大隈議長・新春インタビュー (1)


 
 一九九八年の年頭に当たり、労働新聞編集部は日本労働党中央委員会議長の大隈鉄二同志にインタビューを行った。議長は、急速に動いた昨一年の内外の情勢を振り返り、政治的な戦略同盟としての安保共同宣言の本質とそれに縛られたわが国外交の従属的、売国的な実態、いよいよ行きづまった橋本政権の改革政治、さらに共産党二十一回大会の裏切りの路線の暴露、今年、労働党はいかに闘うかなど、各方面の課題を大いに語った。
 
−−明けましておめでとうございます。一九九八年の年頭に当たって、例年のことでありますが労働新聞として、日本労働党中央委員会議長の大隈同志にインタビューをお願いしたいと思います。
 昨年は、内外ともに大きく情勢は動きました。激動の情勢、これを、この時点で大ざっぱに、どのように見ておられるか。最初に、その点をお聞きしたいと思います。
 
 大隈議長 明けましておめでとうございます。紙面を通じて、読者の皆さん、各界の友人の皆さん、同志の皆さんに新年のごあいさつを申し上げます。どうぞ本年もよろしくお願いします。
 昨一年を振り返って、ご質問のように、大ざっぱにということですから、印象的なことで申しますと、なんと言っても昨年の後半、七月のタイ通貨バーツの下落、そしてまたたく間にアジア全体に広がった通貨や株の下落、実体経済への波及、近くでは韓国で見るような深刻な経済危機、これですね。そして日本。
 暮れの日本の国内のいろんな報道でも、「いよいよアジアの経済危機が、韓国まで迫った」というように、日本にも深刻な影響が及ぶだろうというニュアンスをもった捉え方がされています。いずれにしても、昨年後半以降アジア通貨の下落から始まった、この深刻な事態は、これから起伏があったにしても、あるいは一時的にそれが落ち着くことがあったにしても、結局のところ、世界経済がかなり深刻な状況というか、そういう段階にきているという事実を打ち消すことにはならないと思います。この点が世界情勢を見る上での、一つの重要な状況だろうと思います。
 もう一つの面は、冷戦以降の新しい世界秩序とよばれるもの。これは、多極化という方向に移り変わっていっているわけですが、昨年の後半は、特にアジアで動きがあった。わかりやすくなったように思いますね。
 経過を追ってみますと、去年の四月に中国の江沢民国家主席がロシアに行きました。両国関係は「戦略同盟」といわれた。
 七月には、香港が中国に復帰した。これは予定のことだったわけですが、現実に中国と一体になると、新たに中国の国際的地位の高まりというか、世界政治に大きなインパクトがあった。
 それから、九月には橋本首相が訪中しました。この中身は、端的に言って日米安保共同宣言が、決して中国に何か影響を与えるようなものでない、というようなことの説明なんでしょう。中国、アジアの警戒感は強いわけで、どんな言い回しをしたところで、たいした効果があるとは思いませんが。
 それから、十月にはいると、中国の江沢民国家主席が訪米しました。米中首脳会談です。これは、中国にとっては大きな外交的な成果だといわれています。それから李鵬首相が十一月に日本に来ております。
 それから同じ十一月に、わが国の橋本首相が訪ロし、日ロ首脳会談、これはいうところの「ユーラシア外交」の展開です。
 そのあと、経済危機と関連して、十二月には例のASEAN(東南アジア諸国連合)九カ国と、日本・韓国・中国の会議が開かれました。
 こう見ると、世界情勢は、特にアジアを中心に大きく動いた。
 一昨年の日米安保共同宣言以降、アメリカはアジアでは日本と手を結んで、東アジア戦略構想の具体化を図っている。日本はアメリカの指揮棒の下で、あるいはそれと連携しながら、対中、対アセアン外交、ユーラシア外交をやっている。中国は力を増しつつある。ロシアもアジアに大きな関心と利害を持っている。こうして米中を中心にし、大きくこのアジア情勢が動いている構図が浮かび上がっています。
 アジア経済の危機と関連してですが、米日の役割はともかく、中国の動向もまた大きくなってきたようですね。
 日本の外交ですが、このような国際環境の中で、特に昨年の後半、アジアを中心にして、大きな影響力を持つ国々のひととおりの方向というのか、流れが固まってきたわけですから、本来は、日本の自主、独立の外交政策が強く求められるわけですが、実態はとてもそんな状況ではない。対北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)外交だって自由がきかない。だから日本は二十一世紀へ向けた情勢の中でどうするんだろうといわれるような、そんな状況がうき彫りになったと思います。
 それから、改革政治、橋本内閣が進めている六大改革ですね、これは去年の後半の動き、特に経済情勢など見ていますと、とても日本の支配層が望んでいるようなかたちで、すんなりと進むとは思えない。橋本内閣なり日本の支配層が、けた違いにずっと弱い位置にあるというか、大変な困難に当面しているというのがわかったように思います。

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