大隈議長・新春インタビュー (7)


 

共産党の連合政権構想など

 
 さて、これからの共産党。もっと伸びるか。連合政権への構想など紹介、暴露しておきましょう。ちょっと話してみたい。
 票は、ある程度以上増えないんだと思うんです。それは理由があるんです。それはいくら要求を下げましても、今の票の増え具合を見るとわかりますが、いわば皆自民党とそっくり同じこと言う奴ばかりだから、共産党がいくらか目立っているんだと思うんです。しかし、この状況はいつまでも続かないと思います。
 共産党がある程度増え始めれば、支配層の側だって策を考えます。吉田茂は「社会党を育てなけりゃならん」と言ったわけですが、正確には、生かさぬよう殺さぬよう、そんなところでしょう。
 近頃のマスコミは確かに共産党をおだてています、つまり安心できるようになったからおだてているわけで、しかし、ある程度以上増えると、共産党ばかり増やしてもなと思うでしょう。そうすれば、やはりそれ以外の政党が、支配層の側から準備されるというのはごく自然です。そういう意味で、ある程度増えても限界があるでしょう。
 もう一つあります。危機が深まると、いつまでもこの状況ではない、それぞれの階級が自分の政治的意思表示をするようになる、当然それに見合う政党は登場します。だから、党派間の闘争は、今みたいに共産党以外は皆一緒というわけにはいかないでしょう。いくつかの党派が出てくる可能性がある。
 このことは不破自身も報告の中で認めています。連合政権を作るのに「共同する相手は誰ですか」との党内の当然の質問に答える形で、不破自身が「いつまでもこの状況だとは思いません。いつかはわれわれと共同できる政党が現れると思います」と言っている。そういう党が現れるということは、一定の票を取るということです。それはつまり、総自民党化は崩れるということです。不破自身が言っている。
 そういう意味で、共産党は今のような政治構造であれば、一定期間だけは増える。でも、そうでない構造がかならず来る。これも避けがたいわけで、その時点で共産党に現在集まっている批判票は分散される。そのいい証拠は今もあるわけでしょう。昨年秋の宮城のいろんな選挙を見ても、総自民党対共産党というと構造なら共産党にいくらか票が入りますが、有権者から見て選択肢があれば、共産党には入らない。
 そういう意味で共産党の票は、もうちょっと増えるのかもしれませんが、一般に言われるような増え方にはならないと思います。
 次が政権問題。連合政権について不破は明確にこう言っています。「本質的に資本主義を守ろうとする修正資本主義的な党派との共同(連立が組めるということでしょう)が理論的には可能です」と。
 もう一つ、社会民主主義について、「共同を考える場合、何も社会民主主義との共同というふうに教条的に考える必要はありません。第一、日本では社会民主主義は定着しませんでした。このことは、これから先の政権を展望する歴史的な流れの中では、きわめて大事なことです」と言っている。だから、正確には口では言っていないが、見え見えでしょう。保守派との連携をすでに考えているということです。
 これを、ヨーロッパなどの経験と比べてみると、不破は何を考えているのか、すぐわかりますよ。つまり、危機は深まってきている、支配層あるいは支配層の政党がこの体制を維持できなくなる時、どこかの時点で共産党との何らかの連携を求めにこざるを得ない情勢がくるであろう、助けを求めてくる情勢がある、と見ていると思います。これは一般的に見て間違いではないと思います。そんな情勢がいつかは来るはずです。
 例えば、今なぜ自民党は社民党を抱え込んでいるかというと、狙いは背後にある広い労働運動ですね。これが騒がんようにしておるわけです。本質的にはこれと同じでしょう。
 最近のイタリアを見るとわかります。イタリア共産党のなれの果て、一つは左翼民主党、これはもうすっかり昔共産党におったことも忘れているような党。もう一つはイタリア共産党再建派、これはまだ共産党という字がついてる。これらが参加して現在のイタリア政権は成立している。これらは与党です。つまりイタリアの企業家たちは、そういうのも仲間に入れて、やっと政権を維持しているわけです。
 しかし、やっている政治は労働者の政治じゃないです。イタリア財界の政治をそういう連中でやっておるわけです。不破はそういう時期が来ると見ている。そうすると危機が深まれば深まる程、支配層の側は、危機が深まるということは人民が騒ぐということですから、その人民に一定の影響をもった、ある程度安心できる「良識的」に動いてくれる党なら、政権に積極的に入れてもよいと思うようになる。共産党サイドから見るとどうなるかというと、安心してもらえる程、早く政権にありつけるわけです。
 どの国でも同じで、日本共産党の変化は、この過程が今すでに進みつつあるということでしょう。こんな共産党が、危機が深まったもとでどんな役割を演じるかは、おおよそ推察がつくわけです。
 だから、われわれは次の局面で、労働運動の指導者たちや日本の先進的な知識層、また、この改革政治のもとで苦しんでいる多くの人たちが、幻想を持たないようにしておく必要があると思います。
 大衆的基盤のある国民運動で断固として支配層を追い込んで、そして国民の多数派が政治を握る。改革を打ち破って、ついでに民主的改革をやり上げていく。こういう政治を進めようとする時に、共産党の説に従う人たちが多いと、闘いが挫折する可能性がある。
 だから、あらかじめ共産党に対する警戒心を広く、とりわけ労働運動の先進的な部分や革命的な知識人だとかに、きちんと説明しておく必要があるわけで、われわれは今この問題を提起しているのです。

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