日本労働党政府綱領(案)

 (三)新しい日本の経済、社会、国土政策
−−国民生活水準の大幅な引き上げ。自然と調和し、
先端技術で花開く、バランスよい国土

(5)国民のための財政政策


1、膨大な財政赤字の解消は、さんざん保護され潤った大銀行・大企業の負担で

 新政権は、政府の累積債務償還のため、三菱、住友、さくら(三井)など6大銀行グループをはじめ巨大銀行と大企業の収益と資産に対し、国債償還を目的とする高度な累進性の特別税を課して解決をめざす。
 政府財政の累積債務が300兆円を超しています。その元利償還のための国債費が増大し、財政運営が硬直化しています。たとえば、93年度政府一般会計では、国債費は15兆4420億円(内、利払い費だけで11兆6600億円)で、一般会計の21・3%にものぼっています。しかも、新たな国債発行額は13兆6430億円で、総予算額の18・7%を借金に依存しています。借金は増え続けるわけです。その結果、大蔵省の「財政展望」でも、2000年には利払いのための国債費が18兆円にのぼると予測しているほどです。このままいけば、豊かな国民生活の実現、高齢化社会対策などどうにもならなくなることは明白です。
 借金財政に急いでストップをかけるとともに、この累積債務のそれ自体を解消しなくてはなりません。その負担を誰がするかですが、問題は、これほど膨大な借金が何故生じたかです。誰かが、この財政で潤ったはずです。新政権は、国に借金を残して、肥え太った連中が負担すべきと考えます。
 「税制改革」について、自民党も歴代連立内閣も、「所得・消費・資産等にバランスのとれた税体系を」とか、「中間サラリーマン層の税負担の軽減」とかいってきました。こうした言い分は、税制改革の方向をいってはいますが、何故、税制改革が根本的に必要となったかという、根本問題を避けた言い方です。この問題が鮮明になると、誰が税負担をより多く負うべきか、たちどころに明白になるからです。
 すでに繰り返し述べたように、大企業は政財官のトライアングルのなかで、税制はもちろん、財政金融など各方面の、政府の手厚い保護の下で、急速に発展しました。なかでも大銀行が、保護という面でも、したがって利益を得たという面でも特別です。今回の資産デフレと呼ばれる、かつてない不況でも、銀行は、度重なる金利引き下げと不良債権処理など税制上の優遇措置、自治体による公共用地の先行取得など特別な土地対策、銀行の資産価値維持のための株価維持政策(PKO)などで手厚く保護され、唯一倒産を免れ、莫大な利益を実現しています。しかも、銀行は最大の国債所有者で、金利払いの受取人として莫大な利益を手にしているのです。これまでの政治が誰のための政治だったか一目瞭然です。
 こうした大企業とりわけ大銀行が累積した財政赤字の解決に貢献して当然です。新政権は、6大銀行グループを中心に、大銀行・大企業の負担で累積債務問題を全面的に解決させます。


2、「高齢化社会」問題の解決は、国民全体の豊かさの実現で

 わが国総人口・労働力人口の減少と高齢化の急進展(そのための「負担増」)が大きな問題となっています。人口減少と「高齢化」の原因は、出生率の減少、いわゆる少子化です。
 この結果、本来喜ばしい長寿化の結果でもある高齢化社会が、深刻な問題として議論されるというおかしな事態です。また、少子化の進行は、国の活力を失わせ、民族の前途にとってまことにゆゆしき問題です。
 新政権は、労働者の賃金の大幅引き上げ、住宅問題解決など国民生活水準の大幅引き上げで、「少子化」・人口減少そのものを根本的に解決し、高齢化社会に対処します。
 この「少子化・高齢化社会」論には、重大な問題が意図的に隠されて、二重のごまかしが行われています。
 1つは、少子化の原因です。たとえば「21世紀福祉ビジョン」は、「女性の目ざましい社会参画、晩婚化・非婚化などにより、今後いっそうの少子化が進行していくことが予測される」といったように、「女性の目ざましい社会参画」などに「少子化」現象の原因を求めています。これはとんでもないペテンです。現実には、子供を産み育てられないような貧しい住宅事情、また、託児所その他の、とくに企業に働く男女にとっての子育て環境の劣悪さ、高い教育費負担、そもそもの低賃金と労働者の権利の未確立、さらにわずかな児童手当など貧しい社会福祉制度など、全体としての国民の生活水準の低さが、少子化の最大の要因であることは説明を要しないでしょう。
 もちろん、子どもを産む産まないは個人の自由ですが、それにしても大幅な賃上げと住宅その他の生活条件の大幅な向上こそ、少子化傾向を逆転させ、高齢化社会問題を根本から解決に導く最大の前提なのは間違いありません。新政権はそうした方向をとります。
 もう1つは、高齢化社会に対処する財源として、無前提に、福祉・医療・年金などの削減が「改革」と称して議論の対象になって、現実にも大幅に削減されていながら、他方、軍事費などはまったく手の付けられない聖域とされていることです。福祉など民政面だけが削減の対象となっています。
 わたしたちは、これをちょうど逆転させ、高齢化社会に備えます。まず、軍事費を大幅に削り、大企業への優遇措置を全廃し、さらに不要不急の行政の見直し、国民の立場での行政改革を推進します。こうして、財源を十分にねん出し、福祉、高齢社会対策を強化します。
 そもそも、小沢氏や大蔵省などの考え方は、少なくとも労働者の3分の1がいまなお年収300万円未満で生活しているなど、「貧困な国民生活の実態が今後も続く」という前提で立てられている主張です。国民が豊かな生活をおくるように変われば、事態は大きく変化します。すべての勤労国民、高齢者が豊かになっている社会であれば、いま心配されているような問題はもう相当程度解決されているわけです。


3、国民大多数のための税制・財政改革

 新政権はあくまで、国民大多数のための財政改革を進めます。
 従来の政府支出の見直し、不要不急の財政支出の整理などは当然です。とりわけ、ゼネコン腐敗の根源となっている不当に高い公共事業費の圧縮と事業主体の地方への転換を行います。建設省の調査でも日本の公共工事費は米国と比べて約3割も高いといいます。国地方合わせて総額40兆円の公共工事として単純に1割削減でも(新党さきがけの提案)4兆円節減できます。また、銀行などの莫大な利益となっている公債利払いの利率引き下げ(1%引き下げでも2兆円節減)、軍事費の大幅削減(自衛隊関連予算の廃止と新たな国民軍のための小規模な予算。「思いやり」予算など在日米軍経費の廃止)などは即刻の課題です。
 さらに中央政府の権限・行政事務・実務の地方委譲と中央政府の徹底した簡素化(機構と人員)を前提に政府支出を大幅に削減します。
 一方、輸出奨励、大企業支援型の財政支出を改め、国民生活水準引き上げのための重点施策への財政配分を進めます。科学技術、教育、農林漁業再建、地方の活性化、福祉・医療・年金、住宅など国民生活向上型に重点配分します。
 さらに国民への減税を実行します。国民大多数の税負担の軽減のため消費税を廃止します。また、所得税・住民税の課税最低限の大幅引き上げと累進の強化(とくに、現在価格で年収1500万円超層への)。勤労者の相続する居住・営農・営業のための家屋、土地などへの「相続税」「固定資産税」などは廃止し、中小零細企業への法人税は大幅に引き下げ、農業所得へも大幅減税します。
 大企業への優遇税制措置など不公平税制を撤廃し負担を適正にし、大企業にきちんと税金を払わせるようにします。大企業が納税を逃れる根拠になっている各種の「租税特別措置」を廃止します。また、同様の「外国税額控除制度」を根本的に改革、適切に課税。法人税に超累進課税制度を導入(現行の一律37・5%を10%〜50%の税率に)。ただし、中小零細企業については、10%程度の低税率を適用します。巨大企業の所有する土地・株式などの財産に課税する「法人財産税」を創設します。大金持ちの一定以上の「資産相続」については、高度の累進相続税を課します。
 あらたに、環境税、資源税を創設します。


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