大隈議長・新春インタビュー (5)


 

共産党の外交政策

 
 そしてこの手口は内政だけではないんです。外交も同じなんです。
 さっき、日米安保共同宣言の問題について、これは政治的な戦略同盟であって決して狭義の意味での安全保障とか軍事問題ではないとわざわざ言ったのは、奇妙に共産党が、狭義のところに押し込んでいるからなんです。そしてこの日米安保共同宣言が、その本質、何のためのものか、この点が暴露されない。米国の東アジア戦略については何一つ触れないのです。
 なぜ具体的に暴露しないのか。彼らが知らないわけはない。昨年四月、クリントンは日本の国会でも演説している。そしてアジアにいかに利害があるか明確に言っている。そして日本に来る前にオーストラリアで演説し、中国を明確に意識した戦略構想を示しているんです。だからあの日米安保共同宣言が何のためにやられているかは歴然としている。共産党は、これに一口も触れない。
 もう一つ台湾問題がある。台湾問題では共産党の主張は、日本政府、あるいはアメリカと同じです。「一つの中国」、しかし「台湾は平和的にやってくれ」、こう言っているわけです。アメリカは、同様にいいますが、国内法で台湾に干渉している。橋本にはそういう法はないが、日米安保共同宣言で拘束されている。しかし、不破報告の中にはこういうのがある。「台湾住民の意思の尊重」、「平和的解決」、「これらを原則とすべき」であると。まるでアメリカと同じように国内法でもつくりたげな、そんないいぐさです。
 このように共産党の対外政策には、支配層とその政策への配慮がみられます。
 日米安保共同宣言の流れは、ただ単に橋本内閣が決めたというものではない。それは日本の支配層、経済界があげて選択した道なんです。だから共産党が、それと異なった旗をかかげられるか、つまり支配層が明確に選択した道と対立する旗をかかげられるだろうか、という問題があるのです。台湾問題もそれです。
 台湾問題はことと次第によっては明日起こるかもしれないし、来年起こるかもしれない。少なくとも中国にとって、十年も二十年も台湾との統一が先に延ばされることは、容易ではないと思います。五年か十年か、もっと先かもしれませんが、この問題での国際関係の緊張は大いにあり得ることです。その時にアメリカはまた干渉する。日本の支配層も似たようなことを言わざるを得ない。同盟を結んでいますから。共産党はどうするか。アメリカ非難ぐらいはするでしょうが、「中国も中国だ」と言いかねないですね。理屈はそうなっています。
 冷戦時代には西側のどの国でも、政権に参加する上では「西側の一員」でなければならなかった。これが非常に大事なことだった。そうでなければ政権にありつけなかったからです。共産党の変化を見ているとこれが想起される。
 東アジア戦略構想を下敷きにしての日米安保共同宣言の路線は、わが国支配層がすでに選択した基本路線です。これに対する態度は非常に基本的なことです。共産党はここを意識しています。
 さらに配慮があるのが例のアメリカ民主主義で、これを評価するといって、細かい気づかいまでしているんです。国内問題でも外交問題でも、日本共産党が、支配層の逆鱗(りん)に触れるようなことはなるべく避けたんだと思います。つまり、安心してもらえるというなかには、そういうことが入っているんだと思います。
 この点があるので私は、これから共産党はいっそう闘わない。支配層との重大な対決を避ける、というふうに思います。
 こうした共産党の態度に警戒することは、今日の日本で、国の進路を明確に国民大多数の利益に沿って進めていくうえでは非常に重要なことだと思います。また、改革政治と闘って国民生活を守る、豊かにする、この点でも大切なことだと思います。

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