大隈議長・新春インタビュー (4)


 
−−次は共産党問題です。共産党は昨年秋に二十一回大会を開きました。労働党は年末にこれを批判する演説会に取り組み、また年頭からは共産党批判のパンフレットを広めるとか、活動を強めているわけですが、この時点で共産党についての考え方をうかがいたいと思います。
 
大隈議長 共産党はこの数カ年、国政選挙でも地方選挙でも前進したといわれています。昨年で言えば七月の都議選などで確かに前進しました。こういうことで、共産党も盛んに「上げ潮じゃ」と言ってるわけですね。それからマスコミも共産党だけが唯一の野党で、伸びるんではないか、と言ってる。
 しかし私は、必ずしもそうは思わない。
 九月の共産党大会でも、共産党は伸びてると強調しています。大会文書ではこう言ってるんですよ。国政で伸びた、地方議会で伸びた、首長選では六十六自治体にもなった、こんな具合です。しかも都議選では自民党につぐ第二党になった、と。
 事実を吟味するとどうなるか。まず国政のところ。過去最高の峰と書いてありますが、総選挙で十五から二十六議席になったんですね。しかし、二十六という数字、戦後ずっと振り返りますと、一番多いときは三十六というのがあるんです。二十六ぐらいの山は何回もあるんです。議席は増えたり減ったりなんです。だから、最高の峰というのは正確じゃないんです。
 それから地方議員が増えたというやつ。彼らは公認で出ていますから、これは本当のような気がします。ただ自民党より多いと言ってますが、だいたい自民党は無所属で出ていまして、これは正しくない。
 首長、これはまるで正確でない。えらい影響が大きくなったというような言い方をしていますが、革新自治体というのは、今は、沖縄だけでしょう。昔「七〇年代そう遅くない時期」に民主連合政府なんて言った頃は、沖縄も福岡も、京都も東京もあったわけでしょう。横浜もあった。当時のほうが大都市ですよ。今は小さい自治体。兵庫の南光町、あそこは盛んに典型のように言ってますが、五千人足らずの人口です。七〇年代の時から見れば影響はけた違いに小さいと思います。まあものは言いようでしょうが。
 だから実際のところ、共産党が言うほど躍進しているわけではないんです。
 続けましょう。今言ったような歴史的な前進とか、この三年は前進したとかいう、その根拠について述べた部分があります。その部分で共産党は、有権者からみると今の政治が、全ての政党が、自民党と似たり寄ったりで、唯一野党、闘っているのは共産党だけという、こういう政治構造のなかで、票は伸びていると言っているんです。
 確かにそういうことはあるんだと思うんです。こんな政治状況だから、政治不信が四割もあって、残りの部分のなかの一部が共産党に流れているわけですね。この政治状況が変われば得票にも響くはずですが、後でふれてみるつもりです。
 ただ、問題なのはそこから共産党がどんな結論を引き出したかです。
 共産党に入った多くの票、これは確かに批判票だが、一部には単なる批判ではなくて、共産党がもうちょっと「現実政治」をやってくれればとか、期待する人たち、任せても安心という政治をやってくれればなーという人たちも結構票を入れてくれた。そうした人たちが増えている。ここのところにこたえる必要がある、とこう言っている。そうすれば共産党はもっと伸びるだろう、と。これが、これからどうしなくてはならないのか、というところの肝心なポイントなんです。
 さて、その現実政治、共産党は何をやるのか。安心してもらえるという、ここのところが問題なわけです。現実政治ということで、要求をぐーっと下げているのです。
 私は、これから共産党はますます闘わなくなるだろう、非常に物わかりがよくなるだろう、と思います。「共産党に任せても安心」ということは、マスコミからたたかれたり、支配層から毛嫌いされたり、企業家たちから毛嫌いされたりするような、そういう政治、政策は以降なるべく減らすということですよ。今回の二十一回大会では、支配層にとっても一考に値するような、そういう政策・方針が決定されたんですね。それが「ルールなき資本主義をただす」というものです。
 

共産党の国民生活、経済政策

 
 このペテン師的な手口は、二十回大会と比べてみるとよくわかります。あの時は、例えば「ルールなき資本主義」と呼ばれるほどに、日本資本主義はひどいもんだ、といっていた。コトバ自身は、二十回大会にも出ている。ただあの時は、それほどひどいという一つの形容詞なんです。だからこの政治をやめさせるには、二百ぐらいの大企業、銀行などを、民主的に管理しなきゃならん。つまりこれを法律で規制をして、勝手なことをやらせんようにすることが重要だと、盛んに書いた。
 しかし今回は形容詞ではないんです。今回は、「ルールなき資本主義」といわれているわけだから、せめて他国並みに日本をなすことが当面の非常に大事な点だ、となった。中身をよく読んでみますと、ヨーロッパではこうなっていると書いてありますが、端的に言ってヨーロッパ並みにすることが当面の共産党の政策です、と書いてあるわけです。
 ヨーロッパは確かに労働時間は短いですけど、失業者、日本のほうが少ないですね。確かにヨーロッパより日本がひどいことはいっぱいある。だけど、ところどころ、少しは日本がよいところもある。
 それにしても人を食った話があるんです。不破は十一月の赤旗祭り、ここで何て言ってるかというと、この二十一回大会で決めた要求は、ヨーロッパではすでに実現しているか、もうすぐ実現できる、実現まぎわのものばかりである、と発言しています。
 するとここで、はたと疑問がでるわけです。確かにヨーロッパと日本は違いがあります。労働時間とか何とか、差がある。しかし、同じこともあるんです。ヨーロッパ、あそこも天国ではないんですね。労働者はストライキをやらねばならず、膨大な失業者がおりますし、福祉関係もどんどん今、切り捨てられている。つまり、共通項として日本もヨーロッパも労働者にとって天国じゃない。つまり両方とも、ルールがあろうがなかろうが、大企業が支配しておって、自由気ままに、えて勝手に労働者をこき使って収奪し、そして生活さえままならない状態があるんです。大企業以外の、中間にいる諸階級もけっして豊かではない。こういう実態があるんです。この問題に手をつけず、ヨーロッパとの違い、これを取り上げ、これを改めると言っても、共通項である地獄であることには変わりはないわけです。この問題はかたづかないのです。
 今度の二十一回大会の特徴は、端的にはここ、国民生活や経済にかかわる部分にあらわれています。
 日本をヨーロッパ並みにするという。これは逆に言えば、共通項である地獄ということには手をつけないということでしょう。大企業が安心するのは当然です。だからマスコミが共産党は大人になったといい、財界からの評判がよくなって、去年の暮れには不破が、財界に呼ばれた。うなずける話です。

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