行政組織もある現状では、国会議員とはいってもある程度は地域代表の性格も考慮する必要もあります。そこで、衆議院については都道府県を単位に、参議院では全国を単位とする完全比例代表制とします。衆議院選挙では、都道府県で議席を得なかった政党のいわゆる「死に票」、また、議席を得た政党でも端数として表れるいわゆる「死に票」については、全国範囲で集計し、何らかの議席配分による補正措置がとられます。


3、選挙活動の完全な自由

 新政権は、国民主権を守り、拡充する立場から、すべてのものに選挙活動の自由を完全に認めます。個別訪問の自由、立ち合い演説会の開催、ポスター展示やチラシ配布の原則自由、テレビなどの利用など選挙活動の自由を完全に保障します。
 新たにつくられた政党に対する公的助成制度、すなわち国民の税金をつかって政党に資金援助する仕組みを廃止します。この制度は、すべての政党、あるいは無党派個人に対等に資金援助を行おうとするわけではありません。議員数や得票率で制限を設けて、既成の大きな政党に有利に、また、少数政党や無党派議員を排除するように、そして新しい政党が登場できないような仕組みになっています。これでは国民のなかにある多様な政治的な意見や要求を国政に反映させることができなくなることは明白です。また、公的助成を通じて国家による政党への管理、あるいは政党の「国家政党」化が促進されることも明白です。政党への公的助成は、政党を社会から遊離させ、国家に依存する傾向を強めるでしょう。公的助成制度は、憲法に定めた表現の自由、結社の自由、そして国民主権を侵害するものです。
 もちろん、この新しい制度以前も、選挙活動の自由は実質的に保障されていませんでした。そもそも立候補するのに供託金制度があり、次々引き上げられてきました。今回の改悪で衆議院は600万円を供託しないと立候補できないことになりました。金持ち以外は被選挙権を持たないということです。しかも次々と引き上げられ、今回は30人を立てなければ政党とならず、この供託金だけで1億8000万円も必要です。個人の立候補では、得票に大きく影響するテレビ・新聞などほとんど利用できず、政党でもそれも大政党ほど多く利用できる仕組みです。かつて存在し、各候補者まったく平等であった「立ち会い演説会」は廃止されてしまいました。街頭での宣伝すらも、午前8時以前はできなくなるなど制限が強まっています。要するに金持ち・大政党に圧倒的に有利な制度です。
 新政権はこうした差別的な制度を改め、選挙活動に実質的な自由を保障します。


4、選挙違反・政治腐敗は厳罰に処す

 選挙での買収・供応と強制を厳格に禁止します。企業献金も全面的に禁止します。買収・供応など選挙違反、議員の地位・職務を利用した汚職などにたいして、連座制を強化するとともに、少なくとも20年程度の長期の公民権停止など厳罰に処します。企業献金など政治と癒着を犯した企業は、直接の責任者の処罰はもちろん企業自身についても、一定期間の営業停止、その他の厳しい処罰を受けます。
 国会議員には憲法で認められた不逮捕特権、一般公務員並みの歳費などを除き、経済的社会的ないっさいの特権を認めません。国会議員の資産・所得公開を強化します。
 企業献金の全面禁止は、「カネと政治」の関係を断ち切るうえで不可欠です。自民党は「企業は社会的存在であり、政治参加の権利がある」などといい、企業献金を認め、主張しています。しかし、企業は、社会的な存在ではあるが、営利団体であり、国民ではありません。莫大な資金を有する企業に政党・政治家への政治献金が認められれば、政党・政治家はその企業に何らかの便宜を図るのは当然です。営利団体である企業はその便宜供与を見込んで献金するのであって、遅かれ早かれ、政治はカネ、また企業に支配されたものになるのは明らかです。


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